89/136
雨傘と花
小さな荷台に揺られれば
僕たちはどこへでも行ける
最果てまで続く旅路を真っ直ぐ行けば
君が安心して笑える場所が待ってる気がした
名前の知らない街まで
生きているうちに辿り着けるかな
悲しそうに笑う癖が直らないね
夏の陽射しに焼かれても
君の体温は冷たいままだ
空が手離した雲に触れれば
少しは心も軽くなるのかな
向日葵畑で二人だけが違う方角を見つめていた
生きていた場所はもう見えなくなっていて
それでも哀しそうに泣くから
君の心はまだあの街に囚われたままなのでしょう
誰もいない停留所
錆びれた遊具
崩れ落ちた住居
それら全てを横目で見送った貴方の
その瞳には何が映っているの?
雨降りと透明な傘
背中を丸めて唄っていた
道端に咲いている白い花に
傘を差し出す
そんな不器用な君を僕は愛している
名前の知らない街まで
生きているうちに辿り着けるかな
そこでは自分を嫌いになること
もうしなくていいからね
貴方の護った花が
いつか誰かを笑顔にすること
貴方の繋いだ優しさが
ちゃんと未来まで届くこと
今はそれだけを楽しみにして
僕たちは揺られて進んでいく




