Act81‐決行
朝七時。
俺たちがいつも活動を始める時間よりも、少し早い時間。
俺は先に準備を済ませ、隣の部屋で寝泊りするヒナタとメイを呼びに行く。
「二人とも、起きてるか?」
この世界では、部屋の中で響く音は外に漏れることはない。もちろん逆も然りだ。しかし、「ドアをノックする」というコマンドを実行した場合のみ、内と外で音が通じるようになる仕組みだ。
しばらく物音がした後、静かにドアが開いて二人が出てくる。
既に起きて準備を済ませていたのか、もしくはノックされて焦ったのかはわからないが、二人とも部屋着から出かける格好へと変わっていた。
「おはよう、ショウヤ」
「あぁ、おはよう」
ヒナタと一言だけの挨拶を交わす。彼女に続いて部屋から出てきたメイは無言で俯いている。
ーー何か話しかけるべきか。
話したいことならいくらでもある。久しぶりの外出で怖くないか、とか、ヒナタとの二人部屋には慣れたか、とか。
ここ最近、ほとんど言葉を交わしていないメイについて、気になることは多い。
そう考えた時、先に口を開いたのはメイの方だった。
「……ねぇショウヤ。今日はどこに行くの?」
まだ企画のことは二人に伝えていない。
”驚かせたかった”というのが第一だが、何より企画を伝えてメイが拒否反応を起こさないかが心配だった。
そして、今はまだそれをバラすタイミングじゃない。
「え、あぁ。ちょっと買い物にな」
「じゃあ私、部屋で待っててもいい?」
ーーまずい。
買い物へ行く時、いつもは俺とヒナタだけで出かけている。なのに今日だけメイを誘ったーーという設定ーー、というのは些か不自然だったかもしれない。
でも今さら用事を変えるわけには……、何とか誤魔化そう。
「メイにも関係ある買い物だから、できれば来て欲しいんだけど……」
ーーちょっと下手だったかな。
しかしメイは理解してくれたようで、嫌々そうにしながらも頷く。
「んー。うん、わかった。ついてく」
「よし! じゃあ行くか!」
こっちはクリア。あとはソウタたちと合流するだけーー。
◇◆◇◆◇◆
「ごーめーんー!」
「わかったから頑張って走れ!」
走ることと泣くことと謝ることを同時進行するユズハを咎めながら、四人揃って街中を走り抜ける。
俺とショウヤが予定した作戦。決行時刻は七時三〇分。
俺が住んでるホテルからダンジョンまでの所要時間は三〇分。
いつもより少し早起きが必要だが、うちのメンバーに寝坊するやつなんていないーーそう考えた俺が間違っていた。
七時に俺の部屋に集合と言ったのに、時間ピッタリに来たのはミユのみ。
ユズハとフィリアはモーニングコールで無理やり起こし、ホテルで合流できたのが七時一〇分。
そして現在時刻七時二〇分。
距離にして、まだ半分も過ぎてないだろう。
このままじゃ遅刻する……。
「頼む……間に合ってくれ!」
そう口には出しながらも、心の中ではショウヤへの謝罪を繰り返していたーー。




