追放劇
「グランドール。 お前はここで死ぬんだ」
その日、グランドールは勇者のパーティから追放された。
……少し違う。
殺されそうになったのだ。
何か落ち度があった訳ではない。
ただグランドールの年齢が高齢過ぎた。
それだけの話だ。
勇者達は何かをしようとする度にグランドールから小言を貰い、時には怒られ、そして実力行使でもって止められた。
実力が無いのに突っ込むな。
そんな言葉選びでは誰も付いて来なくなるぞ。
お主達が最強なのではない、上には上が居る。
何時も同じ事の繰り返し。
何かをしようとして止められる。
勇者達はうんざりだった。
だから。
ダンジョンの地下深くに閉じ込めようと動き出した。
「何故じゃ? お主達の事を思っての助言のつもりだったんだがの?」
「そう言うのはもう良いの。 いつもいつも私達の自由にさせてくれないお前なんて邪魔なのよ!!」
最初に吠えたのは賢者の称号を受けた女の子のヘレン。
「ヘレンの言う通りだぜ? 爺。 とっととくたばりやがれ!!! この死にぞこないが!!!」
次は僧侶のアリストン。
彼は聖女のお目付け役として選ばれただけの人間なのだが、何故か言葉の影響力が強い。
「そう言う訳なので。 静かに死んでね?」
三人目は聖女のアルマ。
普段の彼女はこうでは無いはずとグランドールは思う。
勇者だけがこの場には居ない。
それもそうだろう。
この追放劇は勇者に黙って行われているのだから。
既に転移のトラップは発動している。
わしが助けるのを見越してわざと発動させたのじゃろう。
わしは転移する前に勇者が叫びながらこちらに走っているのが、そこでの最後の記憶だった。