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パラレルコネクト・オンライン  作者: yuto*
パラレルコネクト・オンライン標準時:6月
94/118

Act93-夜の街

「ちょっとユズハ、ちゃんと歩いて」

「うーん……」

 酔っ払いのごとくヨタヨタと歩くユズハと、それを引っ張るフィリア。毎回ギルド会議の後に見る帰りの光景だ。


 いつもなら軽いデコピンで目覚めるユズハだが、今日はむしろ、そのまま気絶してしまいそうな勢いになっている。

「ほら、寝る時間無くなっちゃうよ」

「やだぁ……」

 言葉に反してだんだん歩くスピードが落ちてきたユズハを、最悪おんぶして連れて帰ろうか、などとフィリアが考えた時。


 ーー背後から声がした。

「あの、そこのお二人さん」

「……!」


 驚いて身構える。フィリアが夜の街で声をかけられたのは、まだこの世界に来たばかりの頃以来だ。しかもその時はPKされかけたこともあり、激しいデジャヴを覚えていた。

 しかも、他の職業(クラス)と違って、フィリアの武器は戦闘時以外はストレージに仕舞っている。咄嗟に反撃することができない。

 思わず歯噛みするフィリアを見て、突然声をかけて来た人物は不安げな表情に変わる。

「もしかして迷惑でした?」

 そこで初めて、フィリアは声をかけて来た人物が女性ーーいや、少女であることを悟った。

「あ、えと、ごめんなさい。何か用?」

「ちょっと道を聞きたくて……ここに行きたいんですけど、わかります?」

 可愛らしいキーホルダーがつけてある端末の画面を指差しながら、少女はおずおずと尋ねた。

 その場所は幸いなことに、フィリアたちのホテルに近い。


 特に断る理由も無かったフィリアは、快くそれを受け入れた。



 ◇◆◇◆◇◆



「あなた、この世界に来たばっかりなのね」

 ”カスミ”と名乗った少女は、どうやら補填被験者のようだ。チュートリアルの内容を覚えていたこともあり、それがすぐにわかった。

「そうなんです。だから施設の場所もわからなくて……」

「へぇ……」

 そこで会話は止まり、何度目かの沈黙が訪れる。


 もちろん、色々気になる点はある。例えば、「いつ頃来たの?」とか「何歳なの?」とか。どんなに些細な疑問でも、今の気まずさを打開するためには必要に思える。

 だがそういう会話は、隣で器用に歩きながら寝ているユズハの得意分野であり、私はいつも聞いているだけの役回りに徹していた。

「(ちょっと、起きて)」

 反応は無い。今のユズハは頼りにならないようだ。


 ーー何か話さなきゃ……、どうしようか。

「っ……。あの、私、もうここで大丈夫ですので」


「え?」

 私は、突然少女が言った言葉の意味を、一瞬理解できなかった。

 目的地の場所がわからないんじゃなかったのか。

「大丈夫? 着けるの?」

「え、えぇ。もう、大丈夫ですので!」

 そう言い残して走り去っていく。


 ーー不思議な子だったな。


 そんな私の心中を読み取ったかのように、繋いだ右手の先から聞き慣れた声。

「空気読んだんじゃない?」

「……起きてたんだ」

「うん。なんか面白そうなものが見れそうだったからーー痛っ! 何で叩くの!?」

「自分の行いを振り返ってみて」

「わかった! わかったからとりあえず手を止めて!」



 結局、ホテルに戻るまで、私のユズハを叩く手が止まることはなかった。

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