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前日の夜

 さて、どうしたものか。

 もう私とレイ様の婚約は決定事項になってしまった。したがって考えても仕方が無い。

 しかし考えたくもなるだろう。我ながら、もう少し考えて決めるべきだったと思う。

 不幸中の幸いとして、彼の家に入るのは来年の夏まで待ってもらえることに、というか両親がそれまでに私をなんとかしてお淑やかに仕立てようとしてるというか。今のうちに言っておくね、たぶん無理。ごめん。


 と、ぎゃあぎゃあしながら時間だけが経っていき、結局私の性格はなおるわけもなく。

 私は、今日最後となる実家の自室での夜を、落ち着きなく迎えていた。

 落ち着けないというか、眠れない。眠れるわけがない。むしろ先日あんなことがあった後で普通に眠れる人間がいたら会ってみたいものだ。

 しかし、グルグルと部屋を回るだけで一向に進まない思考回路に、逆に頭はグルグルしてきた。


 婚約、言ってしまえば結婚だ。

 世の女性ならば、伴侶となる男性に、多少の期待を抱くものだろう。いや、私が一般的な女子でないことくらいわかってるけど。ね?

 普通でないとしても私だって結婚に関しては欲がありますよ。自由がほしい、とかね?

 でもほとんどの世の女性がそれは叶わずに政略結婚の相手と、生涯を共にするのだろう。

 ………ちくしょう、身分社会め。

 話がそれた。とにかく、その期待の点で言うならば、レイ様は文句一つない男性なのだろう。

 あくまでも一般的に言ってではあるが。

 美しい相貌に、優秀さ、高い地位、噂ではレディーファーストな貴公子というものもある。

 『女子というものは妄想力が何ともたくましい生き物だ』というのは父の言葉であるが、その女子に私は含まれているのかしらね。

 余談だけど、レディーファーストってホントは優しくなんてないらしいよね。盾にしようとしたとかなんとか。

 まぁそれはそうと、そんな女子たちも、まさか貴公子があんな執着男だとは思わなかったでしょうね。えぇ、私も思いませんでしたとも。

 しかし、ふと気がつく。彼はあの時なんと言ったか。

 『やっと見つけた、ずっと探していた』と言いはしなかったか。

 いやいやまさか。私は彼を知らない。知らないが。

 知らない人間にあぁも執着するものだろうか。彼の言葉が嘘だとしたら、とも考えたが、嘘である必要はどこにもない。つまり、彼は本当に私を知っているのか。

 私は一つため息をつくと、ベッドに足を投げ出して座った。そしてそのまま枕を抱きしめる。

 もし、本当に彼が私を探していたとしたら?ならどうして私は彼を覚えていないのか。

 ……何を考えているのかわからなくなってきた。

 私は枕を定位置に戻すと、毛布にくるまった。

 明日は明日の風が吹く。無理だ。私が今考えても仕方ない。何故なら考えても進まないから。


 楽観的に考えよう。相手はみんなが憧れる王族騎士団の隊長様だ。それに目の保養と考えても良いほどの美形だ。何が不満なのか。

 いや何って。怖いんですよ。あの時の目がまぶたの裏に焼き付いてるほどに、あの時は恐怖を覚えた。何故かはわからないけど。

 執着に対して怖いと感じたのなら、裏を返せば大切にされることを期待してもよいのではないか。

 私はまたまとまらなくなった頭を抱え、どうにか眠りにつこうと目を閉じた。

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