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パラレルコネクト・オンライン  作者: yuto*
パラレルコネクト・オンライン標準時:4月(前)
55/118

Act54-囮作戦とピーマン

「なぁー、ホノカは今の話わかるかー?」

「わかんなーい」

「……だよな」

 手がかりを失い、なおもショウヤとミユは色々な可能性を模索し続けているが、特に情報もあても無い俺は、飽きてしまったホノカと遊ぶ役を任されてしまった。

 先ほどとは打って変わって、楽しそうに軽い剣をぶんぶん振り回しているが、その切っ先は度々俺の頬を掠めている。

「ホノカ、普通に危ない」

 飾り物の短剣なのでダメージは微々たるものだが、頬を針で軽く刺された程度の痛みは伴う。

「?」

「いや、だから……」


「ソウちゃん、ちょっと来て!」


 突然ミユに呼ばれ、仕方なく声のした方へと向かう。

 標的を失ったホノカは、渋々俺の後ろをついて来たようだ。……もちろん短剣を持ったまま。

「どうかしたか?」

 あえてホノカの行動には気づかないふりを装う。

「これを見て」

 言いながら、おそらくショウヤとの話し合いでまとめたのであろうメモ用紙をこちらに渡してくる。

 俺がそれに目を通している間、ミユが補足的に説明を加える。

「二月にうちの店で杖を作ったのが九人。そのうち、連絡を取れたのが六人。取り込み中だったのかは知らないけど、あとの二人は連絡先を知ってる。で、残った一人が探してる人なんだよね」

「そうだな」

 連絡先どころか、なんの情報も開示しなかったのだから、当たり前と言えば当たり前だ。


「私の友達で、その残ったプレイヤーを監視していた子がいるの。本当に偶然なんだけどね」


 もっと早くに連絡すれば良かったんだけどねー、とおどけてはいるが、貴重な情報源だ。

「で、その子はなんて?」

「なんかね、向こう側では結構噂になってるらしい。子どもをよく誘拐するらしくてね」

 ミユの言う”向こう側”とは、先月に訪れた娯楽施設の多く密集する地域のことだろう。

 確かに、子どもなら娯楽の多い地域に行きたがるのは無理もないが……って、ちょっと待て。

「メイとたかーーいや、ヒナタは子どもの年齢じゃないぞ?」

 危うく”高月さん”と呼びそうになるのを堪える。信頼できる相手とはいえ、さすがに本名を平気でバラすことはできない。

「子どもっぽければ誰でもいいんじゃない?」

「んなアホな……」

 会話が途切れそうになったところで、ショウヤが会話に参加してくる。

「けど、その噂と実際に起こったことは噛み合ってる。俺たちが主に活動してるのは娯楽地域だし、メイはともかく、ヒナタなら子どもに間違われてもおかしくない」

「まぁ否定はしないけど」

 俺とショウヤが互いに顔を見合わせ、同意する。


 そこで、とミユが前置きをして、再び話し始める。

「今回のキーマンになるのが、ホノカちゃんだよ」

「痛ってぇ!!」

 さっきから俺の背中を突っついていたホノカが、突然の指名に驚いたのか、力加減を間違えて短剣を思いっきり俺の背中に突き刺す。視界に映るHPが目に見えて減ったのは言うまでもない。

「わたし、ぴーまん?」

「楽しいことをしに行こう、ホノカちゃん」

「わかった!」

 あっさりと懐柔されたホノカを見ながら、俺はふと公園であった出来事を思い出した。確かあの時も、嫌がっていたホノカを一瞬で手なずけていたはずだ。

 ーー恐ろしいな……。

 噂のプレイヤーよりも、ミユの方が子どもを誘拐するのに向いているのではないか。

「ソウちゃん、何かとても失礼なこと考えてない?」

「いやいやいや何でもないです」

 不敵な笑みに射抜かれた俺は、ぶんぶんと首を振り続けることしかできなかった。


「じゃ、行こっか!」

「おー!」

「……おー」

 ミユの掛け声に、ホノカと俺が続く。

 ショウヤがこっそり「あの人やばくね?」と言ってきたことに対しては、「気にしたら負けだ」とだけ答えておいた。



 ◇◆◇◆◇◆



「ここにたってればいいの?」

「おっけーおっけー。あ、ほどよく動いてね」

 娯楽地域で目立ちそうな通りを適当に選び、まるで映画を撮影する監督とキャストのようなやり取りを交わすミユとホノカ。

「ほどよくって、お前な……」

「しーっ、ソウちゃんたちは隠れてて。それにショウヤさんは相手に顔を覚えられてる可能性もあるから、特に気をつけて」

「は、はい」

 こう見えてしっかり考えてるんだなぁ、などと考えるが、やはりミユの動きがふざけているようにしか見えないのは何故だろう。

「はいそこ、おっけー!」

 右手の親指を立ててグーサイン。


 ーーこんなにふざけていて、噂のプレイヤーなんて捕まえられるんだろうか。


 そんなことを考えていた俺たちの近くに、既に怪しい影が近づきつつあることに、当然気づけるはずもなかった。

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