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パラレルコネクト・オンライン  作者: yuto*
パラレルコネクト・オンライン標準時:5月
91/118

Act90-役決め

「それでは二三〇番からーー」

 少しだけ開いたドアの影から顔を出して、白衣の男が淡々と番号を読み上げていく。

 エントランスに座る私たちはそれを無言で聞き続ける。時には落胆のため息をつく人もいたが、声を上げる気力がある者は誰一人いなかった。

「ーーから、二五〇番の方。どうぞこちらへ」

「……来ちゃったね」

「あぁ」

 周りが静かだっただけに、私たちの呟きがやけに大きく響いたように感じた。

 私と誠也の番号はそれぞれ二三五番と二三六番。ようやく「パラレルコネクト・オンライン」の世界へと足を踏み入れることになる。


 先ほどのチュートリアルから、待ち時間にして数十分。これを長いと見るか、短いと見るか。


「短い……ね」

「どうした?」

「何でもない。行こう」

 あちらの世界と現実世界の時間の進みが異なっているとはいえ、こんなにも早く補填が必要になるのだろうか。

 ーーもし……既に失われた被験者の中に、兄が入っていたら。

 行けばわかることだが、どうしても考えてしまう。



 白衣の男に誘導されるがまま、二〇人の被験者が薄暗い部屋へと連れて行かれる。

「それでは、番号に対応した個室へどうぞ」

 言葉と同時に、部屋に明かりが灯る。

「うわ……」

 部屋だと思っていた巨大な空間は、まるでシャワールームのような個室によって区切られており、ドアには三桁の番号が振られている。

 せまい通路を進んで行き、自分たちの個室の前に着く。

「じゃあ、後で」

「おう。会えたらな」

「絶対会いにきてよ」

 その会話を最後に、私は躊躇いながら二三五番の部屋に入る。


「……」

 まず目の前に飛び込んできたのは、赤い小さな椅子と、壁に取り付けられたテーブル。その上には明滅する機械が置いてあり、第一印象は診察室のようだった。

 監視カメラらしきものも天井に取り付けられていて、何だか誰かに監視されているようだ。まぁ、そのためのものだけど。

 一通り確認し終えたが、まだ気がかりな点がある。

「あれ?」

 機械の操作方法が、どこにも記載されていない。

 目の前のコンピュータらしきものの画面には、赤や黄色、緑といった様々な色の明滅しか表示されておらず、マウスも無ければキーボードも無い。

 学校の授業で少し触れただけの私でも、使いこなせるものだといいけれど。

 とりあえず赤椅子に座ると、すぐに変化は訪れた。


 コンピュータの画面に”Welcome!!”の文字列が映る。良かった、私でも読める英単語で。


 だがーーそこまでだった。


「うわ……なんじゃこりゃ」

 一番上の”Role set up”に始まり、見たこともない単語が羅列されていく。一つ一つのアルファベットは読めても、それらが組み合わせると何が何だかわからない。

 英語の隣には”(1)”や”(2)”のような表記があり、これではまるでーー。

「役決め……?」

 小学校で毎年行われていた学芸会で、似たような雰囲気のプリントを何度も見たことがある。

 上は主役級なのか(1)や(2)の文字が多く、下の方に進むにつれて(10)や(20)が増えているようだ。多いのは村人Aとかそういう役だろうか。

 既にいくつか埋まっているものもあり、それは私たちより前に呼ばれた補填被験者が選んだということは、私でもすぐにわかった。

 ”Dungeon Boss”、”Extra skill player”。

 ーーダメだ、読めない。

 しばらく画面と睨めっこし、唯一知っている英単語を見つけた。


 ”Twin Berserk Fencer”


「ついん……べ、べー……うん無理だ」

 全て読めなくても、最初の単語だけはわかった。

 どんな役なのかはわからないが、人数が(2)となっていたのも決定打だった。

 もしかしたら、誠也もこれを選んでいるかもしれないし。

 本当は大声を出して隣の部屋にいる弟と相談したいところだが、こういうのは自分で決めるべきだとも思う。

「これでいっかな」

 マウスが無く、スマートフォンを使い慣れていることもあり、反射的に画面をタッチしてしまう。

「あ……」

 どうやら正しかったようで、”Final Answer?”の文字と”Yes&No”の画面に移行する。

 何だか昔のクイズ番組で見たことがあるような英語だ。迷わずYesを選択してーー。



 私の意識はそこで途切れた。


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