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パラレルコネクト・オンライン  作者: yuto*
パラレルコネクト・オンライン標準時:4月(前)
53/118

Act52-脱出

 すごく棒読みではあったけれど、確かに彼はそう言った。

「あの、何か勘違いしてない?」

 私は思わず聞き返していた。

 私とメイはただの女子高生であり、こっちの世界では弓兵(アーチャー)高位治癒師(ハイプリースト)と呼ばれることはあっても、決してお嬢様なんて呼び方をされたことはない。

『何をおっしゃっているんですか。あなた方お二人は、アスカ様に直接ご指名されたお嬢様じゃありませんか』

「は、はぁ……」

 もう何を言っても通じなさそうな看守ーーお嬢様を守っているという意味なら、”騎士”とかの方が合ってるかもしれないけどーーの話を流し気味に聞きながら、私は今の会話の中で明かされた自分の状況を整理した。


 ーーアスカ様? とかいう人に指名されて、私たちはお嬢様になった。理由はわからない。以上。


 とにかく、もっと情報を引き出さないと。そのアスカ様とやらが敵かどうかはともかく、こんなところに監禁している時点で常人とは思えない。

「ここは、どこ?」

『……』

 いくら待っても答えは返ってこない。

 ーーあれ……じゃあ別の質問で。

「そのアスカ様、っていうのはどんな人?」

『……』

 さっきまでの饒舌が嘘のようにだんまりだ。

 ーーまさか。

 ふと一つの可能性に思い当たった私は、ついさっきと全く同じことを問いかける。

「ねぇ、ここから出して」

『いけません、お嬢様』

 やっぱりそうだ。

 今までの疑いが確信に変わる。彼はメイの言う通りNPCで、おそらく決められた受け答えしかできないのだろう。


 とりあえず状況をメイに報告しようと思い、鉄格子を離れて部屋の奥へと戻る。

「ヒナタちゃん、どうだった?」

 その問いかけには、わずかだが期待が込められていた。

 この牢獄に入れられてからというもの、看守に話しかけるなんて無謀なことを一度もしなかったため、私の唐突な行動がメイに希望を与えたのかもしれない。

 もしかしたら、この現状が変わるかもしれないーーと。

 そこまで理解してしまった私は、”お嬢様”などというよくわからない説明をして、彼女を混乱させてしまうのが心苦しかった。

「えっと……あの……うん」

 言葉が出てこない。

 だが次の瞬間には、私の口は勝手に動いていた。


「あの看守をどうにかできるかもしれない」

「ほんとに!?」


 言ってから、しまったと思う。いくらメイを安心させるためとはいえ、あんな得体の知れないNPCを会話だけでどうにかするなんて不可能に近い。

 それでも、一度動いてしまった口を止めることはできなかった。

「うん、だから一緒に来て手伝って欲しい」

 もしかしたら、メイならNPCを対処できるかもしれない。そんな淡い期待を込めて、無理やり言葉の辻褄を合わせる。

「わかった、私がんばるよ!」

「じゃあ行こう」



 ◇◆◇◆◇◆



 再び鉄格子の前まで訪れた私たちを、さっきと同じように看守の鋭い眼光が射る。

「ねぇ、めっちゃこっち見てるけど大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。何か話しかけてみて」

「うーん……」

 メイは既に看守をNPCだと思っている。ならば、彼女なりにNPCが答えやすい言葉を選ぶだろう。

「ここはどこですか?」

『……』

「ダメか……」

 即座に結果を判断してガックリと肩を落とす。だが、すぐに次の問いを思いついたのか、「じゃあ……」と前置きしてから続けた。


「外に出たいな、なんて……ダメですよね」


 それは先ほど私が言った、「ここから出して」と言葉の意味はほぼ同じようなものだった。ーーはずなのだが。

『少々お待ち下さい』

 ーーえ。

 恭しく頭を下げると、いそいそと懐から牢獄の鍵を取り出し、私たちが今まさに掴んでいる鉄格子を開け放った。

「やったよ、ヒナタちゃん!」

「さ、さすが……」

 まさか”ここから出して”と、”外に出たい”でこんなに対応が違うとは思わなかった。メイを連れてきたのは正解だった、ということだろう。

 それは自分の嘘を棚に上げた思考だが、結果的にいい方向に転んだため、気にしないことにした。

「早く外に出ようよ!」

「そうだね」

 看守に軽く会釈しながら牢獄の外に出ると、左右に長い廊下が続いているのが見えた。


 どっちだろう、と頭を抱えるメイを引っ張るようにして、廊下を右に走り出す。

「こっちなの?」

「わからない、けど急ごう」

「わ、わかった……」

 気圧されるようにメイが頷く。


 後方から『お早めにお戻りくださいね、お嬢様』という声が聞こえたが、おそらくメイには届いていないだろう。

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