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パラレルコネクト・オンライン  作者: yuto*
パラレルコネクト・オンライン標準時:5月
89/118

Act88-再起

「おっ……と」

 恐ろしいスピードで振り下ろされてくる、巨大モグラの腕による攻撃を難なく躱す。

 この”振り下ろし攻撃”と”咆哮”には予備モーションがあるようで、しっかり見ていれば対処することは容易だ。

 まぁ剣を振り回しながらだと見逃してしまうかもしれないが、囮に徹した今、そんなミスが起こり得ることはないだろう。


 問題はどうやって倒すか。


 俺とショウヤが回避行動に集中している間、何度かフィリアやユズハの遠距離攻撃がボスに命中しているが、一向にHPが減る様子はない。

 ほんの少ししか残っていないバーを削れないのが、何とももどかしい。

「あと五分も無いぞ……」

 ちらりと端末を見ながら時間を確認する。もうバグでも何でもいいから早く倒れてくれ。

「メイ、ヒール頼む!」

 離れた位置からショウヤが叫ぶ。

 直撃していなくとも、モグラの腕が当たった地面による衝撃波のダメージが積み重なったのだろう。塵も積もれば何とやらだ。

「俺にも頼む!」

 俺も残り五分を耐えきる程度のHPはあるが、万が一のことも考えて治癒(ヒール)を要請する。

「わかった」

 多分そんなことを言ったのだろう。さっき会話を中断された苛立ちからか、若干声がくぐもっていて聞こえにくい。

 俺の読心術(?)が正しかったことを証明するかのように、メイは治癒(ヒール)の呪文を唱えーー。


「……ん?」


 ーーたが、すぐさまキャンセルした。

 その異変に周りのメンバーも気づいたようで、すぐに何事かと駆け寄る。

 不安そうなメイの表情から、別に腹いせのつもりでやったわけでないことはすぐにわかった。

 モグラの攻撃を回避しながら考えを巡らせていると、ようやく事態を理解したミユから声が飛んできた。

「ソウちゃん!」

「どうした!」

「そこから離れて!」

 なんだなんだ。メイは爆破攻撃でもするつもりか。

 でもそれなら、ショウヤも一緒に避けなきゃいけないはず……。

「どういうことだ!?」

 思考はミユの言葉、視線はモグラの挙動に振り分けながら聞き返す。

「いいから、離れて!」

「……?」


 意味はわからないが、とりあえず従うべきか。


 俺は今自分が立つ位置から大きく離れ、モグラの背後へと向かう。これで、俺とモグラ、そしてショウヤがほぼ一直線のライン上に並んだことになる。

 ーーよくよく考えれば、最初からこうしてヘイトを分散させてた方が良かったかもな。


「違うっ、そうじゃない!」

「はぁ!?」


 ミユの言葉によって、思考が中断される。

 まさか俺の思考を否定されたのか、などと一瞬考えるが、状況からして、俺の”離れ方”に問題があったのだろう。

「どうすりゃいいんだよ! ちゃんと離れただろ!」

「違うんだよ!」

 半ば喧嘩気味のやり取りをしながら端末を見るーー八時五七分。もう残り時間三分を切っている。

 再び視線を戻すと、ミユとメイが何やら言葉を交わし、意を決したかのように呪文を唱え始める。よし、今度こそ治癒(ヒール)が届くはずだろう。


「あれ……?」


 呪文の詠唱が終わり、メイからは治癒の光が迸っている。それなのに、俺のHPに変化はない。

 今度こそ腹いせか……? なんて考えていた俺のもとに、もう一度ミユの声が飛んでくる。

「ソウちゃん離れて!」

「だから何だよ! どこに離れりゃ……」

 そう言いかけて気づく。何故なら、今度こそはミユの言葉の意味がわかったからだ。

 ボスのモグラが巨体を仰け反らせ、こちらに倒れて来るではないか。

 ーーうん、これは危ないな。

 俺が後ろに大きく飛び退いた後、まるでこのダンジョンが震源地となったかのような揺れとともに、さっきまで俺が立っていた地点にモグラが横たわる。


 HP表示は……消えている。討伐完了だ。


 頭上に「Mission Clear!!」の文字が輝いても、誰もこの状況に思考が追いついていなかった。

 少し遅れて後衛組が少女らしい喜びの声を上げ始め、そこでようやく、クリアしたんだな、と思い出したように喜びがこみ上げてくる。

「やったな、ソウタ」

 モグラを挟んだ向かい側から、ショウヤが駆け寄ってくる。俺はハイタッチでそれに応じる。

「あぁ。二つの意味でな」

「二つの意味?」

 俺が見ている方向に、ショウヤも気づいたようだ。


 そうーー。俺たち二人の視線の先には、互いに嬉しそうな表情でハイタッチを交わす、五人の少女の姿があった。


「こっちも、とりあえずミッション成功だな」

 まだ完全に復活したとは言えないが、メイのあの笑顔は、俺が現実世界で何度も見たそれに近づきつつあった。

「よし、帰るか。適当に昼飯でも食べながら反省会でもしようぜ」

「あのなぁショウヤ……お前時計見てた? まだ九時だぜ」

「じゃあ朝飯でも食べながら……」

「俺とミユはもう食ったけどな。あとの二人は寝坊してたから知らんけど」

「ならパフェでも食ってろ」

「代金お前持ちな」

「まぁ……手伝ってもらったし……いいけど……」

「よし決まり」

 そこで会話を終え、俺は半分冗談で、「ショウヤが全員分おごってくれるってよ」なんて言いながらミユたちと合流した。ーーショウヤが端末で所持金と睨めっこしていたのは何か新鮮だったが。


 ともあれ、これで一段落だ。最後に何があったのかは、後で反省会の時にでも聞いてみよう。 

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