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第103話 謁見

 

 この屋敷内にいる陛下との謁見の申し出は、直ぐに許可された。

 俺とルミア、それにダンカンは別室で待機しているとダンカンが不安気に言う。


「緊張するな。俺が陛下に謁見するとは、夢にも思っていなかった。それに、こんな服でいいのか?」

「ははは、陛下は、人物を見た目でなく、中身で判断するから大丈夫だ」


 そんな話をしていると、ロバート侯爵が俺達を迎えに来たので部屋に向かう。



 部屋の中に入ると、既に陛下、ダイド公爵、ロビン伯爵、ゴッズ子爵が座っている。

 陛下は俺の方をじっと見つめている。どうせ、また俺がやらかすのだと思っているのだろう。


「陛下は、お忍びでこの地にいらっしゃる。楽にして座るが良い」


 俺達はダイド公爵に促され席に座ると、陛下が話し始める。


「ノワール男爵とルミア女男爵よ。本日は、何用だ」

「陛下、失礼ながら私の方から説明させて頂きます」


 ロバート侯爵は、ボリス伯爵とスクイ男爵による獣人区の税金と公共権使用料の徴収について話す。


「ロバート侯爵よ、其方の言うことは理解できる。しかし、証文に記載されている上、二重徴収の問題はあるが、徴収自体は予が関与する案件ではないぞ」

「陛下、その通りですが、本件は王家のキルト公爵が関与しております。それに証文は、我が父とキルト公爵の父との盟約で一代限りであるため、既に効力がなくなっております」


「それは誠か?」

「はい、ノワール男爵が証文を持っております」

「うむ。証文があれば、調停式を開いてもよかろう」


 早速、ロバート侯爵はダイド公爵と調停の内容について話し始める。



 俺は考えた細工を実行する。


「恐れながら陛下に申し上げます」

「また、其方か…… ノワール男爵が予に申し上げる度に、予は気苦労が絶えぬ。良い、申してみよ」


「調停で主張が認められた場合、獣人区と農場を治める貴族が必要になると考えます。そこで、私は農場の代表者で獣人区の住民からも信頼が厚いダンカンを推挙したく、ロバート侯爵も同様な考えです」


「噂は聞いておる。不毛な農地を肥沃な農場にまで発展させ、種族の垣根を越え獣人や人族が共存し、更に技術を惜しげもなく他の村や町に提供している者とは、其方のことであったか?」


 ダンカンが緊張しながら陛下の問いに答える。


「私だけの力ではありません。皆が協力して成し得たことです」

「種族の垣根を越えて共存することは容易ではないが、合同結婚式には農場の従業員達も参加しており、皆が楽しんでおったな。実に良い景色であったぞ。どのようにして、種族の垣根を越えて共存しているのか、今度ゆっくりと話が聞きたいものだ」


「簡単なことでございます。困っている者がおれば手を差し伸べ、自分が困っている時は素直に手伝ってほしいことを伝えれば良いのです」


 陛下は、ダンカンの言葉を聞くと頷き、しばらく考える。


「ロバート侯爵とノワール男爵が其方を推挙した理由がわかった。ノワール男爵、推挙の話は善処しよう」

「陛下、ありがとうございます」


 陛下と話が終わり俺達は部屋に戻る。


「ノワール、調停式は三週間後に王都で行われる。なお、合同結婚式での魔族襲撃について陛下よりお言葉を承ることになり、調停式の翌日に行われる予定だ」

「ロバート侯爵、わかりました。俺はダンカンを貴族にする準備をします。カイン達に護衛をお願いしますので、王都で会いましょう」


 俺達は、ロバート侯爵の屋敷を後にしてカイン達と落ち合い、ロバート侯爵の護衛を頼むと引き受けてくれた。ロイドとアンナにも手伝って欲しかったが、既にクリド公爵を護衛するため旅立ったようだ。





 翌日、俺達はダンカンと宿の食堂で落ち合い、ダンカンを貴族する準備について話し始める。


「ノワール、俺を貴族にする準備ってなんだ? まさか、礼儀作法ではないよな?」

「礼儀作法は、後からでも間に合うさ。急がないといけないのは、お前を強くさせることだ。考えてみろよ、これからお前はボリス伯爵やスクイ男爵に代わって、獣人区や農業を治めることになるのだぞ。それを気に入らないヤツが、お前を襲うかも知れないぞ」


「そうだな…… それでどれくらい強くなれば良い、時間がないからCランクくらいか」

「いや、俺が二週間も鍛えれば、Bランク、いやB+ランクくらいにはなれるぞ」

「本当かよ……」


 ダンカンは、信じられないと言う顔をしているが、俺のオリジナルスキルがあれば大丈夫だろう。


「あなた、ダンカンさんを鍛えるのであれば、一緒に鍛えてほしい人達がいるので良いかしら。その人達には、いずれダンカンさんが貴族になった際、親衛隊になってもらいたいと考えているわ」

「それは良い考えだな。よし、一緒に行こう」


 俺はルミアと別れ、ダンカンと一緒にテントや装備等を調達するため商業区へ向かう。

 ルミアとは後で合流する予定だ。


 ルミアの話では、ダンカンの親衛隊候補は15人程度だけど多めに買う。それと、食料や携帯調理器具等も買っておこう。目的はレベリングだが、万が一のことも考えて数名が野営用に調理ができるようしたい。


 雑貨屋や武器防具屋の店主は、俺が男爵になったこともあり自分の親衛隊を作るのかと勘違いされた。まぁ、ダンカンの親衛隊とは言えないので適当に誤魔化した。



 ◆



 マッピングを使いルミアは、バイルを見つける。


「バイル、ここに居たのね」

「姉御、良く俺の居場所がわかりましたね。それで、何のようです?」

「大至急、みんなを集めて孤児院に来て」

「姉御、わかりました。直ぐに集められるので、先に孤児院で待っているぜ」

「わかったわ。レイカと言う女性には、私が集まるように言ったことを必ず伝えてね」


 バイルは頷くと足早に仲間達を集めるため去って行った。



 ◆



 俺とダンカンは、ルミアと合流して孤児院へ向かう。

 それにしても、ダンカンの親衛隊候補はどうやって集めたのか気になるな。


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