020「動き出した世界と救世の勇者(朝比奈恵夢の場合)」
――朝比奈恵夢の場合
「お兄ちゃん…………」
拓海の妹であり、揺るぎない『ブラコン道』を走り続けるトップランナー朝比奈恵夢ことメグは、拓海の『異世界転移』の話や魔法を見せられた後、部屋でベッドで布団を頭からかぶってうずくまりながら一人考え込んでいた。
「わかんない……意味、わかんないよ、お兄ちゃん。何よ、異世界って……? 何よ、魔法って……? 全然わかんないよ。さっきは納得したように『うん、うん』言ったけど、どうして、麗香お姉ちゃんやみんなはあんなにすんなりお兄ちゃんの話に納得できるの? 常識的に考えても……………………異常じゃん」
メグは麗香や静流、光也が拓海の話をすんなり受け入れたことに戸惑っていた。
「確かに『魔法』はすごかったけど、でも、だからって…………そんなすぐに『信じろ』って言われても…………無理だよ」
コンコン……。
「メグ…………入っていい?」
「?! お、お兄ちゃん……………………うん」
メグは拓海が部屋に来るのをまったく予想していなかっただけに戸惑いつつも、部屋に招き入れた。
「ど、どうしたの、突然…………」
「い、いや……なんかさ…………俺の話を聞いた後、少し元気のない顔をしてたから」
「…………」
メグは拓海の言葉に嬉しく思いつつも、しかし、『異世界に行った』とか『魔法を使える』という話にまだ混乱しており、結果、無言の返事を返した。
「ごめんね、お兄ちゃん。あたしには…………お兄ちゃんの話がやっぱり信じられなくて……」
「うん……」
「確かに学校の裏山で助けてもらったあの『力』や、さっきの『空を飛ぶ魔法』も凄かったけど…………でも、理解が……追いついていないの……ごめん」
「うん……大丈夫だよ。ゆっくりで…………メグのスピードでいいから、俺の話を少しずつ理解してくれればいいから」
「ありがとう…………ごめんね、お兄ちゃん」
「メグが謝ることなんて何もないよ。俺だってあの三人がすんなり話を信用してくれたのはビックリだったし……むしろ、今のメグの反応みたいな感じになると思っていたんだけどな。だから、メグの反応が普通の反応だと俺は思うよ」
「そ、そう……だ……よ……ね?」
「ああ」
「よかったぁ~~~~~~~~~~~~~っ! あたしが普通じゃないと思っていて正直、凄いへこんだし、怖かったのっ!! そうだよねっ!! あたしが普通だよねっ!!!」
「あ、ああ……」
メグは、『自分の反応のほうが普通だ』ということを俺の口から言ってもらったことになのか、あれだけ落ち込んでいた顔がパーッと明るくなって俺に詰め寄ってきた。
「そう、あたしの反応が普通よっ! だから、お兄ちゃんには悪いけど今のあたしはまだお兄ちゃんの言っていることは信じてないからっ!!」
「えっ?! ちょ……ちょ……」
「何て言うの……? こういうのって全面的に話を受け入れるというのはどうかとあたし思うのっ! 私のカンではお兄ちゃんの話はすべて『お兄ちゃんの妄想』ということで結論づけているわっ!」
「え、えええええ~~~~~~っ!? じゃ、じゃあ、さっきの魔法とかは?」
「あれはね、超心理学における『集団心理』が引き起こした錯覚現象ね……きっと」
「は、はあ……(はじまった)」
メグは自分が恐怖の対象としている『幽霊』や『超常現象』などを、超心理学や脳科学といったものを独自で学ぶことにより、『科学』という『鎧』で理論武装し自分を安心させている…………という変わった思考の持ち主である。
「だからね、あの時はみんなお兄ちゃんの話に没入し過ぎた結果、『錯覚』を起こしたと思うの。だから、実際、あの場では空を飛んだなんてことはなく、たぶん、みんな『集団催眠』に近い状態だったんじゃないかしら。ということは、つまりその時の脳内のシナプスの動きは…………ぶつぶつ」
「…………」
メグはさっきの落ち込みモードはどこ吹く風で、一人、『分析モード』に入ってしまった。
こうなると、もう、外の声はシャットアウト状態となる。
「う~ん…………まあ、いっか」
俺はとりあえず妹に信じてもらうことを諦め、そっとドアを開け、部屋から出ていった。
本作品は、実際に今語られている「都市伝説」の中で「UFO、陰謀論、宇宙」といった辺りの「マコトシヤカナ話」を混ぜた作品として進んでいく予定です~。
('◇')ゞ




