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パラレルコネクト・オンライン  作者: yuto*
パラレルコネクト・オンライン標準時:4月(前)
58/118

Act57-最悪の選択肢

「助かった……」


 犯人とミユによる全ての会話を端末越しに聞き届けた俺の口からは、思わずそんな言葉が漏れ出ていた。

 普段はただただ元気なミユだが、こういった時の対応力の高さは尊敬すべきところだろう。

 俺は迷わず『パラレルコネクト・オンライン』のアプリケーションを開き、『フレンド一覧』の部分を選択し、数少ないフレンドの中から”Miyu”の名前をタップする。


 すると、上部にはステータス以外のプレイヤー情報が表示され、その下ではミニマップによる居場所の追跡が逐一行われている。移動手段は徒歩のようで、ここからそう遠くない場所を緩やかなペースで進んでいるらしい。

 ーーまだ間に合う……!

「ショウヤ、行くぞ!」

「ちょっと待てよ……?」

 俺の行動を観察していたショウヤが、何かに気づいたかのような声で呼び止める。

「なんだよ!」

「そんな機能があるんだったら、メイとヒナタの居場所もわかるんじゃないか?」

 数秒の間が生まれる。



「……確かに」



 何故今まで気づけなかったんだろうか。

 相手の幻術が何にまで及ぶかはわからない。例えば電子機器にまで干渉できるのであればお手上げだが、一応やってみる価値はある。

「じゃあショウヤ、二人の場所を確認しながら俺について来てくれ」

「また難しいことを……」

 メイと高月さんは、現時点では安全が確保されていると言っていいだろう。問題は今まさに連れ去られているミユたちの方だ。


「よし、行くぞ!」



 ◇◆◇◆◇◆



「ねぇヒナタちゃん、もしかしてあれじゃない!?」

 上ずる声の方を見ると、おそらく何かのドッキリによって腰を抜かされたメイが、部屋のある一点を指さしていた。

「とりあえず、大丈夫?」

 手を差し伸べ、毎度のように腰を抜かしているメイを引き起こす。もう腰の骨が無くなったんじゃないだろうか。

「ありがとう。ーーいやそれよりも! あれ!」

 立ち上がるのももどかしく、メイを起こすために繋いだ右手をそのまま引っ張り、部屋の中へと連れていかれる。

「食堂……かな?」

 食堂といっても、よくお屋敷で見るやたら長いテーブルが続いていたりするわけではなく、今までと比べると非常に簡素な造りになっていた。

 もはや恒例のような天井の装飾と、床に敷かれたレッドカーペット、磨き抜かれた白いテーブルと椅子はあるが、それ以外はーーあまり比較したくはないがーー、私の住むアパートと造りが似ている。


 四つの椅子の中心にあるテーブルの上には、白色とピンク色の見慣れた携帯端末がぽつんと乗っているだけだった。

「ほら、早く行くよ!」

 なおもぐいぐいと引っ張ろうとするメイの手を、逆に引き返す。

「いたっ!」

「待って……罠かも」

 ここまで苦労させたにしては、隠し場所が雑すぎる。私たちが勝手に苦戦したのだろうと言われればそれまでだが、せめてもうちょっとーー例えばどこかの引き出しの中に隠すとかーーひねりがあっても良いのではないか。

「間違いないよ! あれ私たちの携帯!」

「いやそうだけど……」

 よくある罠としては、あれが私たちの端末に似せて作られたダミーであるパターン。もしくは、端末をテーブルから動かすと、何らかの仕掛けが起動してしまうパターン。

 この二つを組み合わせている可能性も考えられるが、とりあえず前者のパターンは捨てる。どちらにせよ、触れて見なければ本物かどうかなど判別できないのだから。

 ここまで考えた私はメイをその場に静止させ、自らテーブルに近づく。そして、静かに二つの端末に触れる。

 電源ボタンを押すと、どちらの端末もロック画面が表示されるが、この部屋で何かが変わった様子はない。


 だが次の瞬間ーー”何か”が聞こえた。


 テレビ等でよく見る砂嵐のような音が、頭の中に直接響いて来るような感覚。


『選べ』


 直後、年老いた男性のようなしゃがれた声。

 ーー誰……?

 聞き覚えはない。あの黒い影の声でもなければ、もちろん現実の知り合いにもいない声。


『選べ』


『どちらかを、選べ』


「どういうこと?」

 選ぶものがあるとすれば、目の前に置かれた二つの端末。

 もはや「ヒナタちゃんどうかした?」というメイの不安げな声は、聞こえていても意識からは完全に外れていた。

『片方が希望。片方は絶望』

「どちらかが正解ってこと?」

 しばらく待つが、返答はない。

 ーーどうしよう。

 自慢じゃないが、こういうギャンブルは苦手だ。一七年の人生の中で幾度となく二択を迫られて来たが、それがいい結果に向かったのは数えるほどしかない。

「でも……やるしかない」

 次の瞬間には、自分でもびっくりするほどあっさりと、メイのピンク色の端末を手に取っていた。

「お願い……!」

『ふむ……決まりだ』



 ーー私の意識は、そこで途切れた。

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