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はるいちばん



結露で滲んだ寒色の空を眺めている

空のライトがあなたの晴れ姿を映していた

僅かな誤差で産まれた時間の壁が

どうしてか今日に限って私の前に立ち塞がる



祝福という名の花束に包まれていたから

こんなに大勢の中からでも見つけ出せた

あなたの後ろ姿は何処にいたって分かるから

でも私の世界にいないと見つけようがない


春は別れの季節だって誰かはそう言ってたけど

まだ冬のままでいいよ

ほらまだ息も白いし桜だってどこにも咲いてない

だからそんなに急いで消えないでください


たった二年の付き合いだった

今までで一番短いこの時間を

これから先も追い越せる人はいない



朝一番に花屋で買った想いを握りしめている

あなたの門出を彩るための花の束

だけど渡せなかったんだ

この花が何かの乗車券みたいに思えて

渡したら遠くの街に行ってしまいそうな気がした


あなたを囲む人たちから離れて立ち尽くしていると

こんなに遠くにいるのに目があってあなたは小さく笑った


伝えたいことが胸に溢れて破裂しそうな程膨らんで

溢れて声にできない私の手をあなたはそっと握って

冬の寒さに負けない手で冷たい私を温めてくれた


だから春がもうきてしまったことを知ったんだ




初めて話をしたことが昨日のようで

そのときもあなたは同じ言葉をくれたっけ

僅かな誤差で産まれた時間の壁の鍵が

あなたの中で光っていた


それが私の光になったんだ



結露で滲んだ寒色の空を眺めている

まだ冬のままで寒いよ

ほらまだ息も白いし桜だってどこにも咲いてない

あなたを見送った帰り道そう一人で呟いた



あなたからもらった小さな春が

私の心に冷たい風を流していた


それがあなたからの優しさだと知ったんだ




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