Act30-読み合い
――カキィン!!
アーツによって強化された横薙ぎと、騎士が振り下ろした曲刀が快音を立てながら交錯する。
こうして再び鍔迫り合いに持ち込んだのは、もちろんフィリアが武器への狙いをつけやすくするためだ。
だが――。
「くそッ……!」
鉄球がのしかかって来るかのような、曲刀の重さに顔をしかめる。
なんて剣だ。
装備に隠れて全ては見えないが、ほぼ俺と似たような体格をしているはずなのに、どこからそんな曲刀を振り回せる力が出てくるのだろうか。
一般的に騎士というと、お姫様や主君を守るために仕えたりしているイメージが強い。「パラレルコネクト・オンライン」の騎士は、まさにそれを体現したように防御力やHPに大きく補正がかかる職業だ。
この世界におけるステータスは七種類。
持てる武器の重さの上限に影響するSTR(筋力)。
受けるダメージを軽減するDEF(防御力)。
”アーツ”の性能が上がるINT(知力)。
移動速度や回避力が変化するAGI(敏捷性)。
猟兵等の遠距離攻撃の命中率や、錬金術師の武器生成の成功率に関わるDEX(器用さ)。
ドロップアイテムや、敵からの状態異常にかかるかどうかの確率に関わるLUK(運)。
これにHPを加えて七種類のステータスが存在し、それらはレベルアップで少しずつ上昇する。また、割合の変化はプレイヤーの職業に依存するため、HPとDEFに補正が大きく乗る騎士のSTR値は、他と比較しても平均的なはずだ。
対して、俺の銃剣士はSTRとAGIが主に上昇する職業だ。俺が初めてやったオンラインゲームでも、ひたすら筋力と敏捷をガン上げしていたことを考えると、何とも皮肉な話だ。
「ん……?」
自分の中で巡る思考の中で、俺はある一つの可能性にたどり着いた。
――俺のSTRがあの騎士より高い。それなら力勝負で勝てるんじゃ……。
現実世界で、俺が九年間続けていた剣道でも同じことがあった。
自分より力が無い相手に何故か負ける。考えてみれば原因は単純なことだ。
要は、どちらが一番力が入りやすい体勢を作れているか。よほど筋力に差がない限り、鍔迫り合いでは上をとった方が全体重をかけやすく、力が乗りやすい。
「わかったぞ……!」
さっきから俺が押し負けていた理由が、ようやくはっきりした。あの騎士は意図して上をとっている。
剣道の経験者であるかは定かでないが、少なくともそのセオリーを知っていることに間違いはない。
そこまで考えた瞬間、右手にかかる重量が唐突に消失し、銃剣が何もない空間を裂いた。
見ると、たった今まで鍔迫り合いをしていた騎士は曲刀とともに、大きなバックステップで距離を取っていた。
まさか俺の心の声が漏れていたのか? と後悔しかけるが、その理由はすぐにわかった。
パシュン――!
「うわっ!?」
目には見えないが、確かに目の前を何かが通過した。だが自分で指示した手前、それがフィリアのレーザー攻撃であることは想像に難くなかった。
――わかってて、避けた……?
騎士は球体の存在を察知し、発射のタイミングギリギリで距離を取ったとでもいうのか?
だったら……。
「フィリア、もういい。あとは俺に任せてくれ」
目線は騎士の動きを捉えながら、声だけで後ろに待つ少女に伝える。
「大丈夫なの?」
「あぁ、透明のレーザーすら読まれちゃ仕方ない。もう一対一しかないだろ」
尚も不安そうに何かを伝えようとしているフィリアのことを思考から外し、ストレージからもう一つの銃剣を取り出して、剣形態へと切り替えた。
――牽制なんていらない。一騎打ちだ!




