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夢への入口

 さぁ皆さん、よく想像してくださいませ。

 特段美しいわけでもない、色の抜けた茶色の髪に色の抜けた葉っぱのような緑の目の少女がいました。

 その子が不慣れな社交界にでると、とても美しい青年に出会いました。彼は輝くばかりの金髪に、宝石のような瞳を持つ、王族騎士団の方でした。

 この後のことを、想像してくださいな。

 少女は彼に見初められ、婚約し、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。

 ………ってのを想像しません?

 シンデレラストーリー的なものを想像するよね。普通。

 ……いや、皆さんもご存知の通り、薄々気がついてはいた。この人普通じゃないなーって。

 だからまぁ、なんとなくね、普通に幸せな、ありきたりな毎日はおくれないだろうなぁーって思ってはいたんだけど。

 ……いたんだけど。

 誰が軟禁状態に追い込まれるなんて想像しますか。いや、しないわ。(逆説)


 えぇ、そうですね、私は今、あてがわれた部屋に軟禁状態です。

 私の部屋になったのは、さっきのリビングの三分の一ほどの大きさの部屋。であっても無駄にでかいんだけど。

 リビングから廊下に出て、吹き抜けの階段をのぼり、右手に進んで突き当たり。一番日当たりのいい部屋、の隣。

 実を言うと、突き当たりである隣の部屋はレイ様の部屋です。なんと隣とはドアで続き部屋になっている。ドア1枚隔てた先にはあのブルーアイ。いやぁ、肝が冷えるね。


 とりあえず疲れたので休ませて欲しい、といってあの恐怖的な状況を乗り切った私である。

 部屋にいてなお、私の近くから離れない気ではあるまいかと気が気ではなかったが、幸いにも、あの隊長様は何も言わず部屋を出ていった。

 さっきまでは使用人さんが2人ついていたんだけど、寝るからと出ていってもらった。


 ちなみに、部屋はシンプルな作りだった。

 右手には、本がいっぱいに積められた本棚が三つ、その間にはウォークインクローゼットに続くドア。中央には大きなふかふかベッド。その隣には小さなテーブル。そして左手には大きなソファ、そしてドア。

 あまりゴテゴテしたものが好きでない私としては嬉しいけれど。

 ベッドに倒れ込むと、ぼふっという音を立ててベッドが沈んだ。なかなか好きな感触。

 全身が色々な意味で悲鳴をあげている。長時間の移動に、あの人のわけわからない行動。

 右腕に手を当てる。

 痛みはとっくにひいているが、そこにはまだ微かに赤色が残っていた。


「……どういうこと」


 私に見せるあの執着は一体どこからくるのか。やはり私を探していた発言に関係あるのだろう。しかし、覚えていないものは仕方が無い。

 何度も何度も思い出そうと努力をしたが、さっぱり記憶にない。なんどもいうが、レイ様は金髪碧眼の美青年。むしろ覚えていない方がおかしい。

 金髪の知り合いなら何人かいるけどね。

 兄は茶色に近い金髪で、あとは幼なじみのヴィオラという少女、お隣のリキくん、妹みたいなエリィ。

 ヴィオラは一番の仲良しだけど、なにせ気の強い子だった。喧嘩した回数は数え切れない。それでも、なかなかな美人で、紫に近い青の瞳はつり目気味で、猫を思い起こさせた。

 余談だけど、ヴィオラには兄がいて、けれどその兄は妹のような輝く色は持ってなかった。彼とはとっても仲が良かったから、よく「ヴィオラは綺麗なのに」ってからかっていた。

 ………そういえば。エリィにはしばらく会っていないな。

 父の用事で王都に行った時に出会った女の子。恥ずかしがり屋さんで、ふわふわ可愛い金髪を伸ばすことで顔を隠していた、真っ白なワンピースが似合う女の子だった。

 父が用事の間、しばらくエリィの家にお世話になっていたのだけれど、エリィにはお兄さんが一人と、妹と弟が一人ずつ。中々の大家族だなと思ったりもした。

 そしてまた、お兄さんにはあったことがないけれど、エリィとその下二人はとっても可愛かった。

 妹のアレッタは、クルクルとした巻き毛をよくツインテールに結んでいた。お姉ちゃん、とはにかんだ笑顔のなんと可愛いことか。弟の方は、まだ赤ちゃんだったから、いーちゃんとかいー君とか呼んでたっけなぁ。

 とにかく、幼い私は、そんな3人を見て、お姉ちゃんになった気でいたのだ。守らないと、とまで思っていた気がする。

 エリィは私の家に遊びに来たこともあって、ヴィオラとも仲が良かったはずだから、また3人でお茶でもしたいな。

 今度手紙を出そうか。そう思って無意識に頬が緩む。……あれ、エリィの名字なんだっけ。たしか、ルー……?まぁ、いいか。

 私は昔の友人を思い出して、少しだけ癒された。すると、急に眠気が襲ってきて、瞼が上がらなくなった。

 今日はもう寝てしまおう。レイ様とのことは、どうにかしてはっきりしないといけないが。この眠気に逆らって起きていても、考えるにはいたらない。

 私は大人しく、襲い来る眠気に身を委ねたのだった。

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