Act101-障壁
ーーこうなることは、ほぼ予想がついていた。
ユズハは思わず心の中でため息をつく。
装備を全解除したユズハに寄せられる不安はあれど、特に襲われることなく無事に森の出口までたどり着いた五人だが、やはりこの森はダンジョン扱いされていたらしく、来た道の一部が見慣れた障壁によって塞がれていた。
「……どうする?」
「え、あ、うん。どうしよっか」
ここに着くまで長く沈黙が続いていたせいもあり、ひょっとして嫌われてしまったのではないか、というユズハの心配は、フィリアの何気ない問いかけによって跡形もなく溶けていった。
「ここまでボスらしい敵は見てないし、やっぱりあの二人のどっちかだよね。……もちろん、戦いたくはないけど」
わずかな時間とはいえ、交流のあった少年少女。しかもその二人がソウタの実兄妹ともなれば、戦うのを躊躇うのも無理はない。
「でも倒さなきゃ、私たちはここから出られない」
「そうだよね」
「とりあえず、少し落ち着いて考えよう」
◇◆◇◆◇◆
「この辺かな……くそっ、やっぱりこれ背負ってると歩きづらいな」
音のない森の中を歩きながら、セイヤが毒づく。時折、背中のスナイパーライフルがあちこちに引っかかっている。
「あの人には”近づかない方がいい”って言われたけど、そんなこと言われたら尚更気になるじゃん……」
こっちの世界で再会しよう。そんな約束を交わしてログインしたものの、一ヶ月もの間何の音沙汰も無かった香澄。何か理由があったのかはわからないが、ようやく再会できるかもしれないチャンスを逃すわけにはいかないだろう。
「……にしても、そろそろこの森も飽きてきたな」
ログインしてから一ヶ月、セイヤはずっとこの森で生活してきた。もちろん街に興味が無いわけではないが、何故かこの森から出る気が起きないのだ。
お腹が減ったら適当に食べられそうな木の実を探してみたり、暇な時は通行人を狙撃したり、あとはスマホで唯一残されたアプリケーションである「パラレルコネクト・オンライン」で情報収集したりと、そこそこ有意義な一ヶ月を過ごしてきたつもりだ。
ーーもしかしたら、これも”役”に与えられた特徴なのだろうか。
さっきの会話が、この世界に来て初めての会話だった。あのフィリア、ユズハという二人の少女ーーもう一人小さいのがいたけどーーとの出会いで、セイヤはアプリの説明書だけではわからない情報を得ることができた。
彼が意味もわからず選んだ”Dungeon Boss”という役。
ーー俺は、大変な役回りを選んでしまったのかもしれない。




