Act74‐再会
『おい、ちょっと待て』
今まで指示をしてきた”あの声”は、アサルトライフルを撃ち続けている最中でも、脳内にしっかりと届いた。
あと少しで二人を倒せる。そんな時に”待て”の指示をするとは、一体何のつもりだろうか。
ーーなに。今さらあの二人に情けをかけろとでも言うの?
声を出さずに、思念だけで返答する。
しかし、次の言葉は私の予想外の内容だった。
『違う。侵入者だ』
ーーここに? 一体誰が……。
私が斉射を止めても、二人は戦闘態勢を維持したままだ。変な動きはできない。
敵か、味方か。
どちらであろうと、まずどうやってこの屋敷ーーいや、この世界に侵入したのだろう。
『お前の端末を元に戻した今、もうこの屋敷の構造を変えることはできない。侵入者は玄関から真っ直ぐここに向かっている』
「誰か……はわからない?」
『当たり前だ』
指示ばっかするくせに、いざという時に役に立たないなぁ、などと思いながら、二人との拮抗状態が続く。
少し遅れて、「なんか音しないか?」「するわね」という会話が小声ながら届いた。どうやら向こうも気づいたらしい。
そして、勢いよく扉が開く。
同時に、私の見慣れたーーいや、見慣れ過ぎた少年が、部屋に飛び込んできた。
「ショウ……ヤ」
「ヒナタ……なのか?」
私の掠れた声と姿に反応し、互いに名を呼び合う。今まで数え切れないほどしてきた行為なのに、たった二ヶ月の空白があるだけで、やけに久しぶりのように思える。
「お前……なんでソウタと」
”ソウタ”の名が、今までずっと対峙している少年の方であることは容易に理解できた。
ショウヤと彼は面識がある。そう脳内にメモを残し、改めて待ち望んでいた少年に焦点を合わせる。
「ねぇ、ショウヤ……」
「答えてくれ、ヒナタ」
私の声を遮るように、”ソウタ”という少年との現状報告を催促する。
すぐに”戦っていた”と答えるのは簡単だ。だが、それでショウヤがどんな反応を示すのか。それが怖かった。
「どうしてこんなところにいるのか。そして、何故ソウタと戦っていたのか。無事でいてくれたのは嬉しいけど、まずそこから知りたい」
「え……あ……」
言葉が出ない。
せっかくこうして再会できたのに、私の方が変わり過ぎていて、ショウヤに嫌われてしまうのが怖い。
「私は……」
『お遊びはそこまでだ』
突然、”あの声”が響く。もちろんショウヤたちには聞こえていない。
『指示は”あの二人を殺せ”だ。余計な邪魔が入ったのなら、そいつもまとめて殺してしまえ』
「でも……!」
彼らから見たら、私は独り言で声を荒らげているようにみえるだろう。でも、今の私にそんなことを気にしている余裕は無かった。
『仕方無い。最終手段だ』
「……っ!?」
最後の通告とも取れる言葉とともに、私の身体がピクンと跳ねる。
ーーそして、私の意識は遠のいていった。




