Act86-第二形態
戦闘開始から約三〇分が経過し、残り時間は二〇分弱。
ボスのHPも半分を切り、このペースなら何とかなりそうだな……と考えていた時、心のどこかで恐れていたことが起きた。
ーーHP減少による行動変化。
しかもこいつの場合、行動だけでなく姿まで変わったのだから驚きだ。
触手の部分が全て外れ、完全な二足歩行モグラのみとなった巨大なボスモンスター。例えるなら、今までUFOから上半身だけを出していた宇宙人がUFOをパージした状態……といった具合だ。
今まで隠れていた、到底モグラとは思えない筋肉を見れば、嫌でも緊張感が高まる。
「マッチョだねぇ」
「顔以外はいい男なんだけどねぇ」
相変わらずの若者女子(?)トークを続けるミユとユズハ。
冷静に状況を見守るフィリアとメイ。
高月さんに関しては、得物のアサルトライフルの弾切れで暇そうだ。さすがに三〇分近くも撃ちっぱなしでは、弾どころかMPも使い切ってしまったことだろう。
俺とショウヤはとりあえず合流し、これからの見通しについて考えているところだ。
ボスモンスターが二足歩行になった以上、もう特殊な攻撃をしてくる可能性は低い。代わりに力技でゴリ押しされるかもしれないが。
「こうなったら、最初の作戦通り行くか?」
「そうだな。俺とショウヤが囮になって、横からミユ、後ろから後衛組の援護射撃でいいと思う」
頷きを交わし、今にも動き出しそうな巨大モグラに向かって走り出す。
ーーそう言えば、武器を持っていないけど、素手で攻撃してくるのか……。
武器を構えて走りながらふと、形態変化したボスモンスターの姿を見た予想を思い浮かべる。
今までに戦ってきたボスモンスターは、例外無く何らかの攻撃手段を連想させる武器を持っていた。
それは、剣や斧などはもちろん、さっきの触手のように直接手に持たないタイプのものもあった。しかし、そこから攻撃手段を考えることは簡単で、攻略の手がかりにもなっていた。
ーーだがこのモグラは、何も持っていない。
ただ仁王立ちしているだけで、まるで「かかってこい」とでも言いたげな雰囲気だ。
「なめやがって……」
銃剣を持つ手に力が入る。
そのまま大きく振りかぶり、足だけで俺の身長の倍はあるボスモンスターに斬りかかる。
ガキンッ!
「くっ……!」
予想していなかった鈍い反動。まるで棒きれで鉄板を叩いているかのような感触に歯噛みする。
ーー全然効いている気がしない。
別方向からもう片方の足に斬りかかったショウヤも同じ反応を示す。
どうやら弱点を狙うしかなさそうだ。
フィリアとユズハに対して、アイコンタクトで意思を伝える。……ユズハが首を傾げているのは、いつものことだ。
「頼むぜまったく……」
だが、フィリアがしっかりと補足説明してくれているおかげで、どうにかユズハからの理解も得られたみたいだ。
それから二人が遠距離攻撃を開始し、ようやく巨大モグラのHPが減少を始める。
特に抵抗する様子のないボスモンスターを見て、このまま終わって欲しいと思う反面、まだ何らかの秘策を隠し持っている可能性も捨てきれず、俺は攻撃することも忘れて相手の出方を伺うことしかできなかった。
「ソウちゃん、攻撃しないの?」
近接攻撃が通用しないことを知りーーそもそも得物を失った彼女にできることは無いがーー、俺より俺の武器のことに詳しいミユが声をかけてくる。
確かに銃形態に変えれば、後衛組とともに攻撃に加勢することもできる。
だがーー。
理由のわからない不安が、俺をその場に釘付けにしていたのだった。




