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ゆきのはなびら
ベランダの洗濯物が揺れた
乾いた光に煽られて
部屋をうすく色づける太陽が
今日に限って優しく冷たい
あと何日生きられるだろうか
君と出会ってから死ぬまでと
私が死んだあとに残る君の世界は
どちらが多くなるのだろう
淡い体温にふれて
残りの日々をこっそり数えてみる
次の季節も忘れている私には
到底不可能な話だった
ベランダの洗濯物が染まった
終わりを告げる朱の色
部屋をうすく色づける太陽が
今日に限って「さようなら」と告げた
あと何日生きられるだろうか
君が生きていてよかったと思えた記憶と
見つからないように消えたいと願った祈りは
どちらが多くなるのだろう
淡い夢の輪郭を二人でえがいた
こぼれた涙で未来をなぞった
軒先の桜が咲き終わる頃
雪の花びらがこの部屋にも舞い降りる
始まりを告げる白の色
光を分け与える白の色
その中でどうか
どうか君には
笑っていてほしいんだよ




