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お互いバカだね
振り返るとまだぼんやりと滲む
小さな光を確かめながら離れていく
忘れるための景色が見えている
君がいない世界が広がっている
私のことは忘れてね
でも二人共忘れたら
覚えてる人がいなくなるから
私だけこっそり覚えておくよ
哀しいのは私だけでいい
淋しいのは私だけでいい
心と唇は繋がっていて
言葉を吐き出さないと
いっぱいになる
気持ちが溢れると
代わりに涙が溢れて頬を伝う
もう君は待っていないのに
癖で少しだけ急いで帰ってしまった
もう君は電話に出ないのに
癖で話したいことばかり見つけてしまった
でも本当は癖なんかじゃない
本当は少しだけ期待していた
そんなことあるはずないのに
もう自分のことは忘れてくれと
君は強がってそう言った
でもきっと私たちはお互いにそう言って
自分だけは覚えておこうとするのでしょう
お互いバカだねって
嬉しくて一人で泣いてしまった
心と唇が繋がっていること
君と心が通じて知ったんだよ
あの日のキスを忘れても
照れて笑った君の顔は
忘れられそうにないよ
愛してると言ってくれた
君の声は心に染み込んで
私の体の何処かに消えたの
これからの私を作ってくれたの




