044「宇龍会の切り札と救世の勇者【その6】」
「この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません」
「あの~、すみません……」
その男は『宇龍組』という看板の前で立っている人相の悪いチンピラ二人に声をかけた。
「ああっ?! なんだ、てめえはっ!!」
チンピラのドスを利かせたお決まりのような返事に対し、男は特に怯む様子もなく言葉を続ける。
「ここ、宇龍会の事務所でよかったですよね?」
「なんだ、お前はいった…………」
「おいっ! 待てっ!!」
もう一人のチンピラが男が話に割り込んできた。
「…………お前、もしかして朝比奈拓海って奴か?」
「はい、そうです」
「そうか……くっくっく…………本当に一人で来るとはな…………まあ、警察呼んでもシラバッくれることはできるがな……」
チンピラは笑いながらそう呟く。
「あ、兄貴……もしかしてこいつが……」
「ああ……堂島組長が言っていた高校生だ。話では鮫島の『黄龍』をぶっ潰したって聞いていたが、正直、目の前のガキが『黄龍』をぶっ潰したなんてことは…………ねーわ。あっはっはっは……」
その『兄貴』と呼ばれた男が拓海の目の前でガンを飛ばしながらそんなことを言った。
「まあ、とりあえず、立ち話も何だからよ…………事務所で話そうか、兄ちゃん……」
そう言って『兄貴』という男が拓海の腕を捕まえようとした瞬間、
「……俺に触れるな」
そう言いながら拓海がその男の腕を捕まえ……そして、
ボキッ!!!!
「!? あぐぁっ……!?」
拓海は力づくでその男の腕の骨をへし折った。
男の腕はあり得ない角度に曲がり、プラーンとぶら下がった状態となっていた。
「なっ?! な、ななな、なんだ、おま…………!?」
突然のことに混乱したチンピラが威勢よく何か言おうとしたが、
「……黙れ」
「?!…………な、な……か、体が…………」
拓海はチンピラに近距離から6割強の『圧倒魅了』を放出。チンピラはその場に体を震わせながら膝をつき、そして恐怖のあまり…………失禁していた。
「さて……行くか」
拓海は正面入口から堂々と『宇龍会総本部』の事務所へ入っていった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――現在
ドゴーーーーーーーーーーーーン!!!!!!
拓海は事務所内で片っ端からヤクザをぶっ潰しながら、母親が拉致されている場所を聞き出し、現在、組長の堂島の部屋がある『最上階』へとエレベーターで移動。そして、目的の最上階でエレベーターが停まると拓海はエレベーターの扉を無造作に蹴り破った。その瞬間、
ドガガガガガガガガガ…………!!!!!!!!!!!!!!
そこで待ち伏せしていた10人以上のヤクザが持っていた拳銃をエレベーターに向けて映画のワンシーンのように躊躇なく乱射した…………が、
「まあ、そんなこったろうと思ったよ」
事前に防御魔法『絶対守護結界』を展開していた拓海の体に拳銃の鉛玉が届くことはなく、体の50センチ手前で『見えない透明の膜』のようなものに遮られ、そこで数十発の鉛玉が止まって浮いていた。
そして、拓海が手を振り下ろすとその鉛玉がボトボト……と床へと転がる。
「何だか、マト〇ックスのネオみたいになってるし……」
そんなひとり言をポツリと呟きながら、拓海はその拳銃を持った男たちへズンズン向かっていく。そして、
「圧倒魅了60%……」
拓海が6割の『圧倒魅了』を発動。近距離で受けた男たち十数人が膝をついてガクガク震えて動けなくなった。
そうして拓海が奥へと進み、いかにも組長室のような豪華の扉の中に入ると、そこには以前拓海たちを襲い返り討ちにあったチンピラたちが顔をボコボコにされ気絶していた。そして、さらに奥へと進もうとしたとき、『おい、女…………ついてこいっ!』という声が聞こえたのでそこへ向かうと、そこにはエレベーターがあったがすでにエレベーターは上へと移動していた。
「屋上…………か」
そう言って拓海は外階段から屋上へと上がっていった。




