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014「すべてのはじまりと救世の勇者」



「…………こ……ここは?」



 俺は目を覚ますと『白しかない世界』にいた。


 まあ、『白しかない』とも言えるし『光しかない』とも言える…………そんな世界にいた。


 周囲を見回しても何もなく、また、自分自身を見ると『体』さえもなかった。言うなれば『意識だけが存在する世界』と言ったところだ。


 そうして、少しずつ現状を把握したタイミングで名前を呼ばれた。


「……やあ、はじめまして。朝比奈拓海くん」


 その声に意識を向けると『何もなかった世界』に突如、『ローブを被った老人』が現れた……………………と同時に、今度は自分の『体』も見えるようになった。


「ここは………………そうじゃな~、お前らの世界の言葉で言うとすれば『真我領域ワンネスバンド』という場所じゃ。そして、ワシもまたお前らの言葉を使って表現するのであれば………………『神様』という位置になる」

「はあ……神、様…………ですか」

「まあ、戸惑うのも無理はない。お前が生きていた『文明』での『神様』という存在は『神話』や『御伽話おとぎばなし』でしかないからのう。まあ、ワシが『本物の神様かどうか』についてはあまり意味がないのでどう思うとお前の勝手じゃ。さて……」


 そう言うと、自称『神様』は近くの『いつのまにか現れていた椅子』に腰を下ろすと俺にも座るよう促された。すると、俺のほうにも椅子が用意されていたのでそこに腰を掛ける。


 ちなみに、本来であれば今起こっている状態や現象は、地球ではあり得ないもののはずなのに俺はちっとも不思議に思うことはなく、むしろ感覚的には『ああ~、そういえばこんなんだったか……』という、何というか、こう…………『根本ではこういう世界であることを俺自身は知っていて、ただ、そのことを少し忘れていた為に理解が少し遅れた』という感じだった。


 今、考えるとその場所での感覚はまったく特殊で不思議な感覚だったことを覚えている。


 さて…………そんな、フワフワした状態の俺のことを気づいてはいるものの、しかし特に気に留めることはなく神様は話を続けた。


「まずは、先ほどの…………お前が自分の身を盾にして子猫を助けたその勇気と行動力は素晴らしかった。グッジョブ! 感動したっ!!」


 いきなりのハイテンションな称賛に最初ビクついた俺だったが、その後、実はあの時、行動したのは『子猫を助けたい』という意図があったのではなく、気づいたら動いていただけだから、自分はそんな善人ではないと説明する。だが、


「わかってる! わーーーってるよ、ワシはっ!…………ったく、ツンデレかっ!?」


 と、初見の厳格さはどこへいったのか、すっかり『面倒くさいじじい』へとなり果てていた。


「さて、とりあえずお前の現状を教えておこう。その上でモノは相談なのじゃが……」


 そう言うと、神様は俺が『トラックに轢かれたこと』、それにより『腰の骨を折り、病院で意識不明の重体』となっていることを、今、俺の目の前にある『念写機』というテレビのようなものを見せながら教えてくれた。


 その『念写機』には病院のベッドで包帯を巻かれ眠っている俺に、妹のメグや両親、そして、麗香、光也、静流たちが声が掠れるほどの大声で俺の意識を覚まさせようとしていた。


「……みんな」


 俺はその光景を見て一瞬悲しくなった…………が、不思議と大きなショックを受けることはなかった…………などと考えていると、


「ほっほっほ…………気にするな。この世界では『人間』の持つ『感情』は自動的にフラットになる世界じゃ。じゃから、感情の揺れはここではほとんど起きないぞい」


 などと、神様は俺の考えを見透かしているように答える。確かに、この世界での俺の感情は神様の言う通り自動的に干渉され強制的に穏やかにされる感覚だった。


「……さて、朝比奈拓海くん。今の君の地球での現状を把握してもらったところで、今後についての君の話をしようと思う」

「今後……?」

「うむ。まずは率直に君の状態について話をしよう。今の君の真我意識……『魂』と呼んだほうがわかりやすいかのう。そんな『魂だけの状態』の君が今ここにいる君で、目の前の念写機に映し出されている現実世界の『肉体』から抜け出してここにいる……」

「魂……」

「うむ。そして『本来の君自身』である『魂』が『肉体』に戻ることは………………ない」

「えっ?!」

「君の肉体は『このままの状態』で病院のベッドの上で生涯を終えることとなる」

「う……そ……?」

「うむ。残念じゃが『今の地球の文明レベル』では君の意識を『現実』に戻すことはできない」

「はあ……」


 俺はこの時『かなりキツイ現実』を言われていることを頭ではわかっていたが、如何せん、この世界の『感情抑制システム』とでもいうべきか、まあ、そんなもののおかげで『ただただ、自分の状況を冷静に受け止めている』という状態だった。


「そこで、モノは相談なのじゃが…………お前がもしワシの願いを聞いてくれるのであれば、ワシの力でお主の魂を『現実の肉体に戻す』ことが可能なのじゃがどうじゃ?」

「どうじゃ?…………って、つまり取引ってことですか?」

「そうじゃ」

「もし、断ったら?」

「そのままじゃ。具体的に言うと…………お前の肉体が死を迎えるまではこの場所で留まってもらい、肉体の完全な死後、お前のその『魂』は真我界ワンネスフィールドへ…………あ~、わかりやすく言うと『成仏する』ということじゃ」

「天国に行くってことですか?」

「う~む、まあ、そんなところじゃ。だからまあ、別にワシの願いを断っても別に心配することはないぞ」

「は、はあ……」


 とりあえず『地獄』に行くことはないことを聞いてホッとする矮小な俺でした。




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