第109 晩餐会
その日の夜は授賞式の晩餐会が開催された。
晩餐会は立食式パーティーのような感じで、それぞれに談笑しながら料理や飲み物等を楽しんでいた。
俺達はそれぞれで貴族達に挨拶周りをしている。
なんだか、会社で営業活動しているような感じだな。
俺達は挨拶周りをしていると年配の騎士が話しかけてくる。見た目はゴッズよりも年上で良い感じの風格がある。きっと、上位クラスの人だ。
「ラムズ侯爵、お久しぶりです」
「これは、ニムル伯爵、お久しぶりです。ロック、こちらは商業都市ザンクベルの剣聖 ニムル・トルク伯爵だ。お前も名前は聞いたことがあろう」
「お初にお目にかかります、ニムル伯爵。剣聖トルク様のご子孫にお会いできて光栄です」
「ははは、聖騎士ロック伯爵。爵位は君と同じ伯爵ですからそんなに畏まらなくてよいですぞ」
物言いは優しく聞こえ風格が漂っている。これぞ、長年の経験によるものだろう。
なんか、絡まれそうな感じだから俺は黙っておこう。
「それにしてもラムズ侯爵はご子息やご令嬢が三人とも上位クラスとは凄いですな」
「まだ、成り立てなので、ニムル伯爵に比べればまだまだです」
「そうですかな? ロック伯爵、軽くお手合わせを」
ニムル伯爵はロックと対峙すると、闘気を込めて威圧を放つ。
俺はルミアとロックにネックレスを通じて話す。
(ロック、闘気だけにしろ。極みや龍気は使うなよ)
(はい、兄さんわかりました)
(俺とルミアは向こうにある唐揚げを食べてくるよ。冷えたエールと一緒に食べると最高なんだ)
(兄さん……)
(ロック、頑張ってね)
(……姉さんまで)
ロックはニムル伯爵に向かって、闘気を込めて威圧を放つ。
「はっ、少しはやるようだな。しかし、これならばどうだ」
「流石です。でも、耐えられます」
「小癪な若造だ」
両者の闘気が均衡しており、周りで見ていた貴族達が闘気に当てられて苦しそうだ。
唐揚げとエールは美味しいけど、この状況は不味いな。
俺は、気配を消してから瞬地を使い二人の間に入る。
「なんと!?」
「ニムル伯爵、周りの貴族達が闘気に当てられて苦しそうです。この辺りで止めておきませんか?」
俺の後から女性の声が聞こえる。
「そうよ、自分が気になる人には力試しをしないと気が済まないのね。もう、良い年だから自粛したらどうかしら」
「ホルン、うるさいぞ」
俺達に割り込んできた女性は、年齢がニムル伯爵と同じようで負けず劣らず風格が漂っている。
「これはホルン伯爵、お久しぶりです。ロック、こちらは貿易都市グロービスの賢者 ホルン・マーリン伯爵だ」
「聖騎士ロック伯爵。魔剣聖ノワール子爵と賢者ルミア子爵。私はルミア子爵に興味があるわ」
どうやらニムル伯爵と同じように、今度は賢者マーリンの子孫のようだ。
俺の後から来たルミアがホルン伯爵に挨拶する。
「ホルン伯爵。お初にお目にかかります」
「ご丁寧にありがとう。それでね、ニムルとロック伯爵の手合わせで熱くなってきたわ。私と手合わせをお願いできるかしら」
ホルン伯爵はルミアと対峙すると魔素を練り始める。
(ルミア、止めはしないけど極みは使うなよ)
(わかったわ)
ホルン伯爵とルミアはお互い魔素を練り始める。
「ふふふ、凄いわね。でも、お楽しみはこれからよ。私、ゾクゾクしちゃう」
「そうですね。私も、ゾクゾクしちゃう」
おいおい、似た者同士かよ。俺の隣にいるニムル伯爵を見ると、顔が引きつっている。
両者の魔素が均衡しており、周りで見ていた貴族達が魔素に当てられて苦しそうだ。
俺はマジックキャンセラーを使う。
【マジックキャンセラー】
「えっ!? そんな、これは秘技の【水も映し】?」
「ホルン伯爵、周りの貴族達が魔素に当てられて苦しそうです。この辺りで止めておきませんか?」
「そうだぞ、ホルン。しかし、実にノワール子爵は興味深いですのぅ。是非とも手合わせ願いたい」
「駄目よ、ノワール子爵とは私が手合わせをするわ」
「では、同時で」
俺はニムル伯爵には闘気、ホルン伯爵には魔素を放つ。
俺達の周りにいる貴族達は、どんどん後退る。
「なんと、これ程とは」
「ふふふ、す、凄いわ。ゾクゾクしちゃう」
「ええい!! やめんか!!」
陛下が遠くの方から足早で俺達の所に向かってくる。
やばい、これは相当にご立腹だ。
「ニムル伯爵、ホルン伯爵、一体なにをやっているのだ。ここは晩餐会で闘技場ではないぞ。そろそろ自分達の立場も考えて行動されよ」
「申し訳ございません。つい、若き精鋭を見ると血が騒ぎましてな」
「私もそうです」
「そうですではない!! 二人ともこっちに来なさい」
陛下に怒られて奥の方に連れていく二人ではあったが、俺には何故か二人が満足しているように思える。
陛下達の声は遠すぎて聞こえないが、先程までの表情とは違い楽し気に話をしている。
どうやら、あの二人は俺達の力量を測るための当て馬だったようだ。俺は、いつの日かあの二人と手合わせをしたいと思うのであった。
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