92/136
私は死ぬまで貴方の宿主
亡くなった人に贈る物が売っている
どんな言葉ももう届かないのだと
理解している傍で
誰かが拵えた物は届くのではと期待していた
郵便局のシステムを知らなかった頃のように
手品みたいに私の知らないところで
貴方を笑顔にしていてほしい
私がそれを見れなくても
そうであってほしい
誰かを想うことは不思議なもので
寄生虫みたいに
すっかり脳をコントロールする
いつの間にか心臓も支配されて
私の都合なんて御構い無しに
大きな音を立てる
体温も上昇する
瞳はずっと貴方を探している
大切な人が世界から姿を消したとき
「身が引き裂かれるようだ」と誰かが呟いていた
本当にその通りなのかも知れない
ざわざわと稲穂が揺れている風景が
私を取り込もうとする
繋いだ手
抱きしめられた身体
キスをしてくれた
触れてくれた全てに
貴方が住んでいる
私は死ぬまで貴方の宿主
淋しくないよ
だって私の脳に
貴方がいるから
そこでなら
いつでも逢えるから




