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小さな星が消えました
夜明け前の商店街で
小さな星を見つけました
ぼんやりとそれを眺めていると
温かい涙が一つ
僕に内緒で死にました
頬が紅くなるくらいの
冷たい風が
深くまいたマフラーを揺らしたんです
薄く光る自動販売機で
新しいコーヒーを買うと
指がガラスのように
冬の空気を吸いました
そこでようやく
君がぼくの指を
大切だと言った謎が
とけた気がしたんです
夜明け前の商店街で
小さな星が消えました
世界の隅っこだけにある
やさしい温もりに
焼かれてしまいました
それでも風は冷たいままで
それでも指はガラスのままで
僕は似合っていないマフラーの中で
こっそりと泣いたんです
涙を殺したことを
君に知られてしまわないように
君が知れるはずもないのに
僕は似合わないマフラーの中で
涙を殺して
脳の海馬に引っ越した
君の笑った顔をみて
こっそりと泣いたんです
今日も夜が明けました
小さな星が消えました
小さな星が消えました




