Act78‐転章Ⅰ
それから数十分が経過した頃、俺たちの待ち望んでいた変化が訪れた。
じっと見据えていた扉が静かに開き、中からソウタが現れる。
「……お待たせ」
疲れきった表情で呟く少年に、俺は真っ先に駆け寄る。
「大丈夫だったのか?」
それは、ソウタ自身と対話の結果の二つに向けた、心配の言葉。
彼は小さな頷きで自分の無事を伝えた後、力強い言葉で対話の結果を口にした。
「ーー多分、皆ここから出られる」
「本当か!?」
後ろで聞いていた二人も、安堵のため息を漏らす。
「あぁ、俺は何もしてないけど。きっとあいつが何とかしてくれたんだろう」
「そっか……」
あえて追求はしなかった。
あいつが今、”裏”に対してどんな感情を抱いているのかわからない。下手なことを言って、さらに追い討ちをかけてしまうのが怖かった。
ソウタは俺から視線を外し、その後ろに立つ女性に声をかける。
「アスカ、もう権限はお前に戻ってるはずだ。試してみてくれ」
「あら、本当ね」
アスカが壁に手をかざすだけで、俺がさっき見た青白い裂け目が出現する。
俺とヒナタには何のことやらさっぱりだが、彼女がいきなりワープホールらしきものを生み出したことから察するに、この屋敷の何らかの権限を得たのだろう。
「これ、どこに繋がってるんだ?」
「私とソウタがこの世界に来るときに使った、路地裏のワープホールに繋がってるわ」
「あぁ、あそこか……」
この場で、ソウタだけが得心したように頷く。
「まぁ、とりあえずあっちの世界には帰れるんだな?」
「えぇ。ヒナタさんにとっては二ヶ月ぶりになるのかしらね」
「……うん、久しぶり」
ヒナタが見る、久しぶりの「パラレルコネクト・オンライン」の世界。
彼女は、この二ヶ月で大きく変わった。
具体的に何がどうなったかは、まだ俺にはわからない。けどそれは、これからの生活の中で知っていけばいい。
今までとは違った連携や、また新しい戦い方ができるかもしれない。
俺は、既にそんな期待に胸を踊らせていた。
「じゃあ、帰ろうか」
ソウタの言葉に異を唱える者はいない。
俺たちは、アスカによって作られたばかりのワープホールに身を投じた。
そしてーー。
ーーまた、この世界に戻ってきた。




