プロローグ前編「異世界からやってきた救世の勇者」
「ぐ、ぐはっ?! お、おのれ~~~~~~っ! きゅ、救世の勇者~~!!」
俺は、目の前の『魔王ヴァルシュトナ』の急所である『胸の魔石』に『天将の剣』を思いっきり突き立てた。
魔王ヴァルシュトナは苦悶の表情を浮かべながら『天将の剣』の消えない青の炎に包まれている。
「わ、我は諦めん……! か、必ずや、お前に、救世の……勇者……に、復讐してや…………」
そう叫びながら魔王ヴァルシュトナは青い炎に体がどんどん埋め尽くされ、やがて……………………消滅した。
「や、ややや、やったーーーーっ!!! 遂にやったわね、タクミーーっ!!」
「ああ、遂に倒したな、魔王ヴァルシュ………………もがっ?!」
そう言いながら、戦士のレナ・ジャスティンが俺に抱きついてきた。
結果、レナの豊満なお胸で俺の顔がうずくまる。
「む、むぐぐぐぅぅ~~っ!(く、苦しい~~っ!)」
「やめなさい、レナ。タクミがあんたの巨大な脂肪で苦しんでいる。離れろと言っている…………この『脳筋ウシ乳娘』」
と、今度は外見『幼女』の大魔導士アイリス・イシュルミナがS級の身体強化魔法を使ってレナから俺を力づくで引き離した…………と同時に、俺の顔が今度はアイリスの微乳へと寄せられた。
「どう? 私の胸なら苦しくないでしょ? タクミ……」
「あ、は、はい……」
微乳とは言え、アイリスの胸の少しふっくらとした感触が顔伝いに伝わってくる。これは、これで、また、けっこう…………よろしいかと。
俺は少し顔を赤らめた。
「ふふ……顔を赤くして可愛い。やっぱり、タクミは私の一番。魔王は倒したから、次は…………私たちの結婚式を開くだ……け……」
「?!」
そうして、アイリスが俺の顔に手を寄せ、キスをしようと迫る。
「コラコラコラコラーー! そこの『ロリっ子詐欺娘』! やめなさーーーい!」
そこに『怪力無双の乙女闘士』であるマリーナが参戦してきた。
ドゴォオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーン!
マリーナはアイリスと俺がさっきまでいた場所に拳を叩きつけた。すると、その場所に約3メートル級のクレーターが出来上がった…………のだが、アイリスはそのマリーナの攻撃を予測していてヒラリと余裕でかわしていた。
「ふん。あなたの攻撃なんて予測するのはとても容易い。だって単純だから。単純バカだから。だから結果、私に当てるどころか触れることさえ…………無理」
「こ、この、ロリババア~~~~~……!?」
「よし! では、共闘しようじゃないか、マリーナよ!」
ここで、レナがマリーナに共闘を持ちかける。
「くっ……! 癪だけど、ここはお願いするわ、レナ!」
「ふん。あなたたち二人がかりでも私の『予測演算』にかかれば攻撃が当たることはな…………」
「お前ら、いい加減にしろーーーーーーーー!!!!」
俺は3人にゲンコツをお見舞いした。
「あ痛っ!?」
「痛ったーーーーい!?」
「……痛い。タクミの攻撃だけはどうしても予測ができない…………不思議」
かくして、俺たち4人は魔王ヴァルシュトナを倒し、この世界の平和を取り戻した。
俺は……名前を見ればわかるとおり『日本人』だ。
そして、お気づきの人もいるだろうが、俺は地球からこの異世界へと転移してきた『異世界転移者』だ。
というわけで、まずはこの異世界に転移してきた経緯とこれまでのことを説明しようと思う。
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俺の名は『朝比奈拓海』。17歳。
県立梅ヶ丘高校に通う…………いや、通っていた高校二年生だ。
俺が、地球からこの異世界……『アルヴァゼロ』にチート能力を授かって転移してきたのが今から約一年前のこと。その転移の『きっかけ』は異世界転移の『お家芸』とも言える…………『トラックに轢かれる』というイベントだった。
とは言っても、別に死んだわけではなく、絶賛、病院で腰の骨を折って『意識不明の重体中』である。
どうして知ってるのかって?
それは、神様に見せてもらったからだ。
その神様に俺は、
「お前のその自らを犠牲にして子猫を助けた『行い』は実に素晴らしいものだった。グッジョブ! 感動したっ!!」
と、かなりのハイテンションで絶賛された。
というのも、俺は学校の始業式の帰り道で道路に飛び出した『子猫』を助けようとしてトラックに轢かれたからで、神様はその事にテンションMAXで全力称賛していた。
もちろん俺は『聖人君主』でも『善人』でもない。
ただ、あの時は、何と言うか、気づいたら体が反応していたとしか言いようがなかった。なので、つまりは意図的ではなく、いわば『偶然の産物』のようなものだった。
だから、神様にもそう説明したが『皆まで言うな、皆まで言うな』と何やら『俺だけはちゃーんとわかってるマン』とでも言いたそうな顔でニヤニヤされ、挙句の果てに『まったくツンデレかっ!?』と訳の分からないツッコミまで入れられる始末だった。
そんなわけで、神様からチート能力をもらって俺は異世界『アルヴァゼロ』へと転移する。
そこで俺は王様と姫様から恐怖で世界を支配しようと目論む『魔王ヴァルシュトナ』を倒し世界を救ってほしいと頼まれる。
まあ、事前に神様からこの世界がどういう状況で、俺の役目が何なのかという話は聞いており、その上で俺はその役目を果たすことを『承諾』して異世界へやってきた。だから、王様や姫様の願いを聞き入れる形で『魔王討伐』に了承した。
え? どうしてそんなことを簡単に『承諾』したのかって?
それは、アニメやラノベに造詣の深い俺からしたら『第二の人生』で英雄になることを是としたからだ。だって、憧れるじゃない…………『英雄』って。
ちなみに俺はその異世界にいる『召喚士』の女の子によって召喚された。
具体的には、召喚士が『神様』に『要望立て』をし、それが聞き入れられることで『召喚』が成立するというものらしい。俺も詳しくは知らない。
ただ、まあそんな感じで俺はこの世界へ転移することとなった。
ちなみにその『召喚士』の女の子は美少女だ。
名は『マチルダ・アッカイム』といい、年齢は20歳と言っていたが、見た目は身長が155センチくらいということもあり、12歳前後にしか見えない。いわゆる『ロリ顔』だった………………がっ! 胸だけは背丈や顔とはギャップのある『巨乳』の持ち主だった。
アイリスが彼女のことを『敵』として認識しているのも仕方のないことだろう。
さて、それともう一人、この国の姫様で『美の象徴』として皆から熱い視線を送られる美少女……『ジュリアン・リザスター』。華奢な腰のあたりまである長い金色の髪は男性の視線を釘付けにする。さらに、彼女の顔とスタイルはまさに『美の象徴』と言われるだけの説得力のある作りだった。
『こんなキレイな人間が存在するんだ……』と、俺はジュリアンを初めて見てそう感じたのが『第一印象』だった。
ちなみに彼女は。この人間の国を治める『リザスター王国』の第一王女であり、かつ、王位継承第一位の人物である。
そんな『超スーパーセレブ』のジュリアンなんて、本来であれば身分的に俺から話かけるなんてできないレベルの女性なのだが、事あるごとにジュリアンのほうから話しかけられ、気が付くと一番の親友となっていた。
彼女……ジュリアン曰く、『だって、私にとっては『救世の勇者』こそ、この世界の誰よりも『尊い人物』だと思ってるもの! 当然でしょ!』と言われたときは異世界転移して良かったと心の底から思った。
ちなみに『救世の勇者』とは俺のことなのだが、何でも太古の昔に俺と似たような『異世界から来た少年が世界を救った』という神話のようなものがあったらしく、それが今ではこの世界でよく読まれる『絵本』となり、それはベストセラーとなっているらしい。
そして、その絵本の中の勇者は『救世の勇者』と呼ばれていたようで、それがジュリアンのように『救世の勇者ファン』というのを生んだらしい。実際、旅の途中でもそういった『救世の勇者ファン』は少なからずいた。
結果的に、俺は『魔王』を討伐することができたので、そういった『救世の勇者ファン』をガッカリさせずにすんだので内心ホッとしている。
さて、王宮で王様の『魔王討伐』を了承した後、俺は一緒に戦ってくれる仲間を見つけに冒険者ギルドへ向かった。
というのも、俺にはチート能力である『成長スピード100倍』と『技能獲得』というものがあったがまだ経験値としてはゼロでもあったのでレベルを上げるためには仲間が必要だったからだ。
そんなわけで、冒険者ギルドに入り、そこで、事情を説明すると協力してくれるという男性のチームに出会った。チームは三人のようで見た感じ、戦士1、魔導士2、といった感じだった。
俺はリーダー格であろう戦士の男にお願いをし、一緒にレベル上げの旅に出ることにした。
しかし、それは実は『罠』だったようで…………というのも、この三人は『初心者殺し(ビギナーズ・キル)』という初心者の冒険者を殺して金品を奪う悪名高いチームだったらしく俺は三人に殺されそうになる。
一応、レベルはまだゼロだったが、『技能獲得』もあったので、それで勝負しようとしていた、その時…………そこに大魔導士のアイリス・イシュルミナが現れ、そいつらを一網打尽に討伐した。それがアイリスとの最初の出会いだった。
その後、いろいろあってレナ・ジャスティンとマリーナ・ダリルホーンも仲間に加わり、それから約一年後、俺は魔王討伐を成功させた。
とりあえず、調子に乗って新作を投下!
よろしくお願いします。
m(__)m('◇')ゞ