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パラレルコネクト・オンライン  作者: yuto*
パラレルコネクト・オンライン標準時:4月(後)
71/118

Act70-Answer

「なぁおいアスカ、俺たち詰んでないか?」


 ”廊下に出ればどこか別の部屋に行ける”。

 そんな淡い期待を胸に最初の部屋(玄関)から飛び出した俺たちだが、それを真っ向から否定するかのように、扉らしきものは俺たちの前に姿を現さない。

 行けども行けども、同じ景色をループしているかのようだ。

「そうかもね。どうせーー」

「はいはい、俺はヒナタに嫌われてますよ」

「……」

 さすがに何度も同じやり取りをすれば、こうやって反撃することも容易い。

 どうだ、言い返された気分は。

「ねぇ、あれ何?」

 ーーガン無視でした。

 もしかしたら俺の決死の反撃すら効いていなかったのか、などと考えながら彼女の指差す方を向く。


 ひたすらに真っ直ぐ伸びる廊下。俺の視力で届くギリギリの直線距離に、さっきまでは確かに存在しなかった”行き止まり”が見える。

 そして、長らく待ち望んでいた”別の部屋へ続く扉”もある。

「また屋敷が形を変えた、ってことか?」

「多分ね。あなたがくだらない言い訳してたせいで見逃しちゃったけど」

「……」

「あら、今度は言い返して来ないの?」

「……早く行こう、嫌な予感がする」

 なおも何か言いたげなアスカを置いて、俺は無意識に走り出していた。



 ◇◆◇◆◇◆



『本当にいいのか? これで』

「……卑怯な手は使いたくないから」

 役目を終えた自分の端末をポケットにしまいながら、静かに答える。


 ーー”来訪者を殺せ”。


 これで最後、という前置きとともにそんな指示を受けた私は、さすがに悩まざるを得なかった。

 二人を殺す理由はない。というより、そもそも二人をこんな屋敷に迎え入れること自体が、私にとっては不本意だ。

 でも、私がここから解放されるためには、”声”の指令をこなし続けなければならない。あの声が”屋敷に二人を入れろ”と言ったら、私はそれに従う以外の選択肢はない。

「でも、これで最後。ーーなんでしょ?」

 返答はない。もう慣れたけど。


 正直、彼らを殺すだけならば、マップを適当にいじって天井やら装飾品で攻撃すれば済む話だ。

 でも、私はそこまで卑怯にはなれなかった。もしもそんな手を使って人を殺めていたら、二度とショウヤに顔向け出来なくなる。

『お前、変なところでこだわりを持っているな』

「ほっといて」

 私はショウヤにもう一度会うために、ここから出なければならない。


 だってーー。


「……まだ、自分の想いを伝えていないから」


 その時、初めて”あの声”が私の言葉に反応を示した。

『そんなに会いたいやつがいるのか』

 別に返答する必要はないが、仕方なく口を動かす。

「そうよ。あなたには関係ないけど」

 私は昔、いじめられていたところをショウヤに助けてもらった時から、ずっと彼の後ろにくっついていた。

 その名残のせいか、高校生になってもショウヤは私のことを、”何もできない、守りたくなる存在”というような言葉で表していた。

 でも、もうそれは嫌だ。


 ーー彼の後ろじゃなくて、隣を一緒に歩きたい。


 現実世界の私なら、きっとこんな強い感情に支配されることはなかっただろう。

 きっと、この世界がーーいや、牢獄での生活が私の中の”何か”を変えた。

 いつも守られてばかりいた私が、初めてメイを守る側に立ったことで自信に繋がったのかもしれない。

「よし、お願い」

 ふぅっと一息つき、ポケットから端末を取り出す。

『もう俺は口出ししないからな。指示だけこなしてくれれば手段に対して文句は言わん』


 その言葉とともに、右手の白い端末が短く駆動する。


 電源を入れると、そこにはもう見慣れたホーム画面が表示されており、どんな手を使っても閉じることのできなかったはずの屋敷のミニマップは、跡形もなく消失していた。

 迷うことなく「パラレルコネクト・オンライン」のアプリケーションを起動し、装備を選択。

 次の瞬間には、淡い光とともに私の全身はピンク色のパーカーと、腰に巻かれたホルスターという戦闘スタイルに包まれていた。

「なんか、懐かしいな……」

 最後に戦闘したのは、かれこれ二ヶ月以上も前だ。もちろんそこからレベルも上がっていない。強いて言えば、初期装備の「N・ハンドガン」が、ショウヤにオススメされて買った「D・アサルトライフル」に変わったことくらいだ。

 理由が”ハンドガンよりも連射性能があるから、手数でダメージを稼げそう”というのがいかにもショウヤらしい。

 まだ何度かしか使ったことがない無骨な銃器を両手でしっかりと持ち、この部屋と廊下を繋ぐ唯一の扉を見据える。


 ーー来る……!


 そう悟った瞬間、今まで固く閉ざされていた扉が勢いよく開き、スピーカーから声だけを拾っていた見知らぬ少年と、数秒遅れて女性が部屋に入ってくる。

「ヒナタ、大丈夫か!?」

「ヒナタさん。久しぶり……でもないか。いや、あなたから見れば初めましてかな」

「……」

 ーーこの二人、私を知っている?

 そういえば、二人の会話の中で何度か私の名前が出てきていたことを思い出す。

 何故だろう。

「あなたたち、私の名前をどこで知ったのかは知らないけど、あんまり慣れ慣れしくしないで」

「おい、何を言って……」

 何かを言いかけた少年の言葉を遮り、会話の締めのつもりで自分のできる限りの声で叫ぶ。


「罪のないあなたたちを殺すことはしたくない。でも、これは命令なの……!」


 そのまま迷わずトリガーを引く。


 私の持つ「D・アサルトライフル」の銃口から、仮想の実弾が勢いよく飛び出したーー。

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