03
等身大の爬虫類か。
個人的にこう思ったわ。
「死ぬわね」
いや、そうでしょ? 少なくとも同質量以上の獣と向かい合って勝てる人間なんている? 少なくとも私は人間のつもりなので勝てる気がしないわ。
でも、
「グアァァァーーー」
この爬虫類の目が気に食わないのよ。まるで笑っているかのようにくちばしを歪めて笑ってるの。
獲物をもてあそんで殺してやる。そんな意思が見えてならない。
そう。
そんなに私を殺したいのね。
こんな異世界みたいな世界で私を餌として食い殺したいのよね?
良いわよ。食い殺しなさいよ。
ジェラシックなんチャラもびっくりね。
でも、
でも、
「死んでやるわけがないでしょうがぁーーーーーーーーーーー!」
打音。
飛びかかってきた生え揃った牙。私の肉体を引き裂く爪。どちらも届く前に私の打撃が通る。
振り抜いた右足。土を踏む爪先。背を向けながら振り返る先には痙攣しながら倒れる等身大の爬虫類。
うん、なるほど。脳が小さいから衝撃が伝わりやすいのかと間違ったことを自覚しながら倒れた爬虫類に歩み寄る。
地面を自身の足でかきながら立ち上がろうとしているけれどそうもいかないようね。
それに、私は足を持ち上げる。そして振り下ろす。
でも、望んだ感触はなかった。
偶然のように土を噛んだ爪がその異形の命を救い回避を成功させた。
立ち上がったトカゲモドキは距離を取りながら威嚇する。
立ったままの人間は、このわたしは歯を剥いて笑う。
「やってやろうじゃないの」
逃げるのが最適。そんなことはわかってる。
でも、それでも、
「わたしは望んでる」
暴力を。異世界みたいなものを。
だから、手足を振るう。
噛み付いてくる爪牙を手足を使い逸らしながら、時折蹴りを叩き込む。
でも、打撃にダメージは無いようで、私は続く噛み付きにブレザーを破られ続ける。
引き裂かれる衣服はまだいい。引かれる身体が問題ね。
引かれた上で突き付けられた鋭い爪。それは私の腕を裂くだろう。でも、それを掴み取った上で己の内側に引き込み関節を極めれば、
「!!!!!!」
異形の悲鳴。
骨の折れる感触は個人的に好きじゃない。でも、これが己の命を救うなら好きになるしかない。
でも、これで終わりじゃない。
立ち上がった私はこれ以上ないほど冷たい目をしていると思う。
「死になさい」
だって私が死にたくないから。
私は振り上げた足を振り下ろした。