第1話 プロローグ
ふぅ― やっと仕事が一段落したな。
これで誰にも迷惑かけずに、会社を辞めることができたぞ。
俺は妻に先立たれ子供もいない50歳のおっさんだ。
身内は無く孤独ではあるが、資産が5億円を超えているので1人だったら十分暮らすことができる。
そこで、俺は以前から考えていたことを実行することにした。それは、MMORPGであるオンラインゲームを遊び尽くすことだ。俺は若いころからRPGやMMORPG、さらにそれらの関連する漫画や小説も大好きだ。
さてと、ゲーミングパソコンや椅子も買い揃えたし、高速回線も手に入れた。
「よーし、これからは大好きなオンラインゲームに没頭するぞ!」
俺はそう言いながら勢い良く椅子に思いっきり反り返った。
『バキッ!!』
っという音が聞こえた途端、俺は椅子から転げ落ち、床に後頭部を強打して意識を失った……
◇
しばらくして気が付くと、自室でも病院のベッドでもなく、ただ真っ白い空間に俺は立っていた。
「ここはどこだ……」
つぶやいた瞬間、目の眩むような光に包まれる。
しばらくして、眩しさから解放され目を開けると、目の前には可愛らしい若い女性が立っている。
若い女性は、良く漫画やギリシャ神話で見る白い衣装を着ており、女神のような姿に見える。
俺は可愛い女性だなとドキドキしながら見とれていたが、もしかしたら女神の姿をした悪魔かもしれないと思った瞬間、女性が「えっ」と驚く。
「えーと、私は女神ですから大丈夫ですよ」
女神にほほ笑んで言われるが、まだ少し頭が混乱している。
「ここはどこだ? 俺はどうなった?」
「落ち着いて、よく聞いて下さいね。ここは次元の狭間です。そして、貴方は椅子から落ちて死にました。覚えていますか?」
確かに椅子から落ちたな。
でも、それがきっかけで死んでしまうなんて悔しすぎる。これからスローライフなゲーム人生を楽しみたかったのに、とても残念だ。
「もし、貴方にこの世に未練があるのであれば、別の世界ですが転生することができますよ?」
うおっ!! いきなり異世界転生のテンプレがきたな。でも、ここで舞上がっていると痛い目に遭いそうだし、ここは慎重に話を進めていこう。
「随分と落ち着きがあって、冷静なのですね」
「ええ、伊達に人生50年生きていませんでした。こんなの会社の事業経営報告会で、重箱の隅を突くような役員とのやり取りに比べれば余裕です」
「うらやましい、私も女神の活動報告会で毎回苦労していて、貴方のようなメンタルがほしいわ」
「まぁ、何事も経験を積んで慣れれば大丈夫ですよ」
話を聞いている内に、もしかしたら、この女神は残念女神かなと思った瞬間、女神が矢継ぎ早に言う。
「それよりも転生しますか?」
「ちょっと待った。その前に転生について質問しても大丈夫ですか?」
「ええ、時間は十分ありますので大丈夫ですよ」
「えーと、転生先はどんなところですか? もしかして、魔法を使えたりする? それと、転生者には神の加護的なギフトやチートスキル等が貰えたりするのですか?」
――よっしゃ!! 私の話に喰い付いてきたわ。私は、これでノルマを達成することができるわ。
女神は俺に向かって微笑む。
「ふふふ、貴方が思っているMMORPGやゲーム等のような世界で、そこには剣と魔法に魔獣、まさに貴方が考えているような世界です。そして、今まで通り転生者には女神の加護によるスキルと、貴方が考える3つのオリジナルスキルをプレゼントすることができます。まさに、貴方だけのテクニック、どう、凄いでしょう!!」
凄いでしょうって言われてもテンプレだし、それよりも何か違和感があるぞ。
「あのさ、今まで通りってどうゆうこと? 俺以外に過去に転生者がいるような言い方ですね?」
俺が言うと、女神は眉毛をぴくっとさせたので、これはいるなと思った瞬間、女神はしどろもどろになりながら話す。
「はい、いっ、いますよ。私は20年間で1人ぐらいかな。でも、私以外の女神もいるので5年間で一人ぐらいです」
「それで、貴方が担当した転生者は、今でも生きているのですか?」
「いないです…… 他の女神は8割の転生者が人生を謳歌しているけど、なぜか私の担当者は、うわぁ――」
――この人は、私の上司と同じような鋭い人だから、ここは面倒なので泣いて誤魔化しましょう。
おいおい、泣くなよ。何となく感じてはいたが、これはやっぱり残念女神だな。よし、乗りかかった船だ。俺は残念女神を真面な女神にするために、異世界転生のテンプレを色々と教えようと考えていた瞬間、残念女神が笑顔で言う。
「はい、お願いします」
ん? この残念女神は、俺の心が読めるのか?
「えーと、今まで転生者に、どんなテクニックを与えてきたか教えてくれ」
「はい。まずは、クラスが勇者で武器のエクスカリバーを与え、レベルを80にしてあげました」
「凄いな。それでなぜ死ぬ?」
「彼はこれで俺も無敵だぜぇぇぇ――― って言いながら、いきなりドラゴンに挑んで死にました」
「おいおい、最初は勇者でも例の青いヤツとか、定番のゴブリンとかと戦うでしょ? それに防具を装備していないようだし、転生先について詳しく説明したのか?」
「それが、シクシク」
また、残念女神は泣き出してしまう。
「わかったよ、もう泣くなよ。俺の心が読めるなら説明の仕方を教えてやるな」
「はい、わかりました」
残念女神は涙を手で拭うと、飛び切りの笑顔で答えた。
おいおい、心が読めることは適当だったが、否定しないのかよ……
俺は、MMORPGで良くあるチュートリアルについて一通り説明すると、女神が微笑みながら言う。
「本当に貴方のような人にめぐり逢えて良かった。説明は非常に分かり易いし大変勉強になります。お礼として、できる限り私の加護を与えることにしましょう」
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