Act31-一騎打ち
もはや鍔迫り合いなど起こさない。いや、起こす必要もない。
何故なら、それは時間稼ぎでしかないのだから。
本気で命の奪い合いを始めた俺たちは、いかに互いのHPを大きく削れるポイントを見つけられるか、そしてそこを的確に狙えるかどうかの一騎打ちに精神を研ぎ澄ませた。
曲刀が、銃剣が、それぞれの鎧の隙間に赤い切り傷をつける。
現実ならほぼ互角に見える戦い。だが、ここはゲーム世界だ。同じ当たり方をしても、レベルが25も上の騎士の方が与ダメージは高く、被ダメージは低い。
しかも騎士の職業補正も相まって、相手が一度で与えてくるダメージを、俺は十回近く攻撃しないと釣り合わない計算になっている。
「かてぇな……おい」
ストレージに入っている最後のポーションを飲み干しながら毒づく。これではただの消耗戦だ。
――一度に大ダメージを与える方法。
そんなことができるなら最初からやっている。……いや、考えもしなかったが一つだけ方法はある。
”銃による接射”。
アーツを使うにはMPが必要だ。もちろんそれは剣だろうが銃だろうが変わらない。
剣の場合だと、剣を振る速度、おおよその威力、重さという要素をシステムが自動で計算し、それに見合ったMP消費の処理がなされる。
対して銃の場合、MPの使用量は自分で調節することが可能であり、それは即ち、”MPを一気に解放するアーツ”を放つこともできるということだ。
要は攻撃した後にMPを消費するか、MPを消費してから攻撃を放つか、の違いに過ぎない。
ただ大半のプレイヤーにとっては、そのどちらかしか使用する機会が無いためさして気になる問題ではないが、”銃剣”を持つ俺の場合、戦局に合わせて切り替えていくという技量が試される。
「やってみる価値はありそうだな」
左右に持つ白銀の剣、そのどちらかが騎士へと届けば勝てる。
唯一問題があるとすれば、いつもなら接近時は剣のアーツを使うところだが、今回はMPが減れば減るだけ接射のダメージが落ちる。仮に鍔迫り合いになろうとも、あの重い剣に対してシステムアシスト無しで対抗しなければならない点だろうか。
右足を引き、少しでも勢いの付くフォームでスタートを切る。
「……こんなに遅かったかな」
久しぶりの生身のダッシュに違和感を覚えながら、右手の銃剣を身体の前、左手の銃剣を背中側に隠すように構えて騎士へと向かっていく。
だがそこで、予想外の事態が起こった。
これが最後の接近になると悟ったのか、ケンタという名の騎士が初めて”アーツ”を起動させたのだ。
曲刀の鋭い刃に、輝く黄色いエフェクトが灯る。
「嘘だろ……あんなの食らったら……」
ただでさえ危険な攻撃が、アーツによって必殺の攻撃へと変貌する。
対抗策を練る間もなく、プレイヤー本来の敏捷値で走る俺と、強力なシステムアシストが付与された騎士の距離は詰まる。
「お願い……! 当たって!」
俺の耳が後方から響く声を認識したのは、この瞬間だった。




