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001「登校初日。いきなり不良に絡まれる救世の勇者」



 ガラガラガラ……。



 俺は約一カ月ぶり…………とは言っても感覚的には『一年ぶり』のクラスのドアを開けた。


 すると、皆から一斉に注目される。そして……、


「おおおおーーー! 朝比奈拓海が来たぞーーーーっ!」

「本当に生き返ったんだ! すごいっ!!」


 クラスの連中がワイワイと俺の周囲に一斉に集まってきた。


「え? え? な、何、何……?」


 俺は……事故前の俺は、こんな周囲から注目されたり声をかけられるような存在ではなかった。どちらかというと、アニメやラノベが好きな者同士で教室の片隅で語り合うような存在だった。それが、どうして、こんなことに……?


「妹さんの『ツブヤキ』見たわよ! 子猫を助けようとしてトラックに轢かれて『意識不明の重体』だったのに一カ月後に目を覚ましたって。それは医者から見ても『奇跡』だったって……」

「『ツブヤキ』?…………あ、あいつ」


 妹のメグはSNSの『ツブヤイッター』でけっこう有名らしく、その中の機能で『フォローズ』というファンのような存在が現時点で『約10万人以上』いるとのことだった。


 そして、ブラコンのメグはその『ツブヤイッター』で俺が事故に遭った経緯と、目を覚ますまでのことを多少の『脚色』をしてツブヤキっていた。


 結果、そのことがクラス中に広まっていたようだった。


「ねえ、本当に意識不明だったの? しかも、その時、腰の骨も折っていたのに治ったんだって?!」


 メグめ、そんなことまで……。


「あ、ああ、うん。何か、目が覚めたら治っていたんだよね…………あはは」


 とりあえず、笑ってごまかしました。


 だって、それしかできねーしっ!


 自分で魔法かけて治したなんて絶対に言えるわけねーしっ!


「すごーい! 奇跡、奇跡ーーあははー!」

「すげーな。奇跡ってやつ? マジぱねーわっ!」

「そ、そう……ですね……」


 高校に入学してすぐにクラス内カーストの底辺、外野でモソモソと趣味のアニメやラノベについて話せる友人としか話せなかった俺が、今、クラス内のカースト上位にいる『チャラい系女子』に話しかけられていた。


 俺は笑ってごまかしながら、いつもの定位置である教室の前側の片隅でたむろっている『アニメ・ラノベ枠友人』の二人のところへとフェードアウトした。


「久しぶり、拓海っ!」

「本当に、もう、大丈夫なのですか…………タクミ氏?!」


 いつもの…………中学からの親友でもある二人に会って、俺はやっと落ち着きを取り戻した。


「それにしてもメグちゃんのツブヤキ見て驚いたよ。そんなアニメのような奇跡ってあるんだね?」


 こいつの名は『武本光也たけもとこうや』。


 こいつも俺と同じアニメやラノベを趣味にしている奴で、しかも『好み』の部分が俺と似ているので話が合う。


 ちなみに、顔は俺やもう一人の奴と比べても、いや、比べなくても、けっこうなイケメンの部類に入る。イケメンの種類で言えば、いわゆる『可愛い系』というやつだ。身長が160センチと男性にしては小さいほうでしかも体も色白で細い。なので、女性から『守ってあげたい』と思わせる母性本能をくすぐらせるタイプである。


 そんな『美少年』なのだから、光也がちょっと本気を出せば彼女くらいすぐに出来そうなものなのだが……、


「あはは……そうは言ってもね~、ボク、三次元の女の子に興味ないから」


 天は二物を与えず。


 そういうものなのだろうか?


 まあ、本人がそう思うのならそれでいいのだろう。


 多少はそういった気持ちもわからないでもないし、特に否定する気だって毛頭ない。


 すると、もう一人の友人が会話に入ってくる。


「奇跡……か。中々、興味深い話だな、タクミ氏。吾輩、大好物であるっ!」


 こいつの名は『伊礼堂静流いれいどうしずる』。


 言葉尻からでもわかるとおり…………『オタク丸出し』の男でこいつも中学からの悪友の一人だ。


 ちなみに、静流は俺や光也と同じようにアニメやラノベも見るが、どちらかと言うと『都市伝説系オタク』である。


 静流によると『都市伝説』にもいろいろとジャンルがあるらしく、静流が好きなのは『世界を裏で動かす秘密結社系』と、UFOやUMA、超能力といった『オカルト科学系』らしい。


 ちなみに静流の外見は、顔から言うと黒の長髪で目にいつもクマをつけ、それを誤魔化しているかのように黒縁のメガネをかけている。


 身長は180センチと175センチの俺よりもさらに高い。


 長身であればスポーツとかできそうかと思うだろうが、こいつは細身でヒョロっとしているので周囲からは『ノソっと歩く暗いオタク』として『不気味オタク』と言われているが、本人はそんな声をいっこうに気にする様子はない。


 そんな『鉄の心』を持つ男である。


 本人に直接言うことはないが、個人的に俺はこいつのそういう部分をすごく尊敬している。しかし……、


「タクミ氏。もしかしたら…………君の体、何か実験とかされていないか?」

「ねーよ。別に普通に病院で寝てただけだし」

「いや、わからんぞ。もしかしたら宇宙人が病院から誘拐アブダクションして、体内に『マイクロチップ』を埋め込んでいる可能性も……」

「いや、ないって! ちゃんと病院にいたし、宇宙人に誘拐とかされてねーよっ?!」

「むぅぅ…………お前のその『奇跡』がらみで何か『大きな陰謀』でもあるかと思ってワクワクしていたのに非常に心外だ!…………吾輩のワクワクを返せっ!?」

「知るかっ!!」


 とまあ、こんな感じで静流はヒジョーーーに『面倒くさい男』である。


 そして、


 俺がクラスで仲が良い奴はこの二人と、あと、もう一人いる…………それは、


「おはよー、拓海。元気になって本当によかったねっ!」

「!? お、おう……おは、よ……」


 今、声をかけてきたこいつの名は『雨宮麗香あまみやれいか』。


 付き合いは光也や静流よりも古く、なんと幼稚園生からの付き合いだ。つまりは『幼なじみ』という奴だ。ちなみに麗香自身も光也と静流とは中学からの友人である。


「何よ? 妙によそよそしくして………………何かあったのかな?」


 麗香が軽くジトッとした目線を向ける。


「べ、別に何もねーよ! ひ、久しぶりに学校に来たから、何か、落ち着かないっていうか……」

「そっか…………確かにそうだね。拓海が事故に遭った始業式からもう一カ月近くは経っているもんね………………。体、本当にもう大丈夫なの?」


 麗香はそう言うと今度は心配そうな目を向ける。


「だ、大丈夫、大丈夫! 今はもう、すっかり元気だからっ!」

「…………よかった」


 麗香はやっとホッとしたのか、いつもの笑顔を向けてくれた。


 ちなみに、幼なじみの麗香はうちのクラス…………というよりも、学校の全生徒の中でも一、二を争う『マドンナ的存在』である。


 まあ、正直、麗香の『スペック』を知っている俺たち三人からすれば『校内のマドンナ的存在』となっても別に驚くことはない。


 そんな麗香のスペックについてここで触れておこう。


 身長は168センチと女子にしては高いほうで、顔は黒髪のおさげでメガネをかけている。なので、パッと見は『寡黙なマジメ女子』に見えるが、実際は社交性も高く、男子だけでなく女子からも人気が高い。


 しかし、何と言っても麗香を語る上で外せないのはその『抜群のスタイル』だろう。華奢な体のくせして出るところはしっかり出ているといった『わがままボディ』。その『わがままボディ』でも特に目立つ、豊満なたわわなお胸は男子の目を釘付けにさせる。


 ちなみに、静流の話だと『あれは最低でもEカップはある……ぞ!』と力説していた。まあ、たしかにそれくらいあってもおかしくないほど、実に説得力のあるボリューミーなサイズ感ではある。


 あと学業のほうも、成績は学年三位という優秀さで、まさに『美』『心』『頭脳明晰』という『三本の矢』を兼ね備えた『完璧女子パーフェクトウーマン』が彼女である。


 そんな『クラス内カースト上位』であるはずの麗香なのだが、昔からの幼なじみである俺や、中学からの友人である光也や静流にも普通に話しかけてくれる…………というか、だいたい俺たちと一緒のことが多い。


 とてもありがたいことではあるが、しかし、周りの人間は『あまり俺たちに関わらなければいいのに』とでも言いたそうな露骨の目線や威圧をかけてくる。


 そういうこともあって、このままでは麗香に迷惑がかかると思い、一度、『お前のためにも、俺たちと関わるのはもうやめたほうがいい』と言ったことがある。すると、


「そんなの私、全然気にしないもん! 他人に何言われようと私のことは私が決めるのっ! それとも拓海は私のことが嫌いっ?!」


 と、上目遣いでそんなことを言われた。


「そ、そんな、わけ…………ないだろっ! ただ…………俺たちみたいな、その……オタクみたいな奴らと話すと周りから……」


 すると、


 ガッ! と麗香が俺の胸倉を掴む。


「拓海が嫌だって言うなら引くけど、そうじゃないのなら私は絶対に三人の友達をやめるなんてことはしないんだからっ! 他の人が何か言ってきても私は100パーセント、拓海たちのがわに立つし、失礼なことを言ったり、ちょっかいを出す奴らがいたら私が…………私が拓海たちを守るのっ! いい? わかったぁーーーっ?!」


 と、イケメンな言葉で一蹴された。


 やだ、麗香さん、かっこいい。


 そんな感じで俺は一カ月ぶり(体感的には一年ぶり)に気心の知れた仲間に出会って、改めて異世界あっちから帰ってきてよかったなと感じた。


 しかし、俺はひとつ大事なことを忘れていたことに気づいていなかった。


 それは…………。




――放課後。



「じゃあ、俺ちょっと職員室に用事あるから終わったらすぐに向かうわ」

「わかった。いつものファミレスだからね」

「オーケー!」

「タクミ氏! 急ぐのだぞっ!」

「わかってるよ!」


 俺は光也と静流と別れ、職員室に行く。


 職員室で担任と体調について話をしたが問題ないと告げ、すぐに用事は済んだので俺は足早に職員室を出て、いつものファミレスへと向かおうとした。すると、


「よう、拓海。久しぶりだな、え~、おい!」


 !?


 俺の目の前には5人のいわゆる『不良』が行く手を立ち塞いでいた。


「あ……」


 そう、俺は大事なことを見落としていた。それは……、


「あれだけ俺たちにイジメられても学校に来るなんて、中々根性あるじゃねーか。ひょっとしてマゾか?」


 その5人の不良のリーダー格の男がそう言って『ひゃははは』と下品な笑い声を上げる。


 思い出した。


 俺は、子猫を助けてトラックに轢かれる前の始業式の日、こいつら不良に絡まれ、トイレでそれはもうボコボコに殴られたんだっけ。確か、理由は『麗香と仲良くしゃべっている俺が気に食わない』という、そんな理由からだったと思う。


「そんなわけで………………拓海。ちっと面貸せや」


 そうして俺は5人の不良に掴まり、人気ひとけのない校舎の裏山に連れていかれた。



迷った挙句の三連投っ!


ストックはすでに虫の息…………ガクブルです。

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