第105話 仕上がったな
男性陣はレベリングでダンカンの親衛隊になる予定だが、女性達にはダンカンの屋敷で使用人として働いてもらう予定だ。そこで、俺はカザトさんに女性達をマラッカス商会で働きながら使用人の教育をしてくれるように頼んだ。
俺の話を聞いたカザトさんは、獣人区のためになるのであればと快く引き受けてくれた。本当にカザトさんは頼りになる人だ。
これで準備ができたが、バイルが俺に不安気に言う。
「ノワールさん、女性達にも気を使ってくれてすまない。これで、俺達も訓練に集中できるが、どんな訓練になるのか教えてくれ」
「そうだな。エベルス鉱山の近くにあるダンジョンでクラスを変えながらレベリングだ。それと同時に闘気と魔素の使い方を学んでもらうぞ」
「そうか…… でも、既に俺達は闘気を使えるから魔素だけで良いかな」
「ふっ、闘気が使えるのと使いこなすことは全くの別物だぞ。俺が言っていることは、使いこなすことだ。まぁ、まずは、闘気を使ってダンジョンまで走るか。お前が言うように、闘気が使えれば二日で着くだろう」
その言葉を聞いて、ダンカンが驚く。
「二日だって!? エベルス鉱山までは、馬車で五日間はかかるぞ」
「闘気の使い方をマスターできれば容易い。それに、魔素の使い方や状態異常耐性も身に付けてもらう。だいたい二週間の予定だ」
「そんな…… 本当に二週間で身に付くのか?」
「身に付く。だけど、死にそうな思いはするけど、死なないから大丈夫だ」
「そう、死なないから安心してね。ふふふ、何だか久しぶりに私ゾクゾクしちゃう」
「……姉御」
◇
訓練開始から5日間が過ぎた。
冒険者の経験がないダンカンは、最初は出遅れていたが、バイル達と比較して変な癖が付いていない分、俺達が教えたことを忠実に再現できるようになっている。
一方、バイル達は、バイルがCランクの剣士、その他がD~Eランクの戦士や魔法士だったが、独自で身に付けた剣や魔法を使っているため基礎ができていない。
俺がレベリングの様子を見ていると、ダンカンとバイルの話し声が聞こえてくる。
「なぁ、バイル。俺はレベリングをすることが初めてだが、こんなに早くレベルが上がるものなのか?」
「ダンカン、これは異常だ。普通ではない」
「そうだよな。5日前まで俺は戦いとは無縁の農業者だぜ。それが今や剣だけでなく、魔法まで使える。見ろよ」
【ファイアボール】
ダンカンが放ったファイアボールは、ダンジョンの壁に当たり大きな穴を開ける。
「凄い威力だな…… これが無詠唱の魔法だから驚きだ。それに、俺がこの前までに使っていた武技の地走りだが、ノワールさんの武技とは全くの別物だった。俺の地走りは地面に筋を作るぐらいだが、ノワールさんの地走りは地面に大きな亀裂が入る。まさに桁違いの武技だよ」
「俺達は、これからもっと強くなること間違いない。お互い頑張ろうぜ」
ダンカンとバイルはお互いを励まし合う。
ここまでは俺のオリジナルスキルで経験値300倍の効果もあり順調だ。
しかし、悩みどころがあるんだよな。
「ルミア、皆のレベルが30になったけど、ロック隊と違って騎士にクラスチェンジができないのが痛い」
「あら、そう? 私はあなたがダンカンさんとバイル達を、騎士にするためにレベリングをしていると思っていたわ。だって、私達は既に男爵の爵位を持っているから貴族よ。貴族の配下だったら騎士になれるのでしょ」
「そうか!!」
確かにルミアの言う通りだ。俺は、ダンカンとバイル達を訓練という名で配下にしているようなものだ。念のためバイル達を鑑定すると、騎士にクラスチェンジできることがわかった。
これならいけるぞ。
「全員集合してくれ。これまでの訓練ではお前達に基本を教えてきた。これからは応用に移るが、そのためにはお前達には騎士になってもらうからな」
「軍曹殿、騎士になれるのですか?」
「俺がなれると言えばなれる。ダンカンにもなってもらうからな。俺とルミアと一緒に教会に行ってクラスチェンジだ」
「おおお」
「すげ―― 俺達が騎士だよ、騎士」
バイル達からは歓喜の声が上がる。
しかし、俺に言わせればこれはアメ、そして騎士にクラスチェンジした後はムチが待っている。そう、ルミアがお待ちかねの状態異常耐性を身に付けてもらう時間だ。
ダンカンやバイル達は騎士にクラスチェンジができて喜んでいたが、ルミアから状態異常耐性の話を聞くと顔が青ざめ、悲劇は繰り返される……
「姉御、お助け――」
「おほほ――」
俺達しかいないダンジョン層に絶叫が木霊する。
◇
その後、予定通りレベリングができた。
バイルの仲間達は、騎士でレベル50前後のBランク。バイルはレベル65でAランク、ダンカンはレベル55でB+ランクだ。そろそろ俺とルミア、ダンカンは王都に向かう時間だ。
「よし、今日で俺の訓練は終了だ。お前達、よく頑張った」
「イエッサー」
「これは、俺達からのプレゼントだ」
俺とルミアは手分けしてバイル達にクロム装備とミスリル装備を渡す。
「おお、スゲー」
「俺達は騎士になったばかりか、ミスリル装備まで身に付けることが出来るぜ」
バイルが代表して俺にお礼を言う。
「ノワールさん。全員にクロム装備やミスリル装備を用意してくれて本当にありがとう。皆に代わってお礼を言います」
「これもお前達が訓練した賜物だ。それにバイルのミスリル装備は、全ステータスが15%アップ、全ダメージを15%低減の付与効果がある。大事に使ってくれ」
「……す、凄い」
「それから、皆のミスリル装備はいざと言う時に装備してくれ。いきなり元闇ギルドが全員ミスリル装備では怪しまれるからな」
「わかった。普段はクロム装備を身に付けよう」
「これから俺とルミア、それにダンカンは王都に向かう予定だ」
「それならここで一旦お別れだ。俺達はもう少しここで訓練に励むぜ」
俺達はバイル達を残して王都に旅立つため、一度コートダールに戻るのであった。
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