004「仲の良い妹とのよくある日常風景と救世の勇者」
「ただいまー……」
「遅いっ!」
俺は家の玄関を開けるや否や、そこに立っていた妹のメグに一喝された。
「な、何だよ、メグ。まだ19時過ぎじゃないか……」
「ダメだよ! 今、お兄ちゃんは病み上がりなんだから! ほら、さっさと部屋に行くわよ」
そう言うと、メグが『いつものように手慣れた手つき』で、俺の学生服の上着を脱がせるとバックを取って、タッタと二階の俺の部屋へと上がっていく。俺はその後ろをゆっくりとついていく。
「今日は『水色の縞パン』…………か」
そして、これまた『いつも』のように俺はメグのおパンツをチラリと見る。
そして、自分の部屋に入る頃にはメグがいつものように俺の部屋着と下着を用意している。
「はい、お兄ちゃん。じゃあ、あたし風呂場に行って準備してくるから、5分後に入ってきてよね」
「わかった、わかった……」
そう言うと、メグは部屋を出ると隣の自分の部屋に行き、すでに準備してあった自身の部屋着と下着を取ると、またタッタと階段を下りて風呂場へと向かった。
「まったく、相変わらず騒がしい奴だな、メグは。それにしても……」
俺はメグの風呂場での支度を待っている間、一人、部屋で今日のことを振り返る。
「不良たちに手加減したと思ったパンチがあそこまでの威力だったなんて…………これはかなりの予想外だったし、いろいろと対策を一考する必要がある」
ということで、とりあえずステータスを一度開いて自分の『力』を確認する。
「ステータス、オープン!」
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職業:救世の勇者(地球人)(魔王討伐者)
称号:『覚醒者アウェイカー』
HP:437000
MP:48300
SP:15600
魔法:すべての魔法を習得
※詳細はさらに指示して確認
スキル:『成長スピード100倍』『技能獲得』……その他
※詳細はさらに指示して確認
耐性:全耐性取得
※詳細はさらに指示して確認
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「ふむ。自分で言うのも何だがまあ大概…………『チート』だな、うん」
とりあえず今、喫緊の課題は『物理攻撃の威力の確認』だろう。
「であえば、皆が寝静まった深夜にでもちょっと『試し打ち』でも行ってくるか。となると、今度はその『試し打ち』な場所探しなの、だ、が…………」
俺は『試し打ち』ができる場所をネットでポチポチ探す。
「う~む……やっぱ『試し打ち』するなら『山』か『海』とかになるだろうが、ここから近い場所だ、と………………『海』かな?」
ちょうど時期的にもシーズンオフで人もいないだろうし、まあ、そもそも『試し打ち』するんだから、沿岸付近では無理だし、まあ…………問題ないだろ。
ということで、俺は自分の『力』の確認のための段取りを立て準備をしようとした…………が、
「う~む、だいたい魔法で補えるから特に何か準備する必要は…………ないか。あ、靴ぐらい、かな? はは……」
と、俺は『異世界帰りのチートな自分』を改めて再認識し、一人ふと笑った。
「拓海ーっ! メグが準備できたらしいから、いつものように早くお風呂、『一緒』に入っちゃいなさい!」
「わかったよ、母さん。今、降りるよー」
そう言って俺はゆっくりと階段を下り、メグが『準備』をして待つ風呂場へたどり着く。
「お兄ちゃん、遅ーーいっ!」
「ごめん、ごめん、メグ…………じゃあ、今日は俺が先にお前の体を洗ってやるから許してくれよ」
「ダメー! お兄ちゃんは病み上がりなんだから! 今日もあたしがお兄ちゃんの体を先に洗うのっ!」
「まったく…………人を病人扱いしやがって。わかったよ」
「よしよし。妹の言うことは素直に聞くもんだよ? お兄ちゃん。それじゃあ前から洗うからこっち向いて」
「はいはい……」
まあ、どこにでもよくある、ごく普通の…………ちょっと仲が良い兄妹の日常風景だ。
このやり取りを見てもわかるとおり、俺と妹の兄妹関係は他の一般家庭に比べれば仲が良いほうだと思う。
まあ、妹が『ブラコン』ということも大きいかもしれないが。
それにしてもメグは俺のことを今でも『病人扱い』しているのは勘弁願いたい。
つい最近までは、毎日、交互に洗っていたのだが、ここ最近…………病院から帰ってからは自分の体を洗う前に俺の体を先に洗うと譲らない。
たまにはお兄ちゃんだって、お兄ちゃんらしく、自分よりも先にメグの体を洗ってあげたいんだぞ。
そんな、ごく一般家庭と何ら変わらない妹との『お風呂コミュニケーション』で一日の疲れをメグに取ってもらった。
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「さて……と」
――深夜一時
家族の皆が寝静まった頃合いを見て、俺は風呂に入る前に準備していた運動シューズを履き、窓を開け、星が輝く夜空に向かって………………飛び出した。
「飛翔魔法…………スカイシフト!」
俺は『空を飛ぶ』プラス『スピードアップ効果』のある飛翔魔法『スカイシフト』でかけ、急いで目的地の『海』へと向かった。
どうして急いでいるのかって?
明日も学校だからだよ!
ということで、20分ほどで目的地に到着。
場所は、俺の住んでるS県の海岸から10キロほどの沖合。
「そんじゃ、早速…………試してみる、かっ!」
俺は力任せに水面に向かって拳を放った。すると……、
ズッ………ドォーーーーーーーーーーーーーーンっ!
俺の放った拳の拳圧は、海水を押しのけ、完全に海底にぶち当たり、海水が拳圧により上へと舞い上がった為、海底が完全に露になった。
その後、上空へと舞い上がった海水が元の場所へと戻る。
結果、俺の周辺だけ『土砂降りの大雨状態』となっていた。
「ふう…………なるほど。3割の力でこの威力か。じゃあ、次は…………」
俺は周辺に影響を与えない程度で物理的な力だけを試していく。
そして、力の8割ほどを出したところで…………異変が起きた。
ゴゴゴゴゴゴ……………………………………………………!!!!!!
「げっ! 地震になっちまった! もうこれ以上は…………無理、だな」
そう言って俺は、急いでその場を後にする。
「とはいえ、だいたいどの程度の物理攻撃であれば人を殺めないかの『物差し』はわかったな。うん! 今日はこれで良しとしようっ! 退散、退散」
――次の日
『臨時ニュースです。本日、S県の沖合10キロの海底を震源とするマグニチュード3.5の地震が発生しました。なお、今回の地震による津波の影響はありませんが余震の可能性もある為、海のレジャーは避けましょう……』
「怖いわね~、地震ですって」
「メグも拓海も大丈夫だと思うが、一応、余震には注意するんだぞ!」
「あ、う、うん……」
「大丈夫だよ、お父さんっ! お兄ちゃんを守るのがあたしの…………生まれてきた理由だからっ!」
メグの『ブラコン語録』の更新に『想いが重いよっ!』とツッコみたかったが、昨日のこともあり、俺はただただ、心の中で家族に、そして、S県の皆さまに謝罪した。
皆さま、ご迷惑お掛けして、本当~~~~に! 申し訳ございませんでしたぁぁあぁあ~~~~!!
【追記】
地震は特に余震も起きることなく無事、鎮静化しました。
調子に乗ってやり過ぎてしまい、本当、すんませんっした!