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イノセント
根拠のない妄想
永遠に口にしないで
うるさいから もう黙って
そんなものは求めていない
分かろうとしている時点で
もう何も分かることはない
電気信号を同期出来ないなら
君は私に追いつけない
一秒だって同じ私はいないから
君もそうだよ
アップデートし続ける世界の速さは
私たちを轢き殺すには充分過ぎたね
思考は待ってくれないんだ
独りぼっちだね もうずっと
この宇宙に生まれたときから
手を繋げば
私の脳の電気信号が
絡めた指と指を通じて
君の脳まで届いてくれる
そんな嘘に縋っていたい
人の気持ちは心臓から血液と共に
体の中を循環するだけ
それだけ
だから
ただ君の目の前で泣かせてほしい
理由も演技も罪も
知られる前に上書きされて
もうここにはないんだよ
ただ君の目の前で息をさせてほしい
意地も欲望も穢れも
消えることはないけれど
追いつけることも出来ないから
私は 君にとって
意味のない存在でありたかった
理解に苦しむ君の隣で
私が涙を流すと
また君は頭を抱えてしまうから
私は君の五臓六腑の場所を知らないし
君は私が何本の骨で構成されているか知らない
分からないことは
悪いことじゃないよ




