第11話 おっさんヤバイッス
俺は馬車の中に入ると驚く。
馬車の中は広さが15畳以上の広さがあり、机やベッドに切り換えができるソファー等が置いてある。
「想像以上に広くて凄い。これならば旅は快適で、それに驚くほど振動も少ないですね」
「驚きましたか。この馬車は私の自慢なのですよ。収納袋と同じ原理で錬金術により空間を広げているのです」
俺が不思議そうに馬車の中を見回す。
「ところでノワールさん。もう少し貴方について伺ってもよろしいでしょうか? どうぞ、こちらのソファーに腰を掛けてください」
「はい」
「ギルドカードはお持ちかな? ギルドカードか出生カードがないと、身分証明ができず町には入れませんよ」
「どちらも持ってない。困りました……」
「そうですか、ならばこのカザトにお任せを。早速、借りを返すときがきましたな」
俺とカザトが会話しているとソアラが尋ねてきた。
「ところでノワールさん、森にいたその前の記憶はないのでしょうか?」
「ないですね、何か覚えているような、覚えていないような感じで」
「お父様、もしかしたらノワールさんは渡り人ではないでしょうか?」
「私もそう思っていたところだ。森の中にいたのに身なりがきれいすぎる。本当に突然に森の中から現れたようだ」
マーリンからは転生者は渡り人と呼ばれていることは聞いている。
俺は自分が渡り人だと言うことにするために、ここはワザと聞くことにする。
「渡り人とは一体?」
「渡り人は人によって様々で、渡る前の記憶の有無やどの時代でどこから渡ってくるのかわかっていません。でも共通しているのはギルドカードや出生カードの発行履歴がないことです。つまり、身元不明人です」
「そうか。だったら俺は渡り人かもしれない……」
「いずれにせよ心配はご無用です。明日、町に着いたら調べてみましょう」
「お願いします。カザトさん」
丁度、話が終わると馬車が止まった。
俺達は外に出ると、そこは街道の両脇が大きく整地された場所で、近くに監視小屋が設置されていた。
整地された場所には先客がおり、馬車が一台停泊している。また、馬車が止まっている近くの広場にはテントが設営されており、護衛が泊まっているようだ。
カザトさんは監視小屋から出てきた兵士と盗賊について話している。
一方、カイン達はテントの設営を準備しており、焚火を起こしている。
俺も収納袋からテントや携帯調理器具等を取り出して野営を準備する。
さてと、今日はボアの煮込みシチューでも作るか。
仕込みを始めて鍋でボア肉を煮込んでいると、辺りに美味しそうな匂いが漂う。
『グゥゥゥ――』
近くのテントで携帯食を食べていたカインのお腹が鳴る。
「ノワール、美味しそうな匂いだな。それは何だ?」
「ボアの煮込みシチューだ。食べてみるか?」
「ああ、頼むよ。冷たい携帯食は、なんだか味気なくて」
それを見ていた白銀のメンバーもシチューを欲しそうにこちらを見ているので、みんなにもシチューを振る舞う。
「美味いぞ、このシチューは!!」
シチューを食べ終えたカイン達を見ると、まだ、食べたりていないようだ。
よし、グレートボアのBBQを作るぞ!! BBQのソースは、マーリンに教えてもらった激うまソースだ。
俺は薪を新しくくべて、その周りにグレートボアと野菜を金串で突き刺していく。
「着火」
生活魔法で火を付けると徐々に肉が焼け、ソースを付けながら更に焼いていく。
やがて、辺り一面には肉とソースが焼ける香ばしい匂いが漂ってくる。
「カイン、焼けたぞ。皆に配ってくれ」
カインは配りながら一口食べる。
「うま―― 何だこれ!! 旨すぎだろ。特にこのソースが旨い」
カイン達が旨い旨いとあまりにも騒ぐものだから、周りにいた先客の護衛にも料理を振る舞う羽目になったが、大好評であった。
さて、食事が終わったので片付けよう。
「アクア、クリーン」
俺は生活魔法で携帯調理器具を奇麗にしてから片付けていると、女性メンバーであるルミアさんとナシャさんが近づいて来る。
「ご馳走様、とても美味しかったわ。ノワール君は料理もできて羨ましいわ。誰か先生にでも教わったのかしら?」
「えーと、俺はどうやら渡り人のようで覚えていないんです」
「そうなんだ。だけど、渡り人はたいして珍しくはないわ。王都に行けば何人かいるし、私は会ったことはないけど、他の冒険者からは一緒にパーティーを組んだって話を聞いたわ。だから、気にしなく大丈夫よ」
なんだか慰められているようだ。
「それで、お願いがあってね」
「ん?」
「盗賊に襲われた時に私達のテントが壊れて使用できなくなったの。今持っているテントじゃ入りきらない から、ノワール君のテントに泊めてくれないかな?」
「そんな、見ず知らずの男女が、狭いテントの中で一緒に寝泊まりするのはまずいでしょ」
「ふふふ、ノワール君は貴族みたいな考え方ね。冒険者なら当たり前よ。特にダンジョンでは、お互いを助け合うために一緒に寝泊まりするわ」
何故か舌なめずりをするルミアさん。
「それに、過ちがあっても避妊魔法で処置しているから大丈夫よ。それとも、私が相手では嫌かしら?」
「もー ルミアはノワール君をからかわないで。大丈夫よ、襲ったりはしないから」
……
からかうも何も俺の中身は50歳のおっさんだ。でも、悪い気はしないな。
「えーと、テントは持っているのですが、中の広さがどれくらいかわからないので、中を見てから決めましょう」
俺は設営したテントの中を見ると、そこは12畳ほどの広さがある。
これならば休むには十分な広さがあり、なんと魔導具によるキッチンやシャワー室まである。
ヤバイよ、このテントは!! カザトさんの自慢の馬車に匹敵しそうなテントだよ。
「テントの広さは大丈夫でした。だけど、中に入るまでは大声を出さないでください」
「大声?」
不思議に思うルミアさんとナシャさんではあったが、二人は同時にテントの中に入る。
「キャ―― 凄い!!」
「何よこれ!!」
「し―― 大声を出すな」
「ごめんなさい。でも、このテントは凄いわ。上級貴族かAランクの冒険者が使うようなテントよ。ノワール君って謎が多いのねって!?」
ルミアさんとナシャさんがシャワー室を見つけると、急いで服を脱ぎ始める。
「ノワール君、このシャワー使っていいよね?」
「いいですよ、使っている間、俺はテントの外に出ます」
っと言い終わる前に、ルミアさんとナシャさんは、服を脱ぎ棄て全裸になるとシャワー室に入って行く。
「ノワール君は気にしないで。女性の冒険者は裸を見られてもなんともないわ」
なんともないと言われても、可愛い女性が全裸で二人も目の前にいたら、おっさんヤバイッス。
よく二人を見ると、ルミアさんは胸が大きくふっくらタイプ、ナシャさんはスレンダータイプだがバランスの取れた身体付きだ。
「ふふふ、そんなにガン見されると恥ずかしいわ」
「だめよ、ルミア、からかっちゃ」
ダメだ。リフレッシュのために一度テントの外に出よう。
星空を眺めると、そこには月が二つある。
異世界か……
さてと、今日も色々あった一日だったな。
明日は何があるか楽しみだ。
しばらくして、テントに戻るとルミアさんとナシャさんは、シャワーを終えて寝る準備をしていたので、俺も寝袋を取り出して寝る準備をする。
「ノワール君、おやすみ」
「ああ、良い夢を、おやすみ」
「ふふふ、良い夢をって洒落ているわね、そういうの好きよ」
皆余程疲れていたのだろう。
俺達は、あっと言う間の眠りに落ちるのであった。
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