脱出
「ふう。 久々に魔法を高威力で使って疲れたの……」
そう言ってグランドールは後ろ向きに倒れ込む。
その様子を見て心配したのか赤子が結界を叩いているのが見えたグランドールは立ち上がって結界を解除する。
「寝起きで驚いておったがお嬢ちゃんは何故こんな場所に居ったのじゃろうな? 改めて怪我はしとらんかの?」
赤子は頭を傾げて返事をする。
「あい!」
「う……む……」
赤子とは良きものじゃな、うむ。
グランドールは溺愛の状態異常を受けた。
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「しかし、お嬢ちゃんの名前が分からぬと困るの。 捨て子なら名前くらいは残していけば良いのもを」
赤子が喜んでくれる事に快か……嬉しさを覚えたグランドールは魔法を見せて居ると赤子は疲れて寝てしまった。
そこで名前が無い事に気がつき起こさない様に持ち上げて調べてみたが何もなかった。
ただ、服装は豪華な装飾が施されている事から高位の子とは予想が付いた。
それだけしか分かる事が無かったのである。
「ふーむ、取り敢えずはここから脱出するかの。 あの馬鹿共の事も気になるし、どれほどの日が経っておるのかも気になる」
ダンジョンのボスを倒し踏破した事で地上への転移陣が起動している。
赤子を起こさない様に抱えゆっくりと歩むグランドール。
「おお、そうじゃそうじゃ。 お嬢ちゃんの事で忘れておったわ。 魔石とクリア報酬の宝箱を見ぬとな」
転移陣の横に出現していた宝箱を開け中身を確認したグランドールは頭を傾げた。
「うむ? 小さな小瓶が一つだけかの? ダンジョンの最下層ボスの報酬のはずじゃよな? 武具や金銀財宝ではないのは珍しいのではないかの? 考えても仕方ないの、お嬢ちゃん行こうかの」
そう不思議がっているが小瓶を収納しグランドールは赤子の頬を撫でながら転移陣に乗って脱出したのだった。
その小瓶が後に重要になってくるとは今は思わずに。
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はははははは。
成功だ!!
私は成功したのだ!!
私の悲願が叶う時が来た!!
この忌々しい場所からの脱出の時が来たのだ!!
私は考え続けた。
この場所の性質を!
特性を!!
可能性を!!
最下層と言う大きな力を封じ込める為の場所だ。
どうすれば出られるのかを考え続けた。
強者とは何か?
純粋な力なのではないか?
その基準はなんなのかを考えた。
繰り返し考えて、考え着いたのは。
強いのであれば弱くなればいい、と言う物。
常に分裂を繰り返し、一つの個体の力を分散し弱くしていけばいづれは結界とも呼べる物をすり抜ける事が出来るのではないかと!!
意識だけを分裂体に移し本体を討伐してもらう!!
そうして挑戦者を待ったのだ!!
そして、私は!!
今日と言う日に!!
賭けに勝った!!
私は自由なのだ!!
私を自由にしてくれたあの老人と赤子には礼をせんとな!!
……転移陣が閉じる前に小さなスライムがダンジョンから出た。
人に憧れたスライムが始めて会った人間に恩を返す為に。