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二人の変化

 目を覚ました時、私は飛び上がりそうになった。というか若干飛び上がった。悲鳴を上げなかっただけ褒めて欲しいくらいの驚き。

 目を覚まし、寝ぼけて目の前の布にしがみついた私は、しかしある疑問を持った。

 ……こんなの私のベッドにあったっけ。

 布、と呼ぶには固いし、ただの布にはボタンなど付いていないはず。しかもなんだか暖かい。

 ぱちぱちと瞬きをすること3回。自分が掴んでいるものが白いシャツであることに気が付き、まさか、と思って顔を上にあげれば、ムカつくくらい美しい彫刻……ならぬ寝顔。整えられていない金色の猫毛に、同色のまつ毛。うっわまつ毛長ーい。

 って。


「(………っ!?)」


 何故ここにレイ様がぁぁあ!?

 飛び上がりついでに離れようとするが、どうやら彼の腕が私の背中に回っていたようで無理でした。

 ちなみにもう片方の手は私の頭の下。いわゆる腕枕ですね。

 離れられないどころかぎゅっと腕の力が強くなったので、私は思い切って現実逃避に走った。

 …昨日何があったんだっけ?

 確か、殿下たちがきて、レイ様が好きだって気がついて。んでなんかよくわからないまま「結婚式いつにする?」って聞いてしまって、断られて…………。

 あぁ、そうそう。聞いたんだ、なんで私なのって。

 ………うわぁぁぁあああああああああ……。

 何しちゃったの私!勢いにも程があるじゃない!

 あ、ちなみに服は着てます。大事なことだからもう1度、服は着てます。

 私は思い出しついでに青くなったり赤くなったりを繰り返して百面相しつつ、最後には羞恥で赤くなり、またさっと血の気が引いて青くなるという、本気で訳が分からないという状態に。

 というか、あの状況で寝られるって、私の神経を疑う。振られた相手の前で間抜けにもスヤスヤと寝入ってしまうなんて。その時のレイ様の顔を想像すると……。

 うわぁ。恥ずか死ねる。

 顔を両手で覆って恥ずかしさに耐えていると、上から唸り声。


「ん、…んぅ?」


 ゆるゆると開かれた瞼の奥に現れたのは、青い瞳。くっそこんな時まで色気出しやがって…!!

 そんな色気に当てられて胸がときめきつつクラクラする私も大概だと思うけれど、惚れた弱みで許してください。

 はぁ、と私がため息をついたら、大きな手に頬を撫でられた。


「………リィ?」


 その声の甘さに、思わずあうあうと口を開けたり閉めたりを繰り返していると。


「……………ん……」


 レイ様がゴソゴソと身を屈めたと思えば、私の首元に息がかかった。

 ひっ、と私が息を呑んだ瞬間。


「っ!?」


 激痛。

 めちゃくちゃ痛い。

 突如肩に鋭い痛みが走り、恥ずかしさとは違う意味で息を飲んだ。

 レイ様がそっと首筋から離れたので、慌てて痛みが走る場所に触れると、僅かな凹凸。

 呆然として彼を見上げる私に満足気な笑みを浮かべた彼は。


「寝起きにリィゼの顔が見れるって、幸せだね。これからは毎日そうしようか」


 と、今は至極どうでもいいことを宣った。

 いや、あのですね、今はそれじゃないんですよ。そこじゃなくてですね?


「あぁ、それ?昨日、リィゼが寂しそうだったから。俺のだって印でも付けておけば逃げられないかと」


 その発言にもひぇっとしたが。普通印っていったらさ、歯型じゃないと思うのね。小説とかでよくあるじゃない、チクッとする、みたいなの。あれだと思うの。

 と、私の言いたいことを察したのか。


「……リィゼにはそっちの方が似合うかなって」


 と、蕩けるような甘い声で、甘い表情で言いやがった。

 ……ありえない。

 昨日の私よ、お前が好きなのはこんな奴だったのか。

 ………私、趣味悪い。

 というか、ここまでくると……。私嫌われてるのでは、とすら思える。

 私が微妙な顔を浮かべているのに気がついたらしいレイ様は、そっと私を抱きしめると。


「……嫌?」


 と、なんだか寂しそうな顔をした。

 それをみて、おや?と思う。

 いつもなら、腕にあざを付けて喜んでいるだけだったり、閉じ込めて当然と思っているだけなのに。

 私のことを気にしたよ!?

 それだけのことで、なんでこうきゅんとしてしまうのかな、もう末期ですね、はい。

 ちら、と上を見上げると、額にキスが落とされた。


「リィゼ、教えて。君が嫌なことはしたくない」

「………痛いのは嫌いです」


 ぽつり、呟いた声に、わかった、という声とともにまた額へのキス。

 これは、と思って調子に乗った私が外にでたいと言えば。


「それはダメ。君が外に出て男に会おうものなら、そいつら全員殺さなきゃいけなくなる」


 と、レイ様は甘い顔して、唐辛子素で食べた並の言葉を発した。

 ………………私、ほんとにこの人のどこに惚れたんだろう。

 意外と優しく包み込む彼の腕の中で、私は難解な問題にぶち当たっていた。

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