Act43-違和感
ワァァァァァ……!!
闘技場の観客席にまで熱気が伝わってくる。前回来た時はオープン日で、まだあんまり観客がいなかったはずだから、これが本来の闘技場の姿と言えるだろう。
そういえば、最初にここに来た時はミユの散々なナビゲーションでひどい目にあったっけ。今となっては懐かしい。
フィリアは主に参加者、ユズハは観客として何度か足を運んでいるらしいが、俺とミユは二月のあの日が最初で最後の来訪だ。
それだけに、まさか二度目の来訪がこんな最悪な気分になるとは甚だ不本意だった。
「ショウヤ……お前……いやまさか」
情報に頼りっきりのプレイスタイル。それは今も昔も変わらない。別にそれが悪いことだとは言わないが、あいつはあまりにも情報の選別をできていない。
例えば、もしこの世界に”ネット掲示板”みたいなコンテンツがあったら、ショウヤは間違いなく騙される。おそらく芽衣と高月さんを道連れにして、だ。
「……できれば会いたくはないんだけどな」
昔はあれだけ仲の良かった親友だったのに、たった一つの事件を境に疎遠になってしまった。
この前だって、再会できた喜びは少なからずあったはずなのに、芽衣や高月さんを命の危険に晒している怒りの方が勝っていたのだ。
そんなことを考えている間にも、中央のステージでは熱戦が繰り広げられている。勝ち抜き方式なのは前と変わらないようで、勝者はその場に残り、敗者だけが次々と入れ替わっていく。
今の試合で負けたプレイヤーが戦場を去り、次のプレイヤーが――。
ワァァァァァ……!!
「うわっ!?」
咄嗟に耳を塞ぐ。
新たな挑戦者が現れた瞬間、さっきよりも一回り大きな歓声が観客席全体を包み込む。
だが、理由はすぐにわかった。
「ようやくお出ましか……」
中央の大きな電光掲示板に、”闘技場ランキングNo.1”の文字が踊り、噂のトッププレイヤーが颯爽とステージ上に姿を現す。
――あれ?
「ショウヤ……? いや……違う」
確かに表示されているプレイヤーネームは”Syouya”だ。モニターに映る姿も俺が知っているショウヤだし、見た目上は本人そのものだ。
けど何かが違う。一言で表すなら”雰囲気”。
この世界で初めて会った時のショウヤは、銀色のプレストアーマーに片手剣を装備している、典型的な”剣士”といった風貌だった。
しかし、今ステージ上で歓声を一身に受けているのは、全身を黒いチェーンメイルで覆った騎士だ。
どことなく既視感を禁じ得ぬ俺をよそに、電光掲示板にはそれぞれのステータスが表示される。
『Syouya 剣修士』ーLv.40
『Hayato 暗殺者』ーLv.42
ショウヤは見た目からして、てっきり騎士の職業だと思ったが、同じく剣士の派生職である剣修士を選んだようだ。
DEFやHPの補正がかかる騎士とは反対で、こちらは主にSTRやAGIに補正がかかる。そのため、どちらかといえば攻撃型の派生職といえるだろう。
対する”Hayato”――ハヤトさんは暗殺者。闘士という職業から派生する二次職だが、そもそも闘士自体、選択しているプレイヤーをあまり見かけないため、情報収集だと思って観戦しておいて損はない。
ステータス補正だが、こちらは言うまでもなくAGI特化型だ。おまけに装備可能武器は短剣のみであり、まさに”暗殺者”と呼ぶに相応しい職業だ。
補正値は違えど互いにAGIが高いため、高機動戦になることが予想される。
「これは見物だな……」
俺は無駄な思考を止め、三〇カウントが開始されたステージ上の戦闘を見逃すまいと、一人の観客として観戦を始めた。




