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ごめんねって口にできないから
ありがとうって言い訳をした
言葉の端っこが尖って揺らいだ
君の柔らかい部分に擦れて
僕だけが知っている線がついた
いたいのいたいのとんでゆけ
罪を隠すように手で覆った
何も知らないように
君は微笑んでくれたけど
お互いに全部知っていたね
知らないふりが上手くなった
ごめんねって言いたかった
いつからか怖くなった
ありがとうって言いたくなかった
心を裏返してしまうから
優しさだけが取り柄です
正しくは優しい人の物真似です
気持ちを言葉にしたいです
その名前は誰かにつけられたのに
君が産まれたとき
同じような赤子が
並んでいました
君が死んでいくとき
同じような老人が
並ぶことでしょう
君が生きているとき
君のような優しい人が
たくさん隣に並んでいるから
知らないふりをしないで
君が先にいなくなっても
その唇が遊んだ唄は
僕の隣に並んでいる




