Act82‐不安の種
ーー結局、二つのグループがダンジョン入り口前で落ち合ったのは七時四〇分。予定より一〇分遅れでの合流となった。
「待たせてすまん。とりあえず始めようか」
「そうだな」
企画のことを知らないのは、この場ではメイと高月さんのみ。ただ”買い物”と聞いて着いてきた二人にとって、これから何が始まるかなど知るよしもなかった。
「……ショウヤ、どういうつもり?」
わずかにトゲを含んだ口調で、メイがショウヤを問いただす。
ダンジョン前で”何かを始めようとしている”時点で、既に買い物に行くつもりでないことは察しているだろう。最近のショウヤとメイの関係については詳しく聞かされていないが、少なくとも今が険悪ムードであることはわかる。
「蒼ちゃんと会うなんて聞いてないよ。……というか会いたくなかった」
最後の方が上手く聞き取れなかったが、あの日の反応から考えても、俺に対して好意的な態度を見せているようには思えない。
ひょっとすると、今日の企画は逆効果だったかも……。
俺がそんな否定的になっている間にも、ショウヤは何やら数回言葉を交わし、無理やり彼女を納得させたようだ。ーーなんか睨まれてるけど。
「今日はこの七人で、あるダンジョンを攻略しようと思う」
メイから視線を外し、打ち合わせ通りの流れに戻す。こんなところで時間をかけるわけにはいかない。
「もう気づいてるかもしれないけど、ここから入れるダンジョンのボスモンスターが攻略対象なんだ」
集合場所としても指定した、目の前のダンジョン入り口を指差しながら説明する。
「でも、七人で戦うボスってどんだけ強いの……」
そう呟くミユの心配もわかる。
これほど都心から離れるダンジョンだと、いつもの四人でも手こずるレベルだ。単純計算でそれ以上だと考えると、想像するだけでも恐ろしい。
ーーしかも、ただ強いだけじゃない。
「今回のボス、強さはもちろんだが、もう一つ重要なことがある」
「時間制限……だ」
ここのボスについて知っているショウヤが、俺の後を引き継ぐように呟く。
「いわゆる”時間限定ボス”ってやつ」
スマホゲームもある程度やっていた俺とショウヤはともかく、他のメンバーはあまりピンと来ていないようだ。
「言葉の通り、特定の時間にしか現れないボスのことで、大抵レアなアイテムをドロップしたりするんだ」
「おー楽しそうじゃん!」
俺の補足説明で理解が進んだのか、ミユのやる気に火が付いたようだ。
「ここのボスは、毎朝八時から九時の間にしか出現しない。他の時間に行っても何も起こらないらしいな」
「それを……この七人で?」
「おう。一応、パーティメンバーは五人まで、っていう制限があるから、レイドパーティっていう形になるけどな」
ユズハの問いに返答しながら説明を補足し、端末の時計を見る。ーー八時だ。
「まぁ、本当はもっと余裕を持って説明したかったんだけどな。俺たちが遅れたせいで若干時間押してるから、早く入ろう」
「おーけー」
俄然やる気のユズハ、ミユ、フィリアに対し、メイと高月さんはあまり気乗りしていない様子だ。
予定では、女性陣同士で少し親睦を深めてもらってからダンジョン攻略に入りたかったんだが……こうなってしまっては仕方が無い。
「よし、じゃあ行くぞ!」
「おー!」
「お、おー……」
ーー不安だ。




