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ストックホルム症候群
二階のベランダへ続く窓が
私にはこの世の出口に見えました
眠れない日はいつも
次の朝はここから飛び降りて
全てを終わらせようと
そう考えて安心するのでした
人の二倍の速さで動く心臓は
私の寿命を短くしてくれる
人の声を聞くと縮こまる身体は
冷え切っていて
湯船に浸かっても震えていた
線路と縄と屋上と車道
カッターと睡眠薬と原付バイク
どれも痛そうで嫌だった
罵声と陰口と裏切り
職歴と学歴と病気
死ぬには十分だった
些細なことだと言われても
私の脳も身体も壊れてしまった
幸せになれることはもうないんだよ
壊した奴らはそんなことを知らない
人を殺さなければ殺したことにはならないと
考える人間を殺したら
たぶんそれなりに感謝はされると思う
二階のベランダに続く窓が
青い色に染まっていました
外は楽しそうだなと考えるほど
私は死ぬべきなのだと感じます
布団は紅く染まりました
長袖しか着れなくなりました
寝てる間にこの心臓が
止まってくれれば
この世界にも少しは希望がある気がしました




