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パラレルコネクト・オンライン  作者: yuto*
パラレルコネクト・オンライン標準時:6月
110/118

Act109-世界

 ーー思い出せ、香澄!


 森の中を全力疾走しながら、時折互いの武器を交わす。

 もう何度も似た事例を見てきたせいか、香澄が何かに操られているというのはすぐにわかった。

 その元凶がわかれば、直しようもあるというものだ。

「誠也に聞いとくんだったな……」

 香澄がこの世界にたった一人で来るわけがない。きっと誠也と一緒にログインする過程で何かが起こったのだろう。

 ポケットから端末を出し、走りながらミユの名前を探して発信ボタンを押す。

 挟まれる剣戟で呼び出し音がかき消されることも厭わず、数秒待つ。

 ガチャリ、という耳障りな音とともに、ミユと俺の互いの端末が繋がる。

 

「ソウちゃん、大丈夫なの?」

「おう、大丈夫だ。誠也に代わってくれないか?」

「あ、うん、わかった」


 さらに数秒待つと、俺にとっては半年ぶりに交わす兄弟の会話が始まった。


「蒼汰兄?」

「久しぶりだな、誠也。けど積もる話は後でだ。一つ聞きたいことがある」

「なんだよ?」

「香澄とお前は、どうやってこの世界に来た?」


 俺はそこからしばらく、聞き役に徹した。

 自宅に補填被験者の通知が届いたこと、二人が俺を探すために参加を決めたこと、怪しい施設でそれぞれ個室からログインしたこと。

 そしてーー難しい英語の羅列から”役”を選んだこと。

「なぁ蒼汰兄。香澄は元に戻るのか?」

 それらを簡潔にまとめて話し終えた誠也は、珍しく姉を心配する素振りを見せた。

 いや、今までも何かと気にかけてはいたのだろう。だが、こうして言葉として発したのは初めてだった。


「大丈夫だ。絶対元に戻して帰る。だから待っててくれ」


 そこで通話を切り、改めて前方を見据える。

 もう少し行った先に、木々が開けて広場のようになっているスペースがあった。

「よし……」

 上手く香澄を誘導しながら向かっていく。


 ーーあそこでなら、対話ができそうだ。



 ◇◆◇◆◇◆



「ソウちゃん、何か言ってた?」

「あぁ、ログインした時の状況とか聞いてきた」

「そっか……まぁいいや。んで、私たちはどうする?」

 さっきまで命がけの戦闘をしていたこともあり、ユズハはしばらく動きたくないようで、その場に寝転んだ。

「ソウタ君に待っててって言われたし、ここにいようよ」

「そうだね」

 ユズハに倣って、ミユとホノカも寝転がる。

 戦っている時は気づかなかったが、街外れのこの森は暑すぎず寒すぎずの温度設定で、木々の間から差し込んでくる昼間の陽光が気持ちいい。

「マイナスイオンだねぇ」

「いやさすがに無いでしょ……」

 そうツッコんだミユも、マイナスイオンとは言わないまでも、仮想世界とは思えない心地よさを感じていた。

「ほら、フィリアちゃんとセイヤ君も」

「わかった」

「お、おう……」

 五人で輪になるように寝転がる。芝生も人工的に作られたもののはずなのに、まるでずっとそこにあったかのような自然の感触だった。


 しばらく静かな時間が続き、唐突にフィリアが呟いた。


「……ごめん」

 五秒くらい経過してから、それが自分に向けられた言葉なのだとセイヤが気づいた。

「いや、俺の方こそ。勝手に突っ込んで悪かった」

「私のこの武器、ちょっと特別なものなの」

 セイヤは規格外職業(エクストラクラス)のことを知らないし、もちろんそのプレイヤーたちが唯一無二の武器を扱っていることも知らない。


 

 ーーいきなり理解するのは大変かもしれないけど……。


 フィリアはセイヤに対して、この世界についての説明をしてみることにした。

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