009「キレる救世の勇者」
「……遅いな」
校門の前で妹のメグを待っているが1時間経っても来なかった。
「まさか、俺との約束を忘れて帰った?…………いや、それはメグに至ってはあり得ない」
俺は校門で一人考える。
と、その時、携帯の着信が入った。
「メグからだ。もしも……」
「……よう、お前、朝比奈拓海だよな?」
「……誰だ」
電話に出ると、見知らぬ男の声だった。もちろん、メグには彼氏などいない。
「妹は預かった。返してほしくば裏山に来い」
プツ。ツー、ツー、ツー。
男はそう言うなり、すぐに電話を切った。
「まさか…………前のアーミーナイフの男か? だが、声が少し違ってたと思うが…………まあ、とりあえず裏山に向かうか」
俺はすぐに裏山へと足を運んだ。
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――1時間前
「もう! 今日に限ってなんで先生の手伝いするハメになるのよ~」
メグ……朝比奈恵夢は帰りがけ、担任に捕まり明日の授業の準備の手伝いをさせられていた。10分ほどで終わった後、急いで校門へと向かう。
「お兄ちゃんより早く行きたかったのに~~~~~~っ!!」
そんな愚痴をこぼしながら廊下を走っていると、
「待ちな」
目の前に上級生っぽい不良四~五人が進路を邪魔するようにして立っている。
「何ですか?! あたし、急いでいるんですけど!」
ただでさえ、急いでいたということもあり、メグは少しイラッとした口調で相手に返事をした。
「お前、先輩に向かってなんだ、その口の利き方は?」
メグはイラッとしてつい手を出そうとするも、先輩ということもあり、とりあえず堪える。
「す、すみませんでした。で、何か用事ですか?」
メグはとりあえず話を聞いて用事を済ませたほうが早いと判断してそう問いかけた。
「お前の兄貴に用があるんだけどよ? そこでお前には…………人質になってもらおうと…………思ってなっ!」
と、言うや否や、いきなりその不良はメグを力づくで捕まえようとした…………が、
「はあっ!」
「ごふっ?!」
メグは男の手を掻い潜ると同時に相手の鳩尾へカウンター気味に肘を入れた。すると、男は痛みのあまり膝をつく。
「いきなり、何すんのよっ! この変態っ!」
そう言って、メグは戦闘態勢で構える。
「な、なんだ、この女……!?」
「山田さんが一発で膝をつくなんて……」
取り巻き連中が目の前の光景に大きく動揺している。
「舐めないでよね! こう見えて、あたし、空手四段ですからっ!」
「「「「「か、空手……四段っ!?」」」」」
人数では不良たちのほうが多いはずだが、場はメグが不良たちを圧倒していた。
「先輩の皆さんでも、あたしを襲うのなら…………容赦しませんからっ!」
メグが『これは最後通牒です』と言わんばかりに不良たちに圧をかけた………………その時、
「へー、空手四段かー。可愛いのにすごいね」
「!? だ、だれ……っ!?」
バチバチバチバチッ!!
メグは背後から男に声をかけられた瞬間、『スタンガン』を当てられ、一瞬でその場に倒れこんだ。
「どうもー♪ 弧嘉渡ミサヲって言います。これからお兄ちゃんを呼び出すために君を拉致するよ」
「お……兄…………ちゃ……ん……」
「でも…………そ・の・ま・え・にっ!」
ドゴッ!
「ごほっ!?」
ミサヲはそう言うと同時に、なんとメグのお腹をサッカーボールのように…………蹴った。
「女が男に向かってその口の利き方は何だ、ああっ?! 殺すぞっ!!」
ミサヲは、体がしびれて身動きが取れないどころか失神寸前のメグに対して、頭から足まで関係なくストンピングし続ける。
それを見ている不良たちは女の子に対してこんなに容赦なく蹴り続けるミサヲを見て引くも、ミサヲの暴力の矛先が自分に向かうことを恐れ、何も言えず、何もできず、ただ、その様子を眺めるだけしかできないでいた。
「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ…………。よし、お前ら早く裏山へ運べ」
ミサヲに蹴り続けられその途中で気絶したボロボロのメグを不良たちはすぐに担いで裏山へと向かった。
「はあ、はあ、はあ、はあ…………今日はかなりテンション高いぜ、俺はぁ~~~~っ?!」
ミサヲが凶悪な笑みを浮かべながら、ゆっくりと裏山へと歩き出す。
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「待っていたぞ…………お前が朝比奈拓海か?」
「…………誰ですか?」
拓海は裏山へ入り、前にアーミーナイフの男たちに連れていかれた場所へ行くと案の定、そこに不良たちがいた。
「俺が質問をしている。答えろ!」
「はい。僕が朝比奈拓海です」
「……そうか」
すると不良の男はボロボロになったメグを引っ張ってきた。
「?!…………メ、メグっ!」
「……やあ、朝比奈拓海くん♪」
バリバリバリバリ……ッ!
ミサヲはメグの時と同じように拓海の後ろからスタンガンを当ててきた。
「アッハッハッハ!…………どうだい? スタンガンの威力は?…………て、あれ?」
バリバリバリバリ……ッ!
拓海がずっとスタンガンを当てられ続けているが特に倒れる様子がないことにミサヲは何が起こったのかさっぱり理解できないで茫然としていた。
「…………お前が、メグをやったのか?」
「ぐえっ?!」
拓海は後ろに振り向き、ミサヲの首を掴んで持ち上げた。
身長差もあり、ミサヲは首を掴まれながらジタバタしている。
「な、なななな、何でだよっ! 何で、お前…………動けるんだよーーーー!」
ミサヲは理解が追い付けないまま、何とか拓海の手から振り切ろうと自慢の『怪力』で拓海の手を放そうと掴みかかるが…………拓海の手は動かない。というか、全く微動だにしなかった。
「この…………クサレ外道がっ!」
「グベッ!?」
ゴシャッ!
拓海はミサヲの首根っこを掴んだまま、地面へと叩きつける。
「ご……ごはっ?!」
ミサヲはあまりの衝撃に体がバウンド。背中を強烈に打ったためか軽い呼吸困難を起こしていた。
「?!…………ミ、ミサヲさんを……一撃で…………」
「しかも、あの強烈なスタンガンを打たれても倒れないなんて…………」
「ば、化け物…………っ?!」
すると、拓海は一瞬でメグを抱える不良の目の前へ移動し、
「俺の妹に…………触れるな!」
「ごべっ?!」
拓海はメグを不良から奪うと、次にそこにいた10人程いる不良たちを、
「ごへっ?!」
「ぶぎゃっ!?」
「うごあっ?!」
一人一人、ぶん殴り数十メートルほど吹っ飛ばして気絶させた。
俺は非常に怒ってます。