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008「狂人ミサヲの企みと救世の勇者」



「ふぁぁあぁぁぁぁぁあぁあ~~~~~~~っ!」

「大きなあくびっ!」



『妹VS幼なじみ大戦』から一夜明けた次の日、俺は妹と一緒に朝の登校中。


 昨日、帰りのHRホームルームで『明日は英語の抜き打ちテストを行う! 皆、死ぬ気で勉強してこいっ!』とは英語教科とうちのクラスを兼任する美人女担任の口から飛び出した非情な言葉である。


 これにより、俺は徹夜で勉強をするハメとなり現在非常に寝不足なのである。


「しょうがないだろ、今日、抜き打ちで英語のテストをやることになったんだから……徹夜だよ、徹夜。はあ~、何なんだよ、ウチの担任。せっかく美人なのに可愛げまったくねーよっ!?」

「そう? でも、お兄ちゃんのクラス担任のその『榊先生』は女子には大人気だよ?」

「え? そうなの?」

「うん」


 メグによると、ウチの担任……『榊伊逗奈さかきいずな先生』は年は20代前半っぽい外見で(なぜか年齢不詳とされている)、夏でも冬でもいつも『黒のスーツと白シャツ』でビシッとキメている。しかも、胸やお尻がこれでもかと言うほど主張したがるレベルの豊満さも相まって、スーツのような体のラインが目立つ容姿は女子からは『憧れの体型』としてリスペクトされている。


 また、その容姿と合致するような『厳しさ、厳格さ』を持つ性格から『カッコいい美人教師』『理想の女性像』として女子の間では絶大な人気を誇るらしい。


「まあ、その格好良さは分からんでもないし、あのモデル雑誌から飛び出したかのような『爆乳・美尻スタイル』が素晴らしいことに否定の余地はないが…………」

「……お兄ちゃん、顔、デレデレし過ぎ」


 おっと、気持ちが顔に出ていたようだ……気をつけねば。


 そうこうしている内に学校の校門に着いた。


「それじゃあ、お兄ちゃん…………あ、今日は一緒に帰るんだからね!」

「わかってるよ」

「うん。それじゃあねー!」


 メグはそう言うとはしゃぎながら一年の教室へと走り去っていった。


「まったく……あいつもまだまだ子供だな」


 俺は呆れつつも『我が妹は世界一可愛いな』と思いながら校舎へと入った。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「ふ~ん…………あいつが二年の朝比奈拓海か。何だか普通だね。ていうか、妹ちゃん、可愛いね♪」



 屋上から拓海のことを見つめてそう呟いたのは…………弧嘉渡ミサヲ。


「ねえ? あいつって喧嘩強いとかで有名なの?」


 ミサヲが子分の男たちに質問を投げかける。


「い、いえ……そんな話は聞いたことありません。ただ……」

「ただ?」

「一カ月前の始業式の日にトラックにはねられて意識不明の重体だったらしいのですが、一週間前くらいに奇跡的に目を覚ましたらしく、三日前くらいから学校に通い出したのですがその時は校内で話題になってました」

「一カ月前の始業式の日?…………あー、郁実ちゃんにぶっ殺された二年の奴がそいつをイジメたとか言ってたな~。へぇ~、イジメられたのに普通に学校に通うなんて怖くなかったのかな?」

「さ、さあ、どうでしょう?」


 バゴッ!


「あぐっ?!??????」


 ミサヲがいきなり質問した男の鼻に裏拳を叩きつけた。


 男はどうして今、殴られたのか理解が追い付かず、ただ怯えている。


「ふ~ん、何だかちょっと興味が湧いてきたよ。ありがと、いろいろ教えてくれて…………殴ってゴメンね?」

「い、いえ……!?」


 殴られた男は関わりたくないの一心で殴られた理由を聞くことはなかった。


「あと、ちょっといろいろと調べてほしいことがあるんだけどいいかな~?」

「は、はい!」

「え~とね…………朝比奈拓海の身辺調査。家族構成とか友人関係とか」

「は、はい、わかりました…………」

「じゃ、よろしこ~! いってらっさ~い♪」


 ミサヲがテンション高めにそう言うと、10人程の子分たちは『この場を逃げ出すチャンス』とでも言いたそうに、我先にと屋上から駆け下りていった。


「さ~て、それじゃあ、ちょっといろいろと『仕掛けて』みようかな?」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「あれ? 今日、静流は?」



 拓海は教室に入ると、いつも朝っぱらから絡んでくる面倒くさい男、伊礼堂静流が今日は絡んでこない……というか教室にいないことに気づき光也に声をかけた。


「おはよう、拓海。うん、今日、静流君はお休みみたいだよ」

「ふ~ん、何、風邪か何か?」

「さあ?」

「あいつ……まさかズル休みじゃねーか?」

「あはは、そうかもね」

「ったく、しょうがね~奴だな……」


 そんな感じで光也と話をしていると麗香が教室に入ってきた。


「おはよう、拓海、光也!」

「おはよう、麗香」

「おはよう、麗香ちゃん」

「あ、そうだ! 今週末、拓海んちに行くから」

「え? どうして?」

「だって、お師匠さん…………おじさん、今週末に帰ってくるんでしょ? メグちゃんに聞いたわよ」

「あ、うん。三日前に仕事で海外に出たばっかりなのに用事ができたってトンボ返りで一旦戻ってくるって言ってたな……」

「でしょっ?! お師匠さんはいつも仕事で家にいないからさ、このタイミングでお師匠さんに稽古つけてもらおうと思って!」

「……頼むからウチでケンカとかしないでくれよ?」

「当たり前でしょ! だから道場でメグと一緒に『お稽古』すんのよ!」


 フフン! とメグへの対抗意識をこれでもかとあらわにする麗香。


「わかった、わかった。でも俺はお前らには付き合わないからな」

「ええ~! あ、あんたも道場に来なさいよ!」

「ええ~?!」

「いいじゃない! どうせヒマでしょ?!」

「そ、そりゃあ…………………………ヒマだけど」

「じゃあ、拓海! ボクと映画観に行こうよ!」

「こ、光也?! 何だよ、いきなり……っ!」

「いや、週末ヒマって言うからさ。ボクも時間空いてるし、今、ちょうど見たい映画があるからさ…………どう?」

「まあ…………それもいいな」

「もちろん! その後は『アニメニティ』にも行ってさ、いろいろ最新作とかチェックしようよ!」

「乗った! よし光也、行こうっ!」

「ちょ、ちょっと光也ーーーっ!」

「あはは、大丈夫だよ、麗香ちゃん。昼過ぎには帰ってくるよ。ね、拓海?」

「ああ。映画は朝の初っ端から観て、『アニメイティ』に行っても15時くらいには帰るよ」

「わ、わかったわよ……………………じゃあ、何か、お土産買ってきてよね?」

「わかった、わかった……」

「あはは。オーケー、わかったよ」


 ということで、今週末は久しぶりに『アニメイティ』でいろいろ欲望を解放しようと俺は一人密かに…………燃えたのだった(ボッ!)。



――放課後



「遅いな~…………メグの奴」


 俺は約束どおり、校門前でメグを待っていたのだが…………一時間経ってもメグが校門のところに来ることはなかった。




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