しにがみしょうじょ
誰にも気付かれない部屋で首吊る少年
涙も嗚咽も吐き出しては床に溜まるばかり
宙から幸せを喰べにきた少女が呆れてため息を吐いた
生きる喜びも別れの哀しみも
貴方からは何一つ奪えなくて
殺す価値すらなかったから
せめて出逢えた分だけでも満たしたかった
君に死にたくないと言わせたい
空っぽの心に思い出を詰め込みたい
何にも持っていないから
何でも持てる気がしたよ
燈の中で朽ちてくれたら最高だ
薄汚れた小さな部屋で二人
未来の言葉はどうしたって獲られないから
過去の言葉で生きていくしかなかった
貴方の耳に私の聲が届くころ
既に思い出になっていることに気付いて
「愛しているよ」と吐いた嘘を
君は嬉しそうに呑み込んだ
もう愛されることはないのだと
君は分かった上で消化した
君の屍を喰べて生きる私を
どうか赦してほしい
空っぽだった君の心に
一つだけ残った思い出が胸を締めつける
また一人になってしまった
君のせいにしたら
忘れなくていいような気がした
誰にも気付かれない部屋で首吊る少年
朝露で滲んだ世界に透明の光が灯る
宙から幸せを食べにきた死神の瞳が揺れる
君の脣を喰べた時
あの子と同じ味がした
混ざり合って熔けた
私の胃袋の中で
また愛し合えたね




