第104話 優しい少女
俺達は孤児院に着くと、大勢の男達とレイカさん達が言い争っている。
「また、何しに来たの!! お金はこの前に払ったばかりです。お帰り下さい」
「そうだ、そうだ!!」
「悪いお兄ちゃんは、ダンカンお兄ちゃんに言いつけるからね」
そう言うと、カリンちゃんがバイルの前に立って、両手を広げてバイルを止める。
「いや、今日は取立ではなく、その……」
「あっ、ダンカンお兄ちゃんだ。お姉ちゃんを助けて!!」
ダンカンが慌てて男達の前に立ち塞がるが、ルミアが止める。
「ダンカンさん、待って。この人達は、さっき話した貴方の親衛隊になる人達よ。バインはレイカさんに私からの話だって言わなかったの?」
「それが、……そのう」
「ルミアさん、ちょっと待ってくれ。こいつらは取立人で、俺達を苦しめた奴らだ」
「でもね、これからは心を入れ換えて、貴方の親衛隊になるように私達が鍛えるわ」
ダンカンは、ルミアの言葉に納得がいかない。
その時、今までオドオドしていたバイルが、意を決したように言う。
「俺は、元闇ギルドのリーダーでバイルだ。今までのことは本当にすまないと思っている。この通りだ、許してくれ」
バイルの言葉に合わせて、元闇ギルドのメンバー全員が土下座する。
「お前達のせいで、俺のレイカが死ぬところだっだんだぞ、許せるか!! それに、この獣人区の人達も苦しんだ」
「本当に申し訳なかった。だから、今度はルミアさんに鍛え直してもらって、獣人区や農場で働く人達を助けたり、見守るように存在になりたい。それでも、気が済まないなら殴ってくれ」
その時、バイルの前で両手を広げていたカリンちゃんが、バイルの頭をなでなでする。
「い―こ、い―こ、泣かないの。ダンカンお兄ちゃん、このお兄ちゃんを許してあげて。だって、泣いているよ」
カリンちゃんの言葉に、皆は落ち着きを取り戻し優しい顔になる。
「取り乱して、すまなかったな。カリンに教えられたよ、俺もまだまだだな。バイル、皆が幸せに暮らせるように手伝ってくれ」
「……ダンカンさん」
「ダンカンでいいぞ。これからは仲間だしな」
「ありがとう、ダンカン。俺達はあなたに一生付いていくぜ」
バイル達はダンカンに促され立ち上がると握手を交わす。
「お姉ちゃん。私ね、お兄ちゃん達を仲直りさせあげたの、偉いでしょ」
「うん、大変よくできました」
レイカがカリンちゃんの頭をなでなでしていると、別の少年が言う。
「ダンカンお兄ちゃんが、お姉ちゃんのことを俺のレイカって言ってだぞ」
「そうだ、そうだ。ラブラブだぞ」
「こら――、先生をからかわないの」
俺達は、笑いながらレイカさんが子供達を追いかける姿を見守る。
「あなた、こんな光景がずっと続くといいわね」
「そうだな」
「姉御、こちらの方は?」
「バイル、主人のノワールよ」
おいおい。姉御って…… ルミアはバイルに何をやったのだ?
そんなことを考えていると、バイル達が騒ぎ始める。
「姉御、結婚していたのですか? ノワールさん!? 聞いたことがあるぞ」
「俺もあるぞ。まさか、白銀の翼のルミアさんにノワールさんだったのか?」
「いや待て、俺は、白銀の翼のメンバーが男爵になったと聞いているぞ」
うーん。ルミアが姉御って呼ばれているから、きっと手荒なことをしたな。それなら、俺も皆に気合を入れてやろう。
俺は威圧を放つと、バイル達に緊張が走る。
「よし、お前ら黙れ。俺は白銀の翼のノワールだ。俺がこれからお前達を鍛える。いいか、俺のことは軍曹殿と呼べ。そして、お前達の返事は、全てイエッサーと言え。わかったか!!」
「イ、イエッサー」
「返事が小さい!!」
「イエッサー」
「よーし、お前達は、俺とルミアの下で二週間の訓練に耐えてもらう。装備品は既に用意しているので、一時間後に集合して出発だ。支給品を配布するので、一列に並べ!!」
「イエッサー」
いいね。ロック隊の時より緊張感があるから期待できるぞ。
俺は、バイル達に装備やテント等が入った支給品を渡す。
「支給品も貰ったヤツから出発の準備に取り掛かれ。もう、訓練は始まっているから、気を抜くな」
「イエッサー」
「バイル、俺達を女性達の所に案内してくれないか」
「わかった」
俺達は、バイルの案内で女性達を迎えに行き合流すると、カザトさんの所へ向かった。
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