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第108話 決着、そして授賞式

 

 審議官はキルト公爵に問う。


「徴収できる権利は、ロバート侯爵の父とキルト公爵の父との一代限りの盟約であり、徴収すること自体が違法である。これに相違ないか?」


 今度はキルト公爵が答える。


「盟約には一代限りとは明記がない。ここに証文を提出する」


 提出された証文を審議官が確認する。


「確かに、この証文には一代限りとは記載がない」


 スクイ男爵とユース伯爵は安堵する。


 本物の証文を手に入れていて良かった。多分、キルト公爵は俺が複製した証文を使って、高度な魔法により改ざんしたのだろう。残念でした。


「その証文は偽物だ。これが本物だ。審議官の『審理の眼』で確認してほしい」


 俺は審議官に証文を渡す。

 審議官はふたつの証文を確認する。


「ノワール男爵の証文は真。キルト公爵の証文は偽である」

「そ、そんなはずはない。これは我が家に伝わる証文だ」


「審議官はキルト公爵に問う。この証文は一代限りの盟約と記載してある部分を改ざんしたか?」

「改ざんはしていない」


 審議官はキルト公爵の眼をじっと見つめる。


「偽である」

「私は改ざんしていない。きっと、この証文は何者かの手によってすり替えられたのだ」


 俺は審議官に問う。


「審議官に問います。この際、誰が改ざんしたのか、そして証文をすり替えたのが問題ではない。重要なことは一代限りの盟約であることをキルト公爵が知っていたのかと言うことではないでしょうか?」


 審議官は俺からの問いに驚きの表情をする。

 まさか、自分が問われるとは思っていなかったのだろう。


 審議官は、深呼吸してからキルト公爵に問う。


「キルト公爵に問う。証文に書かれている一代限りの条件を知っていたか?」

「知らない」

「偽である」


 この審議にて、スクイ男爵、ユース伯爵は、二重徴収だけではなく、徴収することが違法であり、更に闇ギルドを使ってダンカンの暗殺依頼したことが証明された。また、キルト公爵は盟約が一代限りであることを知っていることも証明されたのである。


 これまでの審議内容を聞いていた陛下は、『ふ――』とため息をついてから話す。


「予は落胆しておる。先のミスリル高騰に関わっていた両名がコートダールで精進しているかと思えば、このような所業を犯していたとは残念であり情状酌量の余地はない。よって、両名を奪爵する」


 スクイ男爵とユース伯爵は顔が青ざめ震えている。


「キルト公爵よ。其方も関わっていたことは明白である。よって、公爵家の順位を第三番目から第八番目とする。反省するが良い。なお、コートダールの獣人区の所有権は、キルト公爵からロバート侯爵に返却する」


 キルト公爵の顔も青ざめている。

 後で聞いた話だが、公爵家の順位が第八番目と言うことは、王家からの絶縁に等しく肩書だけの公爵家になるそうだ。


「キルト公爵、スクイ、ユースは退出するが良い」


 三人は肩を落としながら部屋から退出するのであった。



 しばらく休憩することになり、調停内容が全面的に認められたので俺達は安心した。


 その後、ダイド公爵が調停式の再開を始める。


「農業場の代表者であるダンカンよ、陛下よりお言葉がある」

「コートダールを農作物で有数の産地にした功績を讃えて、其方に男爵の爵位を授ける。また、ロバート伯爵の推挙を認め、コートダールの獣人区及び農場を治めるとする」

「有り難き幸せ。これからもコートダールの繁栄に尽力する所存であります」


「さて、ロバート侯爵よ。これで其方が望んでいた調停式となった」

「陛下、これで領民が救われます」


 俺達の希望通りの調停式となり、調停式は閉会するのであった



 ◇



 翌朝、授賞式のためにカインとナシャと合流して王宮へ向かう。


 俺達は王宮に着くと、既に授賞式に向けてラムズ侯爵とロックが準備しており、後からクリド公爵に続いてロイドとアンナも姿を現す。


「ははは、みんなの装備と見比べると俺のミスリル装備は霞むな」

「ダンカン、何を言っているんだよ。そのミスリル装備は、価値はミスリル貨10枚以上だぞ」

「おいおい、マジかよ……」

「それに装備で強さが決まるわけではないからな。俺もミスリル装備で出るぞ」


 謁見間には前回の魔族襲撃の時とは違い、王家に関わる公爵家、各町の領主である侯爵や伯爵が勢揃いしている。



「デミグラード国 第12代国王 バウド・デミグラード陛下の出御!!」


 ダイド公爵が声を高らかに宣言する。


「本日の授賞式は、王都の魔族襲撃事件およびコートダールでの魔族襲撃事件に関して、功績を挙げた者達を表彰するものである」


 そして、ダイド公爵が両事件について詳細を説明があり、その後俺達が呼ばれる。


「まずは、両事件の魔族討伐に素晴らしい功績を挙げた冒険者である白銀の翼に第一級宝珠勲章を授ける。なお、第一級宝珠勲章は両事件の双方で授与されるため、その功績を讃えて子爵の爵位を授けるものとする」


「おおお」


 貴族達から驚きの声が上がる。


「また、白銀の翼は宝玉より上位クラスを授かっている」


「おおお」

「上位クラスだと? 信じられない」


 更に貴族達から驚きの声が上がり、ざわつき始める。


「皆静まるように、陛下の御前である。まずは、聖騎士カイン子爵、賢者ナシャ子爵」


「おおお!!」

「聖騎士、それに賢者だ」


 貴族達は、どよめきが起きる。


 カインとナシャが陛下より第一級宝珠勲章を授与する。


「カイン子爵、ナシャ子爵、大儀であった。其方達は夫婦であるため家名をリンナイとなるが良い。また、所縁があるコートダールに拠点を構え、屋敷は昨日奪爵されたユース伯爵の屋敷を使うが良い」


「次に、聖騎士ロイド子爵、弓聖アンナ子爵」

「おおお!!」


 またしても、貴族達からどよめきが起きる。


「また、聖騎士だ、それに今度は弓聖だ」

「ロイド子爵、アンナ子爵、大儀であった。其方達も夫婦であるため家名をロスナイとなるが良い。既に其方達はクリド公爵の配下であるため水の都に拠点を構えるが良い」



「最後に魔剣聖ノワール子爵、賢者ルミア子爵」


「えええ!!」

「賢者はわかるが、魔剣聖とは?」

「白銀の翼は全員が上位クラスだぞ」

「凄い授賞式になった」


 俺とルミアは陛下より第一級宝珠勲章を授与する。


「ノワール子爵、ルミア子爵、大儀であった。其方達も夫婦であり、レアランド領主 ラムズ・サイド侯爵家の血縁であるが故にアッサムザルクに拠点を構えるが良い」


「続いてコートダールでの魔族襲撃事件の功績を讃え、特級宝珠勲章を授ける。なお、ゴッズ子爵およびロック子爵は伯爵に陞爵(しょうしゃく)、ロビン伯爵は王家直属部隊の隊長に任命する」


 ロック達はダイド公爵から呼ばれ、それぞれ陛下からお褒めの言葉と特級宝珠勲章を授かる。


「これにて授賞式を閉会とする」


 さて、やっと堅苦しい授賞式が終わったが、今夜は晩餐会だ。

 貴族って面倒だな……



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― 新着の感想 ―
[気になる点] >証文に書かれている一代限りの条件を知り得ていたか? "知り得ていたか"だと"知ることができたか"みたいなニュアンスでちょっと違うような。 シンプルに"知っていたか"でいいのでは。 …
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