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006「妹VS幼なじみの仁義なき戦い。ヒロインは救世の勇者【後編】」



「お兄ちゃ~~~~んっ!!!!!」

「メ、メグっ!?」



 教室の入口から聞きなれた声が聞こえたので顔を向けると、妹のメグが全力笑顔で手を振りながら二つの弁当を持って立っていた。


「お、おいっ!? あ、あれ…………」

「あ、ああ。あれは……『マドンナ一年戦争覇者』の朝比奈恵夢あさひなめぐむたん…………その人だ」

「『ツブヤイッター』のフォローズ数が10万人越えの……ある種、ネットアイドル的存在と言っても過言ではない…………あの『メグたん』だ!」

「…………そして、朝比奈の妹でもある」

「幼なじみに校内マドンナ一位と目される雨宮麗香、そして妹には一年マドンナ戦争覇者でネットアイドルの『メグたん』…………だとっ?! 朝比奈拓海、あいつビーターやっ!!」

「「「「「この、ベータテスターめっ!」」」」」


 いや、外野の奴ら、まだいたのかよっ!


 ていうか、『ビーター』とか『ベータテスター』って…………あいつら実は『アニメ好き』なんじゃねーのか?


 あっ! 静流の奴、外野の奴らと混ざりやがった…………あの野郎。


 そんな外野の奴らに気を向けていると、


「もう……お兄ちゃん、弁当忘れたでしょ? 持ってきてあげたわよ~」


 と言いながらメグは俺たちの席へ…………というより、『麗香と俺の間に』無理やり体を入れてきたっ!


「お兄ちゃん! 私もまだなの。お弁当……一緒に食べよっ!」

「お、おい、メ、メグっ?!」


 メグが後ろには『誰もいない』かのように俺にグイグイ迫ってくる。すると、


「メグ……ちゃん?」


 メグの後ろには、顔は笑っているが目の奥が『ドス黒い何か』で覆われた笑っていない目をした麗香が立っていた。


「あれ? 麗香お姉ちゃん、いたの? 気づかなかった~、ごめ~~ん………………てへぴょんっ!」


 そう言って、メグは『うさぎ』のしぐさであざとく謝る。


「…………つっ!?」


 すると、麗香が静流に放ったのとは明らかに異なる『マジ正拳突き』をメグに入れてきた…………が、


「いやん!…………………………はあっ!!」


 メグは瞬間的に『円の動き』で麗香の正拳突きを外に逸らすと同時に、正拳突きを放ち伸び切っている麗香の右腕の手首を掴むと、すぐさま手刀を入れてきた。


「はっ!」


 しかし、メグの手刀は今度は麗香の『円の動き』で外に弾かれ、同時にメグと同じようにその手刀を放った右手首を掴む。


 二人は同じような状態で対峙した。


「コラ、メグっ! あんた後輩でしょ! 自分のクラスに早く帰りなさいよっ!」

「うるさい! うるさい! お兄ちゃんは私だけのお兄ちゃんなんだから! 麗香お姉ちゃん、ちょっと近づき過ぎっ! お兄ちゃんから10メートル離れてっ!」

「こんのぉ~…………変態ブラコン娘がぁっ!」


 二人は俺の父親から『空手』を習っており、妹は『全国ベスト8』の実力であるが、麗香も大会などには出ていないものの二人の力量は拮抗している。故に、かなりの実力を持つ二人である為、周りは二人が凄すぎてポカーンとしていた。


 そんな二人は周りのことなど一切気にせず、目の前の敵を倒すためだけに集中していた。


「むぅ~……こ、これが、『幼なじみVS妹』という『仁義なき戦い』か」

「…………ということは、ヒロインは朝比奈という構図かっ!?」

「なんとっ! うらやまけしからんっ!」

「おい、そこ、替われ! 朝比奈っ!」


 外野の奴らのコメント…………マジでオタクなんじゃねーのか、こいつら?


 そんなことを気にしている俺の横では、麗香とメグの『組手』が始まっていた。


「それにしても…………この二人は高校生になっても相変わらずだな」


 二人は昔から…………幼稚園の頃からこんな感じでしょっちゅう争っていた。まあ、だいたいその原因は俺だったりするのだが。


 本来、男としては『俺』の取り合いをしているようなこの争いは、通常なら『嬉しいもの』となるのだろうがこの二人に関しては少々異なる。


 妹のメグに関しては、前から話しているとおり『ブラコン気質』なのだが、それが年々、年を重ねるごとにエスカレートしている感じがあり、若干、『ヤンデレ属性』も芽生えている気がする。


 ていうか、俺とメグは『血のつながった実の兄妹』だ。


 恋人とか、付き合うとか、そういったそもそもの話ではない。


 そりゃあ、ラノベや漫画、アニメでは『妹もの』という属性はあるが、それはあくまで『血のつながらない兄妹』に限る(主観)!


 というわけで、俺は妹に対しては『妹として可愛がる』のそれ以上でもそれ以下でもないのだ。


 また、麗香に関しては恋人として俺のことを好きかどうかというのは微妙な感じがする。というのも、麗香は中学のとき、俺のことを『同級生だけど弟みたいでほっとけない』と言っていた。


 麗香は一人娘なので兄弟はいない。そういうこともあり、おそらく俺のことは本当に『弟』としてしか見えていないだろうと思う。実際、今日の弁当に関しても『出来の悪い手のかかる弟』という観点からの行動と考えればしっくりくる。


 麗香が俺の彼女になったらそりゃ~勿論うれしいけど、でも、勘違いして告白なぞして振られたら、もう今のこの関係に戻ることはないだろう。俺はそれが嫌だから、このままの関係を崩したくないから、俺は麗香を見守ることに決めたのだ。


 そんなことを考えている俺の横では、二人の『組手』がだんだんと熱を帯び、ガチになりかけているので、


「もうやめろ、お前らっ!」


 バシッ! バシッ!


「「…………えっ?!」」


 俺は二人の間に入ると同時に、二人の激しい突きをパッと止めた。


「…………あっ!」


 俺は、ついモノの弾みで二人の攻撃を止めてから『やらかした』事に気づいた。


「な、なんで? なんで…………運動音痴の、お兄、ちゃんが…………」

「私と、メグの動きを…………そんな簡単に…………止めれるの?」


 や、やややややややや、やっちまったぁ~~~~~~~~~っ!?


 どうしよ……。


「い、いや~……たまたま、手を出したらうまいこと止められてよかったよ、ははは……」

「い、いやいやいやいや…………そんなわけ、ない……」


 メグが俺の言葉を否定しようとしたその時、


「すご~~~~いっ! さすが拓海っ! 上手いこと二人の間に出した手が、二人の喧嘩を止める形になるなんて! これも奇跡だね、拓海っ!」

「だ、だろ~~~~~?! ハッハッハ!」

「「しら~~~……」」


 俺は光也のフォローに思いっきり全力で乗っかった!


 乗らせていただきました!


 グッジョブ、光也っ!


 二人は俺と光也の『迫真の迷演技』に『どっちらけ』だったがそんなの、おかまいナッシングである。


「じゃ、じゃあね~……お兄ちゃん、麗香お姉ちゃん」

「お、おう」

「ま、またね……メグちゃん」


 二人は俺と光也のおかげで『現実』に戻ったようで、周囲を見て『変な空気』になっていることに気づく。すると、恥ずかしくなったのか妹も麗香もさっきまでの威勢の良い言葉と態度は見る影もなく、お互い頬を朱に染めながら、よそよそしくなり、妹はその場をそそくさと出ていった。


 そんなわけで、俺は光也の機転によりちょっとした危機的状況を脱することができた。



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