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第107話 調停式

 

 調停式の朝を迎える。

 昨日、俺達はロバート侯爵にダンカン暗殺事件のことを話しており、打ち合わせ済みだ。カインとナシャは調停式には出られないので待機してもらう。


 ダンカンは俺達の作戦でロバート侯爵の従者に変装して正体を隠す。


 俺達は王宮に着くと近衛兵達に案内されながら、調停式が行われる部屋に案内される。


 部屋は裁判所の審議室と同じように裁判官が座る場所に陛下、両隣にダイド公爵と審議官が座っている。その他には記録係や警備でゴッズさんやロイヤル騎士団がいる。


 俺達は右側にある席に座ると、後からスクイ男爵、ユース伯爵、それにキルト公爵が反対側に座る。


 初めにダイド公爵が宣言する。


「デミグラード国 第12代国王 バウド・デミグラード陛下より本日の調停式についてお言葉がある」

「皆の者よ、本調停式は王家が厳粛に審議するものであり、真実を語らなければならない。虚偽を証言した者は、貴族や王家に関わる人物でも法の名のもとに処罰を受けるので心して発言せよ」


 陛下の言葉に皆が緊張する。

 ダイド公爵はロバート侯爵の調停内容を読み上げる。


「ロバート侯爵より告発があった。内容はスクイ男爵とユース伯爵が獣人区の公共権使用料と税金を徴収しており、二重に徴収することは違法である。また、徴収できる権利は、ロバート侯爵の父とキルト公爵の父との一代限りの盟約であり、徴収すること自体も違法である。これに相違はないか?」


 ダイド公爵が告発文を読み上げると、ユース伯爵は不敵な笑みを浮かべて答える。


「公共権使用料と税金の徴収は、別々であるため二重徴収にはあたらない」


 ロバート侯爵が反論する。


「異議あり。名目は別々であるが、どちらも住民が生活する上で必要な物であり、働き先と個人の両方から徴収することは二重徴収であり違法である」


 ここでダイド公爵が審議官に確認する。


「双方の言い分は理解した。審議官はどう判断するか?」

「法の解釈よりそれぞれで見解が分かれているが、徴収は重複してはならない」


 審議官の回答に焦ったスクイ男爵が反論する。


「私が徴収した金額は徴収上限を超えていないため、仮に二重徴収しても違法ではない」

「異議あり。スクイ男爵が徴収した金額は上限値を超えている。証拠として徴収簿を提出する」


 審議官はロバート侯爵より徴収簿を受け取る。

 審議官は一通り内容を確認すると、ロバート侯爵に質問する。 


「この徴収簿はどのようにして手に入れたか?」

「はい、取立人である闇ギルドから入手した」


「取立人が闇ギルドだと? ……そんな、私は騙されていたようだ」  


 スクイ男爵は残念そうに答える。

 俺達は『騙されていた』と言うことが嘘だと知っているが、俺が屋敷に忍び込んだことは言えないので黙っておく。


 審議官はロバート侯爵に質問する。


「この徴収簿の内容が正しいことを証明できる証人を要求する」

「それは……・証人は昨日……」


 ロバート侯爵は返答を中々しないでいると、スクイ男爵が得意げに言う。


「心情は察します。証人である農業場のダンカンは昨日暗殺されたと聞いております。大変残念なことでお悔やみ申し上げます。しかし、証言がなければ徴収簿が正しい証明にはなりませんな」


 ここで、変装していたダンカンが発言する。


「私は農業場の代表者ダンカンです。こちらが身分証明書です」


 まさか、ダンカンが現れるとは思っていなかったのだろう。スクイ男爵が驚きながら言う。


「そ、そんな馬鹿な。……ダンカンは闇ギルドによって暗殺されたのでは」

「審議官の名において彼はダンカンである」


「確かに昨日の夜に俺は闇ギルドの襲撃を受け暗殺されそうになりましたが、なぜスクイ男爵はそれを知っているのですか?」

「そんなことは先程のロバート侯爵の受け答えを推測すればよかろう。ロバート侯爵は言い難そうに答えれば、きっと暗殺されたことが容易に想定出来るだろう」


 ダイド公爵は審議官に確認する。


「審議官の意見は?」

「これよりスキル【審理の瞳】を発動する。審理の瞳は必ず真偽を見抜く。審議官はスクイ男爵とユース伯爵に問う。徴収は違法と理解しており、ダンカン殿の暗殺は両名の計画か?」


 スクイ男爵は冷や汗を垂らしながら懸命に答える。


「違う。私達は情報屋から暗殺のことを聞いたのだ」


 審議官はスクイ男爵とユース伯爵の眼をじっと見つめる。


「偽である。スクイ男爵とユース伯爵は、徴収は違法だと理解している。また、ダンカン殿の暗殺はスクイ男爵とユース伯爵が計画した」

「そんな馬鹿な…… これは徴収の調停式であり、暗殺に関しての審議こそ違法である」


「静まれ!! 陛下よりお言葉がある」

「審議官の審理の瞳は必ず真偽を見抜く。よって、審議官の言うことは真実である」


 スクイ男爵とユース伯爵はうなだれるが、審理は続くのであった。



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